組織で仕事をするということ

大江香織

大江香織

テーマ:ICT支援員

個人で仕事をしている方は、働くときはその周辺にやらなければならないことがたくさんあるなあとご理解いただいていると思います。

組織で仕事をするには

前回まで、ICT支援員のお話をしてきました。ICT支援員は、1人で学校に訪問し、1人で帰る、というイメージがある方もいらっしゃるかもしれません。学校に行ってそこで仕事して帰るだけだろう、と。

それだけでお給料がもらえればそんないいことはないですが、残念ながらお給料をもらうためには「働いた」証明が必要です。

一般的にICT支援員業務を行うとすると、ICT支援員本人以外が行う以下のような業務が発生します。

・時数管理(給与計算)
・業務管理(支援員からの質問受付・支援員教育)
これらは、書くとまあまあ簡単なのですが、実際行うとなるとかなり時間を割く必要があります。

たとえば時数管理ですが、基本的に直行直帰の支援員が「予定通り学校に行ったのかどうか」ということをどのように知るのかその方法を確立することが重要です。
ハイパーブレインでは、
・報告用のTeamsで学校に訪問した旨と退室した旨を必ず報告する。(欠席・遅刻・訪問間違いのいち早い把握も兼ねる)
・学校に訪問記録簿を置かせてもらい、紙と印鑑で訪問した旨を必ず記載する。
・報告書をシステム上に記載する。
この3つがそろって「働いた」ということを証明することになっています。

そのうえで、学校に確かに訪問したという報告書と印鑑を、予定表と突き合わせて確認し、その月の給与計算を行う必要があります。
支援員の人数、時間数にもよりますが、エクセルで管理しているとなると、専属の人員で1人日は覚悟しておいた方がいい作業量になります。
支援員の雇用形態としてはほとんどが時給制です。
月給ならここまで時間をかける必要はないのですが、時給はどうしても確認作業が膨大になりがちです。

続いて業務管理です。
大体のイメージとしては
「ICT支援員はICTのプロとして雇用しているのだから何を教えることがあるというのだ。むしろこちらが教えてもらいたいくらいだ」
というようなものがほとんどではないでしょうか。
もちろんICTのプロとして雇用していますから、一般的なICT知識は身に付けている人が採用されているはずです。
ですが、課題は「学校」という特殊な環境で働く、ということです。
一般的な会社や家庭で「フィルタリングでブロックされました」という環境はあまりないのではないでしょうか。
「パソコン40台を一斉に起動します」や「パソコン40台から課題を集めます」という環境もほとんどないと思われます。
更に「機密事項にアクセスしてはいけない」ためのルールが人力で守られている(物理的には可能な状況のこともある)ことも多く、やれることとやってはいけないことの区別について、運用ルールをきっちり把握しておかなければわからないということが多いのが学校の特徴です。
つまり、「事前に十分な知識を与える研修」と「疑問が出たときに解決できる窓口」の設定が必要です。
現場で活動していると疑問は尽きません。
それに対していったい誰に聞けば解決するのか、という窓口があれば支援員の活動は非常に効果的になります。
「先生、それ、私がヘルプデスクに聞いておきます」と言って支援員が先生に代わって問い合わせ、回答を先生にわかりやすくかみ砕いて説明すれば現場に良い効果が浸透していきます。
また、学校現場では新しい機器の導入、あるいはリース満了に伴う機器の入れ替えが行われます。
その時、「環境がどう変わるのか、どの機械が変更されるのか」等も支援員に事前に教育しておけば、更新後の先生の疑問に訪問時すぐお答えすることができます。これも支援員の効果的な活用ですね。
「先生、今年の夏校務で使っているパソコンが更新されます。データのバックアップをお願いします」と現場で言って回れば「あのデータが…!」と泣く先生の数を確実に減らすことができます。

これをお読みの皆さんも、働くときに研修は何にもありません、というのは不安ではないでしょうか。現場の先生も、ステージに応じた研修を受けられていることだと思いますが、支援員もステージに応じた研修が必要です。

赴任前の「環境を知る」研修、赴任後「支援のレベルをそろえるための知識・所作」の研修、新しい波に対応するため「生成AI、プログラミング的思考等」の研修等々。

採用したらすべてお任せ、「自己研鑽で頑張ってください!」では支援員の資質に大きく左右されてしまい、言葉は悪いですが当たりはずれが出てきます。
当然です。
自己研鑽にお金を払っているならともかく、ボランティアで勉強してね、という状態で頑張ってくれることを期待するのはよほど良い給料を払っているときだけです。
頑張ってくれる素晴らしい人が支援員に多いのは事実ですが、それではすぐに立ち行かなくなってしまいます。
頑張っても頑張らなくても待遇が変わらないのであれば、頑張らないほうが楽です。
そのような状態を作っていてはいけないのです。

ICT支援員っていう仕事は本当に素敵な仕事なんですが、その仕事をうまく実行するためには、「こういうことがあるんですよ」を丁寧に発信していく必要があると痛感しています。
これをお読みくださる皆さんに、「へー、こうなってるんだ」をお届けできるよう、来週も頑張ります。

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大江香織
専門家

大江香織(教育情報化コーディネータ)

株式会社ハイパーブレイン

教育用AIチャットボットや、教育委員会と学校の情報共有をスムーズにするダッシュボードなどのICTツール開発。教師本来の業務である授業の充実や子どもとの触れ合いに専念できるようサポートします。

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