薪ストーブでエコな暮らしは難しい ー 世間の実態から見える日本の限界
薪ストーブ設置で高くつくのが煙突部材、そして設置工事です。
とりわけ、費用を合理的に抑えようする場合、これはハッキリ言いますが薪ストーブ屋さんにも出自は色々、腕前は千差万別ですがお値段は総じて高いめです。よってここは工夫の余地があると正直思います。
たとえば、新築やリフォームでしたら「部材を施主支給」ということにして、取り付けを本体工事を行っている大工さんに依頼するのは、お値段の割に確かな腕前で取り付けてもらえる可能性が高く、合理性から言ってお勧めです。もちろん、そこを実現するためのハードルはあって、簡単にいかないことも確かですが……
もし、さらに予算を削減すべく、ご自身でDIYで煙突設置工事をやられるなら、とりわけ壁貫通部の施工(さすがにDIYで屋根に穴開ける勇気のある人は少ないと思います)に気を付けて煙道火災が万一起こった場合を想定した、近接木材との離隔や断熱が重要です。
具体的な目安を示しますと、これは法律が基本なのですが、法律はよく出来ていて、これを守っていれば煙道火災を生じても20分以内に消火(煙突への新たな空気の流入を絶って炎が収まるのをひたすら待つしかありませんが)が出来れば火災を生じることはありません。
- 煙突表面から近接木材までの離隔を最低でも15センチは確保する(空間の場合)
- 確保できない場合は断熱材を10センチ厚で入れる
- シングル煙突で常用温度が高い(貫通部煙突表面温度で200℃以上等)場合は熱がこもらない通気等を検討
ちなみに昨今のサウナブームで、サウナストーブが設置された小屋が燃えるなど事故が起こっておりますが、それらは、まず、上記目安が守られていないことによると想像します。ちゃんとやろうとすると意外と面倒なのです……
あとは屋外に出た煙突が、設置場所で想定される強風で持っていかれたりすることがないように、あるいは地震が来た時に倒れるなどして建物を損壊するなどしないように、上手に必要高さを確保するというあたりでしょうか。
状況がわからないので何とも言えませんが、例えば、こういう煙突見ると、私などは考えちゃいますよね……
ともかく結局は責任問題ですので、ご自身で結果に対して責任を持つということなら(DIYって、常にそうです)、DIYって、必要に応じてプロに聞くなり「ケースバイケース」での助言を得ながら(この記事も含めネット公開記事は一般論に過ぎません)、ぜひやられてみたら良いとは思います。
ただ最近、一つ気になることがありまして……
こういうDIY煙突部材メーカーの雄と言えば、かつては新潟のホンマ製作所でした。ホームセンターとかにも普通に売られたりしていますよね。けど、最近は円高や間接コスト全般の値上がりなど様々な要素によって、かつてほど「お値打ち」という状況でなくなっています。代理店としてメーカーに「しっかりせよ」と結構意見を言っているのですが、もはや「高級煙突部材メーカー」と言っていい価格帯になってきました。
そこで昨今、ホンマ製作所が失った「低価格帯」の穴を埋めるように、これまでは聴いたこともなかったような、新たな煙突部材ブランドが色々立ち上っています。前置きが長いですが、ここからが本論です。
私たち薪ストーブのプロは、DIYも含めて、様々な設置事例に接します。そして、これは申し訳ないと言えばそうですが、取り扱う本体ブランドの違いを超えて、かなりお互いに情報交換をしています。そこの中では、当然、昨今出てきた低価格ブランドについても経験を共有しています。
……で、いろんなブランドがありますし、あくまでも「今は」という話なので、あくまでも参考として聞いておいて頂く程度にして頂ければとは思うのですが……
本質から言えば、薪ストーブって「設置してから」が実は勝負なわけです。例えば5年先、10年先にどうなるか?そこでは「時間が紡いだ品質」みたいなものが、どうしても大きな意味を持ちます。それは関係者の切磋琢磨といえばきれいですが、もっとハッキリ言えば苦情や要望を巡るやり取りの積み重ねなんです、設置現場とメーカーの。
すなわち設置後の実際の状況において「こんなトラブルがあった」という時に、対応するための費用を誰が負担するんだ?という当面の問題も含めて「こんな事態がまたあったらたまったもんじゃない」ということで、かなり丁々発止のやり取りを重ねます。しかも1回とかでなく、様々な事例として。これ、設置現場とメーカーに一定の信頼、信用しあえる関係がないと無理でして……
当然、お互いに、製品を原因とした、そういうトラブル、クレームが将来あり得る、ということを設置時に想定し、議論できるので、ここはDIYと大きな違いですが「これは、まずいだろう」というのは、たいがい設置する段階で予測できます。ですので、基本的には最初の設置工事の一環として対処も出来ます。
低価格帯ブランドは、そこの機能がスカンと抜けてる。今のところですが、やはり「値段なり」、そういう「時間の紡いだ品質」として充分とは思えない。私たちからみれば「これは……あとあと、厄介なことになる」という問題を、製品の仕様として最初から孕んでいると判断せざるを得ないかなぁと。今のところ私は「高くなったとはいえ、ホンマ製作所を採用せざるを得ない」って感じです。
安くて品質に問題ないなら、もちろん、安い煙突部材も採用してみたい。予算というのは実際に薪ストーブ導入がされるかどうか?を左右する大きなファクターですから。品質に優れた高い部材だけで提案してみすみす失注とか、正直、そんな時代では、もうないと私は思っています。けど、やっぱり、使えない。
この製品の品質というのは、少なくとも内管がSUS316で外管がSUS304なら高品質とか、そんな単純な問題ではないのです。もう少し言えば、この仕様だと、あるシチュエーションでは特に問題を生じずに使い続けることも出来るけども、このシチュエーションでは、従来なら普通に期待できる維持管理方法が、この煙突ブランドでは使えないとか……そういう生々しい現場の状況を踏まえた「品質」なのです。
そのシチュエーションの判断も含めて、ユーザーさんご自身ができるのであれば、別に全然構わないかもしれませんが、正直、私も実物をつぶさに検討しないと、この種の判断は不可能です。そもそも実際に検討する機会に恵まれるか?も含めて、プロとDIYには、やはり大きな差があると言わざるを得ません。
なので、結論「安物買いの……」とまで言うのは不適切かもしれません。当面は、設置可能だし、実際に薪ストーブは使えるでしょう。しかし、ちょっと長いスパンで見ると……という問題、やはり、何十年もDIYを主な顧客として事業を成立させているホンマ製作所なり、実績のあるメーカーの部材の強みは、ここにあります。
何度も言いますが、これは、私が知る限りのブランドに関しての話ですし、あくまでも「今は」の話ですし、将来、私が「使えない」と判断しているブランドも、改善を重ねて、ちゃんと低価格帯の信頼できるブランドに育つ可能性はあると思います。
けども、実際には、そこに至るまで、どれほど丁々発止のやり取りにを含む苦難に満ちた道のりを関係者で共有しなければならないか、と思うと…………というところですm(__)m
簡単に書こうと思ったのに、いつものクセで長文となりました。「ネットで簡単に手に入るものや情報」というのは、実際に想定される長い使用期間のスパンでは、そうも良い結果につながらないということが、特に薪ストーブでは普通にありますので、参考までに、また気が付いたテーマで書いてみようかと思います。