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細かい部分まできれいに仕上げるティグ溶接技術が強み

アルミ、ステンレス、鉄、特殊金属精密溶接のプロ

小松一廣

小松一廣 こまつかずひろ
小松一廣 こまつかずひろ

#chapter1

アルミやステンレスといった金属を溶接する“ティグ溶接”に対応

 「当社は、アルミやステンレスといった金属の精密溶接を手掛けています。例えば、アルミと言っても、成分によって1000~7000番台まで番号が振られ、航空機には7000番台、車両は5000番台を使うというように分かれています。電流設定、溶接部のあしらい方など、材料によって施工の仕方はまったく違ってきます」

 そう話すのは、山梨県笛吹市にある「テックウェル小松」の小松一廣さん。得意とするのはTIG(ティグ)溶接で、電気溶接とも言われるアーク溶接の一種。部材同士を接合する際、熱で溶かして凝固する方法です。
 気体中の放電現象によって熱を得ますが、専用のガスを吹き付け、空気を遮りながら行うため金属が酸化しにくく、仕上がりが美しいのが特長です。また、火花がほとんど散らず、音も静か。閃光で視界を邪魔されず対象箇所が見やすいため、細かい作業にも適している反面、職人の技量が求められます。

 工房を構えて以来、小松さんは半導体の製造工程に使用される容器・真空チャンバーや、航空機のバッテリー、研究装置の部品など、多様な製品を担当。実践の中で培った知見で、特殊な素材、難易度の高いオーダーにも応えます。

 「まず金属と向き合い、図面通りに仕上げるために必要な道具や工程を頭の中で整理する。そして自分の知識、技術、経験を総動員して臨むのが私にとって至福の時間です。学生時代から50年勉強して40年仕事をしていても、奥が深く、まだまだ興味が尽きません。日々、研さんを積んでいますので、溶接のことなら法人・個人を問わず何でもご相談ください」と胸をたたきます。

#chapter2

28歳でアルミと出会い精密溶接の道で約40年。さまざまな金属を溶接し“師匠はお客さま”

 専門学校で溶接を学んだ小松さんは、自動組立機関連の企業に入社。12年の在籍中、アーク溶接をはじめ、部品加工・組み立て・設置・使い方の指導まで一貫して担いました。
 「おかげで、機器まわりに詳しくなりました。今も取引先の方と話すと『部品のことをよく知っているね』と驚かれることがあります」
 
 28歳で、世界トップクラスの半導体製造装置メーカーに転職。当時は1980年代前半で、製造装置の素材はステンレスが主流でしたが、小松さんは軽量なアルミニウムへの転換が進むと直感します。上司に直談判し、アルミ溶接を学ぶ許可を得て、東北大学など、いくつもの研究機関や専門家を訪ね歩きノウハウを求めました。

 会社に戻ると溶接棒を握り、独学で技を習得します。アルミ、ステンレス、鉄など、金属の扱いについて技能を養った小松さんは、「幅広く業務を請け負って道を究めたい」と38歳で独立。機械加工などを行う事業者や個人の注文を受けるようになりました。

 「古い機械で、すでに製造停止の部品を修理したり、半世紀以上前のバイクのタンクを作り直したり。ご近所の農家さんの脚立も補修しますし、他県から2時間かけて『部品を直してほしい』と持ち込まれたこともあります。困り事を抱えている方のお役に立ち、笑顔になってもらう。私はそのお顔を見るのが好きなんです。『小松さんならできるよね』と言って、さまざまなお題をくださるお客さまが私を育ててくださいました。いわば師匠ですね」

小松一廣 こまつかずひろ

#chapter3

自分の力を存分に試せる溶接職人の魅力を若い世代にも伝えたい

 精密溶接で実績を持つ小松さんへの信頼は厚く、金属の加工業者などに赴くと「やり方を教えてください!」と若手社員が駆け寄って来ることも。ある会社では、小松さんのための作業場や道具が用意されているそう。

 「難しいからと断れば職人の名がすたるけど、自分の力を見誤って不良品を出したらもう次はない。お金をもらう以上、お客さまを裏切ることはできませんから、命を懸けるつもりで取り組んでいます」

 0.5ミリの狂いも許されない緻密な世界。手が震えることがあってはいけないと、たばこを早々にやめ、晩酌も制限する生活を続けています。体力が落ちると集中力も低下するため、ウオーキングや筋トレも欠かしません。
 「長い付き合いの取引先が多く、40代、50代と年輪を重ねるにつれ『ますます完成度が上がっている』と言われることが増えました。80歳まで現役を目指します」

 “溶接道”の探求に意欲を見せる一方、後進の育成にも力を入れます。これまでも長期・大規模案件の際は取引先に出向き、若手に手ほどきしながら現場を進めてきました。今後は、講演や技術指導の要望があれば、できる限り応えたいと言います。

 「今は、どの業界でもオートメーション化が加速しています。でも、一つ一つオリジナルで設計された部品がある限り、職人による成形の自由度が高い溶接は重宝されるしょう。一瞬の集中力がものを言い“時給”でなく“技量代”で稼ぐ。自分の力を試せる溶接の魅力も、技術と一緒に若い人たちに伝えていきたいですね」

(取材年月:2023年7月)

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アルミ、ステンレス、鉄、特殊金属精密溶接のプロ

小松一廣プロ

精密溶接

有限会社テックウェル小松

アルミニウムのほか溶接可能な金属であればすべて対応可能。溶接歴50年の職人が半導体製造装置部品から各種機械部品、農具やバイクパーツの修理まで手掛け、幅広く困りごとに応えます。

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