子どもは「信じ方」を学んでいる 〜大人だって迷う時代に〜
「発表を聞いてどう思いましたか?」
この問いに、「すごいと思いました」「よく考えていてえらいです」といった感想が並ぶのは、どこの教室でもよくある光景です。もちろん素直な気持ちとして大切ですが、学びを深めるフィードバックとしては、もう一歩進んだ言葉が必要です。
フィードバックの重要性
GIGA端末の導入によって、今、子どもたちが互いの学びに反応し合う力=フィードバック力を育てる取り組みが広がり始めています。
たとえば、意見文を書いたあと、クラウド上に共有し、お互いにコメントを付け合う。そこでは「いいね!」だけでなく、「ここはどういう意味?」「私はこう考えました」といった質問や補足、対比の視点が自然に生まれるようになってきています。
フィードバックはなぜ必要なのでしょう。どうして上記が「いいこと」だと私たちは思うのでしょう。
創作活動(芸術家の話だけではなく、何か成果物を作る活動)では、「われながらすごーーーーーく頑張った」と思うものに対して、感想をもらえるととてもうれしいですね。そこがその人に刺さったのか、自分では思ってもいなかったその部分を好きだと言ってくれたのか、など、フィードバックがあると、更に新たな気づきや、次回への活力がわいてきます。
ただ、面と向かって「この成果物のここが良かった!」ということを伝えられる機会は限られています。勇気がない人もいるでしょう。そこで、ICTの力がより活きてくるのです。
ICTの良さは、リアルタイムで全員分の投稿を一覧できること。手を挙げなくても他人の考えにアクセスでき、黙っていても「誰かの考えに触れる機会」があること。
さらに、書き込んだコメントを見直して、「伝わっているかな?」「もっと具体的に書こう」と思い直す子も出てきます。
こうした環境では、「先生に評価されるために書く」から、「友達とやりとりするために書く」へと目的が変わっていきます。(もちろん、いい成績を取るために先生が喜ぶであろうことを書く、と考える子どもはいますが、全員層ではありません。友達とやり取りするために書く、と思う子どもが増えることが重要なのです)
発信と受信の循環が生まれるとき、子どもたちは言葉を「使う」だけでなく、「育て合う」ようになるのです。
もちろん、「相手を否定しないコメントの書き方」「よい問いを立てる方法」など、最初は支援が必要です。
ICT支援員や先生がテンプレートや例文を示すことで、徐々に“学びの言葉”が育っていきます。
教室にICTが入ったからといって、いきなりすごい対話が生まれるわけではありません。
でも、一人ひとりが自分のペースで考えを表現し、誰かの言葉を受け取って考え直す――そんな「静かな学び合い」の文化が、今少しずつ根づき始めています。
「すごいね」からより深い学びを導く問いへ。
ICTは、子どもたちの“言葉のキャッチボール”を深める道具になっています。



