「正解のない問い」に向き合う教室 〜ニュースを教材にするICT活用の力〜
国語の時間に「音読」や「作文」だけでなく、タブレットを開いて何かをしている――
そんな光景が、今や特別なものではなくなってきました。「国語にICTは必要ない」と言われた時代は過去のものです。
GIGAスクール構想によって1人1台の端末が整備され、読む・書く・話す・聞くという「言語の4技能」をICTでつなぐ授業が少しずつ広がっています。
この4つは本来バラバラに教えるものではなく、相互に影響し合う力です。ICTはその「つながり」を自然に育てる手助けをしています。
たとえば、「読む」活動では、タブレットで記事を読みながら気になる部分にマーカーを引き、疑問をコメントで残す。「書く」活動では、それをもとに自分の意見を要約したり、友達と意見を交換したりする。
次に「話す」活動として、タブレットで簡単なスピーチ動画を録画。友達がそれを見て、「聞く」活動としてコメントや質問を返す――このように、1つの教材から「読む→書く→話す→聞く」がシームレスにつながっていくのです。
皆さんもよくご存じの「ごんぎつね」の朗読だと、タブレットが入った初期段階で子どもたちは「自分がどのように読んでいるのか」録音して何度も聞きなおしています。録音を友だちに聞いてもらって、友だちの表情の変化を見て何かを感じ取ったり、自分の思いを話したりしてフィードバックを受けるのも抵抗がほとんどないようです。「言葉にして話し合いをする」活動にもシームレスにつながっているのです。
ICTの活用により、子どもたちは「人前で話すのが苦手」でも、録画を通じて自己表現にチャレンジしやすくなります。
録音や読み上げ機能を活用すれば、耳からの情報理解を助けることもできます。
こうした仕組みが、表現に苦手意識のある子にも参加の機会を広げているのです。
ICTは「便利な道具」だけではありません。言葉を「読むだけ・書くだけ」(それでも随分容易になりました。原稿用紙に書く作文を、1文字増やしたい時に癇癪を起こす子どもたちはたくさんいましたね。消しゴムで消して全部書き直す必要がなくなっただけで、作文に対するハードルはとても下がっています)に終わらせず、それを「伝える・受け取る」までつなげる力を育てるものです。
しかもその過程が、子ども同士の対話やフィードバックを通じて、より深い学びへとつながっていきます。
もちろん、紙のプリントや手書きの作文にも大切な役割があります。
けれど、ICTを活用することで、これまで部分的だった学びが、ひとつの流れとしてつながっていくのです。
「読む・書く・話す・聞く」――これらすべてが、子どもたちが社会で生きていくために欠かせない力です。
ICTは、それをバラバラにせず、言葉の力を「丸ごと」育てる新しい教室づくりを支えているのです。



