失敗できる教室をICTでつくる〜「やり直せる」が、学びを深くする〜
「タブレットばかり使っていて、ちゃんと“書く力”が身についているの?」
GIGAスクール構想以降、保護者からよく聞かれる不安のひとつです。確かに、紙のノートに鉛筆で書く時間が減ってきているのは事実です。でも、ICTを使った「書く学び」が、まったく別の力を育てていることは、あまり知られていません。
書く力とは表現する力
ある中学校では、生徒たちがタブレットを使って授業のまとめを「振り返りジャーナル」として毎時間記録しています。キーボード入力で文章を書くことで、「読み返す」「修正する」「人に見せる」ことが当たり前になっています。これが、ICTならではの「書く習慣」の特徴です。
手書きのノートでは、間違いを消すのが面倒だったり、誰かに読まれることを前提にしていなかったりします。でもデジタルなら、「ちょっと直す」が気軽にできて、友達と共有して意見をもらうこともできます。手書きのノートを見せ合う授業では見せたくなくて隠していた児童が、タブレットだと気軽に見せ合っている、と驚く先生の声もお聞きします。書くことが「表現」や「対話」とつながりやすくなるのです。
また、クラウドを活用することで、先生のコメントが即座に返ってくる、友達の文章を読んで学ぶ、自分の考えの変化を時系列で振り返る――そんな「書く→伝える→深める」という循環が可能になっています。
もちろん、タイピングの練習だけしていればなんとかなるというものではありません。実際、現場では「書く力の育成=タイピング力」ではなく、「何を伝えたいのか」「どんな順番で書けば伝わるか」など、論理的思考や語彙力を含めた総合的な表現力を重視しています。(タイピングがスムーズにいけば、それだけ考える方に時間を使えるので、その意味でタイピング練習は大切です。)
そして、手書きが悪いわけではありません。むしろ、手で書くことで覚えやすいこともあります。大切なのは、ICTとアナログを目的に応じて使い分け、子どもたちの「書く力」を多面的に育てることです。
これからの時代、文章を書く機会はむしろ増えていきます。特にSNSとは切り離せない生活の中で、「文章で」気持ちを伝えることが非常に多くなりました。作文から始まり、レポートをまとめたりプレゼンテーションに起こしたり。「文字で伝える」力は、あらゆる場面で求められるのです。
ICTは、そのための強力な「学びの道具」になり得ます。
教室では、静かにたくさんの言葉が生まれています。
それは鉛筆の音だけではなく、「キーを打つ音から始まる、新しい書く学び」かもしれません。



