企業の未来を支える、伝統と技術の法人印
印章は、一生のうちに数えるほどしか購入しない品です。それなのに、何を基準に選べばよいのかを知る機会はほとんどありません。当方はECサイトを主軸に全国からご注文を承っていますが、ご注文をお決めいただく前に、必ず対話の時間を取っています。
用途に適したサイズはどれか、書体は何がふさわしいか、ご予算はどのくらいを考えていらっしゃるか。メールやZoomで丁寧に打ち合わせを重ね、納得のいく一本をオーダーメードで仕立てます。宏雅堂の経営理念は「千思万考」です。千も万も考え抜くという意味ですが、これは彫る側だけでなく、選ぶ側にも当てはまることだと思っています。
ご依頼は法人のお客さまに限りません。お子さまの成人やご結婚、お孫さんの誕生など、人生の節目に贈る方が多いのも印章という品の特徴です。ある経営者の方からは、30周年を記念した法人印のご相談をいただきました。その方が選ばれたのはマッコウクジラの歯です。象牙以上に強度があり、かつ希少な素材を用いることに、「個」を大切にしながら強い志で歩んでいくというビジョンが表れているように感じました。どの印材を選ぶかということ自体が、その方の意思表示になるのです。
伝統を守りながら、新しい挑戦も続けています。山梨県印章店協同組合の指定職人とともに新ブランド「伝匠印」を立ち上げ、国内でも珍しい手彫り水晶印を制作しました。インバウンドの増加を受けて、外国人向けの彫刻体験も開催しています。実演会などさまざまな角度からアプローチすることで、多様な方に印章の魅力と価値をお届けしたいと考えています。
ペーパーレスが浸透し、印鑑を使う機会は減少傾向にあります。それでも押印が必要な場面は、契約締結や同意など、押し手の確固たる意思を示すときです。数々の手続きが簡略化される中で、「一押し」の意味は以前にも増して大きくなっていると感じています。だからこそ私も腕を磨き、皆さまのご決断に値する印章をつくっていきたいと思っています。


