ICT支援員は先生の何を支えているのか〜「困ったとき、そばにいる人」のちから〜
デジタル教科書、という言葉はお聞きになったことがあると思います。
これを読んでくださっている皆様は、実物をあまり見たことがない、という方も多いのではないでしょうか。
何でもデジタルにするなんて! 紙の温かみを忘れてはならない、と思われる方もいらっしゃるでしょう。
本日は、我々ICT支援員が現場で見てきた一つのケースをもとに、デジタル教科書の一つの側面をご紹介したいと思います。
デジタル教科書の可能性
「先生、今日の話、全部わかったよ!」
国語の授業が苦手だった子が、初めて自信を持ってこう言ったとき、教室の空気が少し変わりました。
きっかけは、タブレットに入っていた「デジタル教科書の“読み上げ機能”」でした。
デジタル教科書というと、「紙の教科書をただ画面で見るだけ」と思われがちですが、それだけではありません。文字の拡大、行のハイライト表示、音声読み上げなど、さまざまな支援機能が備わっています。(読み上げ機能には、有名な俳優や声優が読んでいるものも数多くあります。初期のころ、渡辺謙さんの朗読を聞いたときには痺れました)
これらは、読み書きに困難を抱える子どもたちにとって、「学びの入り口」を広げる重要なツールになります。
そして、こうした子どもたちは特別支援学級だけにいるわけではありません。むしろ通常の教室(通常学級)にも多く在籍しており、周囲には気づかれにくいまま、苦手さを抱えていることも少なくないのです。
ICT支援員として現場にいると、「読み上げで内容が理解できた」「文章が目で追いやすくなった」といった子どもたちの声に出会います。これは決して「甘やかし」でも「楽をしている」のでもありません。一人ひとりに合った方法で学ぶ機会を保障することこそ、これからの教育に求められていることです。
もちろん、デジタル教科書をただ導入すればすべて解決するわけではありません。どの機能を、誰に、どのように使えば効果的かを判断し、調整する役割は先生やICT支援員が担っています。現場では、そうした連携のもと、少しずつ「(ICTなどの技術を)使いこなす教育」が広がってきています。
「画面ばかり見ていて大丈夫?」という声もありますが、紙にはできない「見え方・聞こえ方の工夫」こそが、子どもの理解を助けている事実があります。これは、特別支援の視点で始まった取り組みが、すべての子どもにとって有効な「ユニバーサルな学び」として広がっている好例とも言えるでしょう。
苦手を補うだけでなく、「わかる」「できる」の実感を得られること。それが、子どもたちの学びを支える一番の力になります。
何でもデジタル! と思われる方にこういう側面がある、ということをお届けできるといいな、と思います。紙を全部廃止してデジタル、というわけではない、ということをご理解いただきながら、ハイパーブレインは子どもたちが楽しく学べる環境を作っていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。



