国際的な調査結果から見る教員の多忙化
皆さんこんにちは。先回の「教員の多忙化」のご説明について、大きな反響をいただきました。
インタビューから推測される教頭先生の1日と、現場観察とのギャップが大きい、ということがビジュアルでわかりやすくまとめられている大阪市の資料は非常にインパクトのあるものですね。
他人に時間を決められる実態
先生方は「自発的に」やる仕事についてはインタビューに答えられますが、「他発的に」やる仕事は答えづらいものです。それを明確に図示した大阪市の資料を見た瞬間、私はこれだ!と思ったものです。
もう一度ご確認ください。
出典:文科省 2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会(第2回)資料3 大阪市教育委員会発表資料 (PDF:1916KB) 2P (2025年1月16日閲覧)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1369517.htm
さて、それでは「他人からのアクション」がない場合、先生は多忙ではないのでしょうか。
教育基本法に見る「教育の目的」
残念ながらそうではありません。学校と先生に求められる役割は、年々増加の一途をたどっています。先週もお話ししましたし、皆さんもその雰囲気は感じ取っていらっしゃるのではないでしょうか。
では、先生はどれくらい多忙になったのか、具体的に以下の図をご覧ください。
出典:文部科学省 教育基本法資料室へようこそ! 教育基本法ってどんな法律? 改正前後の教育基本法の比較(PDF:172KB)(2025年1月16日閲覧)
http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/06121913/002.pdf 2P
昭和22年に制定された教育基本法は平成18年に改正されました。
以前のものは全11条。
現行は全18条。
条項が新設された数もさることながら、同じ条項内でも条文が長くなっている個所が多くあります。
上記図にある第2条は象徴的です。
教育の目標として「幅広い知識」「道徳心」「健やかな身体」「創造性」「自律の精神」「職業」「男女平等」「公共の精神」「主体的に社会の形成に参画、発展に寄与」「生命を尊ぶ」「自然を大切に」「環境の保全」「伝統と文化の尊重」「郷土を愛する」「他国を尊重」「国際社会の平和と発展に寄与」と実に多くの内容が盛り込まれています。
平成18年以前に教員免許を取得した先生は、第2条で述べられていることを「自ら学んで」「子どもたちに教える」必要が出てきたわけです。
もちろん、それまでの教育活動でそれぞれの先生は素晴らしい活動をされています。ただ、法律で書かれるのとそうでないのとでは、どのような違いがあるかお分かりいただけるのではと思います。
このように、先生が教えるべきことは着実に増えています。
そして、平成18年改正時に唯一削除された条文は「教育上男女共学は認められなければならない」という既に時代にそぐわない文言となっていたものだけなのです。
普段生活していると、法律のことはあまり気にならないことも多いですね。ですが、日本は法治国家ですし、先生は公務員です。
法律で「これが教育の目的である」と決まるとそれを実現するためにどうするか、ということを考えなければなりません。
その内容が、平成18年以降とても増えた、ということはご承知おきいただきたいことです。
次回はTALISという名前の国際的な調査から見る多忙についてご説明させていただきます。



