~ 士衛塾空手を通して、伝えたいこと 56 ~
~士衛塾空手を通して、伝えたいこと~
士衛塾山梨の門下生に向けた、私からのメッセージを過去のニュースより転載します。
2018年 7月号 士衛塾山梨ニュースより
今回は冒頭から反省を…。
金丸優奈の痛めていた左手首を大事に大事にしながらこの間練習してきました。6月10日の埼玉大会に向けてしっかりと今できる練習をしてきました。しかし、甲斐疾風クラスで、まさかの再負傷。
最高師範からは、「支部長の監督責任が問われます」と。正にその通りです。
この埼玉大会では、新潟に行っている藤巻明日香とのワンマッチを主催者に無理を言って組んでもらい、絶対王者の明日香に優奈が勝てないまでも、どこまで食らいつくことができるか、そしてその経験は計り知れないものだと思っていました。それだけに、本人はもとよりご家族の落胆ぶりにお詫びしかございません。この間の試合に向けた全ての練習が水の泡となってしまいました。申し訳ございません。
さて、改めて私たちが行っている直接打撃性のフルコンタクト空手を考えてみた時、それは「人の痛み」を知り「己の痛み」を知ることです。それは「心の痛み」にも共通することです。そこで知り得ることは「加減」です。この加減がとても大切です。相手の成長のためには手加減ばかりしていては成長しません。その人のレベルの少しだけ上になるように手加減をすることが大切です。これは、直接当て、痛みを知ることができるからこそです。
普段あまり言いませんが(暗黙の了解というか、自然と身に付いてくるものなので)特に黒帯、色帯に再認識してもらいたいことがあります。組手(試合は除きます)の最低限のルールとして、
①自分より強い相手には全力で向かって行くこと、
②自分より弱いものには加減をすること。その程度は相手のレベルより少しだけ強く!です。
つまり、格下の相手をコテンパンにするのではなく、五分五分くらいが丁度良いです。あと、感情的になって組手をするのは、もはや「組手」と言いません。それは「暴力」です。冷静にことを構えることができない者は未熟者です。しっかりとした人間を目指しましょう。
さて、武道やスポーツにケガは付き物(では困りますが)ですが、学校(幼稚園・保育園~高校)での事故事例を調べてみました。
平成17年度~平成28年度の災害共済給付された総数は6,549件で、うち死亡が1,312件、障害が5,237件でした。
そのうち各スポーツ等に分類されている49種類、3,033件(死亡317件、傷害2,716件)について、障害件数 1位-野球(含軟式)762件、2位-サッカー・フットサル373件、3位-バスケットボール235件、4位-ソフトボール148件、5位-バレーボール102件で、死亡件数 1位-サッカー・フットサル37件、2位-持久走・短距離走34件、3位-バスケットボール32件、4位-野球(含軟式)30件、5位-柔道でした。ちなみに柔道は障害では6位97件でした。
武道系で見てみますと、柔道(死亡26件、傷害97件)、剣道(死亡11件、傷害21件)、相撲(死亡1件、傷害4件)、空手(死亡0件、傷害9件)、弓道(死亡1件、傷害7件)、ボクシング(死亡1件、傷害10件)、レスリング(死亡1件、傷害7件)、フェンシング(死亡1件、傷害0件)、その他武道(死亡0件、傷害3件)でした。
空手は他のスポーツや同じ武道系から見ても安全なものと言えます。それに甘んじず、コンタクト競技なので、指導員一同、門下生に事故のないよう気を引き締めていきます。
このたび、お付き合いのある女性空手家 山本由紀さん(極真館 愛知)の本「人生を闘い抜く」が発売され、私も購入しました。
27歳で空手を初め、二児の母であり、選手であります。昨年43歳で鍼灸師の資格を取得しました。女子の硬質のチェストガードを一般的にしたのも彼女です。本の冒頭で、とても元気になる言葉が掲載されていました。
「女だから、母親だから、主婦だから、もう歳だから、仕事があるから、試験があるから、怪我をしたから、批判されたから、非難されたから、周りから『やめろ』と言われたから、こんなすべてを『やめる理由』にしなかった。」
小さいうちから「辞める」「やらない」「出来ない」理由を探すようなことはやめましょう。大切なのはどんな状態であれ、「やる」ためにどうするかを考え、実行することです。
先日、士衛塾新潟の加藤克己さん(初段・48歳)が、脳出血等で倒れられ、命は助かりましたが、左半身が麻痺され、現在懸命にリハビリをしています。
Facebookではその様子が掲載されていますが、当たり前のことが当たり前にできなくなったいま、ダメになってしまうのではなく、出来ることへの感謝などが綴られています。
決して諦めることのない復活劇をポジティブに書いてあり、元気をいただいています。
つまずいたり、壁に当たったりしてもなお、起き上がり、壁を超えるための懸命な努力を人は誰でもできるはずです。それをしないのは、非常にもったいないことです。
士衛塾山梨は、大きな家族と私は思っています。親として子どもたちを助け、時には試練を与え、怒り、褒め成長していってもらいたいと思っています。