お仏像を修復するタイミング(2)
こんにちは。旭物産の成田です。
わたしは40年余り「仏像屋」をやっているので、当然のことながら日々お仏像に接しています。
ですが、ふと考えました。一般のみなさんはお仏像に接する機会は少ないのではないか、と。
実際、わたしも一般の方向けにお仏像について提案したり、紹介することは少ないです。
と言っても、みなさんもご自分が檀家として所属している旦那寺にお参りに行ったり、旅行で有名なお寺に行ったりしてお仏像に接することはあるでしょう。
ですから、機会は少ないと言っても、ゼロではないと思います。
さて、そんなみなさんはお仏像というと、真っ先に「ご本尊様」を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。ですが、実はお仏像はご本尊様だけではありません。
ちなみに、ご本尊様としてお迎えするお仏像は、旦那寺の宗派によって決まることが多いです。
例えば、曹洞宗ならお釈迦様、真言宗なら大日如来様、お東・お西なら阿弥陀様です(「お東」とは真宗大谷派のことで、「お西」は本願寺派で、どちらも浄土真宗です)。ただ、そもそも例外的に、宗派とご本尊様が合っていない場合もあります。また、長い歴史の中で旦那寺に宗派替えなどのできごとがあり、代々家に伝わってきたご本尊様が現在の旦那寺の宗派と違う場合もあります。
それはともかく、ご本尊様ではないお仏像にはどんな種類があるのでしょう。
おススメのお仏像
わたしがおススメしているお仏像は1位が毘沙門天(びしゃもんてん)様、2位が観音様、3位がお不動様です。
なぜこの3体かと言うと、ご本尊様以外の仏像の人気トップ3だからです(あくまでも弊社調べです。ほかの仏像屋さんはそうではないかもしれません)。
「四天王」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
テレビのものまね番組の「ものまね四天王」という使い方のように、そのジャンルで秀でた4人を呼ぶときに使うかと思います。
もともと四天王とは、東方の「持国天(じこくてん)」、南方の「増長天(ぞうちょうてん)」、西方の「広目天(こうもくてん)」、北方の「多聞天(たもんてん)」のことで、神様です。
この「四天王」は、仏教においては天界の住民である「天部」です。如来様や菩薩様、またはその教えを信じている人々を「護る」ことが役割なのだそうです。
四天王はその役割を果たすためか、見た目は武将のようにたくましく、マッチョで頼りがいがあります。
この四天王の「多聞天」がソロ活動するときに「毘沙門天様」と言われます。
凛々しいお姿がきらめく
毘沙門天様はお仏像人気ランキングで堂々の1位となっています。
その凛々しいお姿だけではなく、
おめでたい「七福神」の一柱(ひとばしら)としても活動しているので「現生ご利益」にあやかることができそうだからなのでしょう。ちなみに「柱」は神様を数えるときの単位です。
ゴツゴツとした岩の上で邪鬼を踏みつけてポーズを決める毘沙門天様は、いつまでも現役で頑張りたい経営者の方にも人気があります。
トップ3のお仏像は、うちのお仏像の中でも一番高級な截金(きりかね)という技術を用いています。
截金とは、金箔などを数枚焼き合わせ、細く切って貼っていく技法です。
ですからこのの毘沙門天様は、凛々しい彫りにきらびやかな截金が映え、イケメンぶりに拍車がかかっています。
奥行きのあるきらびやかさ
さて次にご紹介するのは2位の観音様です。観音様はみなさんにもなじみがあるかと思います。
というのは、十一面観音様などが、お寺ではよく阿弥陀様の両隣に安置されているからです。たくさんの手を持つ千手観音様も、テレビや雑誌などで見たことがあるのではないでしょうか。
ちなみに観音様は十一面観音様や千手観音様以外にも何通りにも変化するらしく、「変化観音(へんげかんのん)」と呼ばれているそうです。
観音様は正式には「観音菩薩様」と言います。菩薩様は、お釈迦様が出家する前の王子だったときがモデルだと言われていて、見た目が豪華です。
そのようなわけで、今回ご紹介する観音様は淡く彩色され、観音様独特のきらびやかさが表現されています。さらに彩色を施した後、毘沙門天様と同じ截金が施してあり、一層きらびやかです。
彩色と截金を施した、奥行きのあるきらびやかさと全体的な雰囲気が、見る人に安心をもたらす表情だと感じさせ、安らぎを求める経営者の方に人気です。
さて、お仏像には彩色されているものがあります。
彩色の仕方には2通りあって、1つはこの観音様のように、木地に直接色を着ける方法です。
もう1つは、お仏像本体にコーティングし、その上から色を着ける方法です。
前者は絵具が木地に染み込みますし、淡い色をぼかしたりして柔らかい表現ができます。
対して後者は、コーティングした下地に絵具は滲み込まないので、はっきりと華やかな印象です。
力強く、怖さもあるお姿
最後は3位のお不動様です。
お不動様は「不動明王」とも言い、密教を象徴する仏様の大日如来様が姿を変えたものとされているそうです。
「明王」は大日如来様を中心とする仏像集団に属し、怖い顔をしているのは菩薩様の救いでも更生できない人々を更生させる役割を担うからだそうです。
大日如来様の隣に安置されるお不動様は「立像」と言い、ゴツゴツとした岩座の上に立っています。
「五大明王像」のように、お不動様を中心に安置する場合は「座像」と言い、岩をかたどった、角状の材を井桁に組み合わせた台座に座っています。
その姿には、迷う心を剣で断ち切り、羂索(けんさく)と呼ばれる縄で悪を縛り上げ、煩悩を捨て切れない人々を吊り上げて正しい方向に導くという意味があるそうです。
このお不動様も截金を施すことで、より力強さを感じさせます。毘沙門天様と同じ、商売繁盛や立身出世などの現生ご利益があると言われ、経営者の方だけでなく、一般の方にも広く人気があります。
というわけで
うちのお仏像で人気の毘沙門天様、観音様、お不動様をご紹介しました。
昨今、先が見えないと言われる時代の中で、戦国時代の武将たちがお仏像にあやかったように、多くの経営者の方が自分の未来のビジョンに合ったお仏像をお求めに来られます。
お仏像を買って安置し、お願いごとをすれば万事うまくいくわけではありません。
ですが、気に入ったお仏像を家に迎えることは、ご自身を奮い立たせ、
この先もがんばっていこうという気持ちの後押しにもなるのではないでしょうか。
そんなことも、わたしが仏像屋をやっていてうれしいと思うことの1つです。
それでは、今日はこのへんで。
またお会いしましょう。