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不安で生きづらいときに 心理カウンセラーが伝えたい「心が軽くなる不安とのつき合い方」②

一瀬英史

一瀬英史

テーマ:心理カウンセリング メンタルヘルス対策

コロナ禍をきっかけにした新しい生活様式、AI技術の急速な発展、気象変動、そして今なお続く戦争…。
現代社会は、これまで以上に将来が不確実で曖昧である時代になりました。

近年、「VUCA(ブーカ)」という言葉を耳にすることがあります。
これはもともとアメリカの軍事用語だそうですが、現在ではビジネスや教育などでも使われる概念です。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、「予測不能で、複雑で、明確な答えがない時代」を意味します。

前回の記事では、「不安」が将来や人間関係、仕事、勉強、健康、そして自分の存在そのものにまで広がる感情であり、
それは「まだ起きていない不確実なこと」や「曖昧でわからないこと」に対して生じるものだとお伝えしました。

VUCA時代を生きる私たちにとって、「不安」とどう向き合うかは、まさに生き方そのものを映すテーマです。
単に「不安をなくす」「和らげる」といった一面的な見方では、もう立ち行かない時代に来ているのかもしれません。

私は、不安を避けるのではなく、

• 不安を感じられる力
• 不安に耐えられる力
• 不安を支えあう関係
• 不安を理解し、安心へと変化させる心

へと成熟していくことが、これからの時代を生きる力だと感じています。

以前書いた「ネガティブ・ケイパビリティ(わからないままに耐える力)」も、まさにそのひとつです。

日常の中で誰もが感じる「不安」

みなさんは、どんな不安を感じることがありますか?

「就職できるか不安」、「結婚相手が見つかるか不安」、「老後の生活が不安」といった将来への不安。
「体調を崩してしまわないか」、「病気がうつらないか」といった健康への不安。
「収入が安定するだろうか」、「景気が悪化しないだろうか」という経済的な不安。
また、人間関係やキャリア、自然環境、自分の生きる意味や価値などに対する漠然とした不安を感じることもあります。

日常の中で不安を感じたときには、気分転換をしたり、情報を集めたりして和らげようとすることが多いでしょう。
不安を「深掘りしてみよう」と思う人は、正直それほど多くないかもしれません。

心理カウンセリングで見えてくる“深い不安”とは

心理カウンセリングの場では、不安を丁寧に見つめることがあります。

それは、日常的な心配とは少し質の異なる不安――
過去の人間関係や体験の中で身についた「心のクセ」としての不安――が現れることが多いからです。

例えば、こんな不安を感じることはありませんか?

去勢不安
「大切なものを奪われるかもしれない」という感覚の不安です。
例えば、「誰にも迷惑をかけていないし、たいした失敗じゃないのに今の立場を失ってしまう」、「評価を失うのが怖くてチャレンジできない」と感じるとき、この不安がはたらいています。
自分の存在価値や、持っているものが脅かされるように感じる――それが去勢不安です。

迫害不安
「攻撃されるかもしれない」、「嫌われるかもしれない」という不安です。
例えば、「自分の意見を言ったら、責められるのではないか」「LINEの返信が遅いときに、怒っているのでは…と気になる」、「楽しんでいると、なぜか落ち着かない」といった気持ちです。
人との関わりの中で、相手の反応を過敏に感じ取ってしまう――そんな不安が迫害不安です。

超自我不安
「○○しなければならない」という心の中の厳しい声にしばられる不安です。
「もっと頑張らないと」、「もっとちゃんとやらないと」と自分を追い込み、「それに従わなければ自分を許せない」と、“こうあるべき”という声(=超自我)が過剰になりすぎて、メンタル不調に陥ることはよくあることです。

自己愛不安
「自分の価値が揺らいでしまう」という不安
例えば、「すごいね」と言われればホッとし、少し注意されただけでも不安になったり。周りの人が褒められると自分がダメな人間だと不安になったり・・・。自尊感情が低い、ということもこの不安に関係しています。

分離・見捨てられ不安
「離れると失うのではないか」、「拒否されるのではないか」という不安です。
たとえば、パートナーと離れている時に「何をしているの?」と頻繁に連絡してしまうとか、相手に過剰に尽くしたり、機嫌を取って関係を維持しようとしますが、不安が強くてなかなか関係が持続しません。

対象喪失不安
大切な人やものを失うことへの恐れです。
たとえば、「いつかこの関係は切れてしまうのではないか」、「もう誰も失いたくない」と感じて新しい関係を避けてしまう。大切な存在との別れや喪失への心情が、心の奥で静かに残っている状態です。

侵入・解体・存在・消滅不安
これらは「自分の存在が脅かされるような感覚」に関わる不安です。
たとえば、「人に近づくと、支配されるようで怖い」、「悪いものに攻撃されて、自分が滅んでしまうのではないか」、「自分が本当に存在しているのか、消えてしまいそう」、「何かに吞み込まれてしまうのではないか」
といったものであり、その強さによっては医療のケアが必要な性質の不安です

不安を感じることは、誰にとっても避けたいものです。
けれども、人生の中では、思いがけず不安が強くなり、なかなか収まらない時期が訪れることがあります。

その不安が仕事や人間関係にも影響を及ぼすこともあるでしょう。
そうしたとき、これまで抑え込み、切り離してきた不安が、ようやく「扱われるべきもの」として顔を出すのかもしれません。

不安を知ることが「安心」への第一歩

不安を感じるのは、弱さではなく、人間として生きている証です。
不安は、なくすものではなく、理解して整えるものです。

不安を言葉にし、誰かと分かち合うこと。
それは、自分の不安を丁寧に見つめ、少しずつ理解し、安心を取り戻す小さな一歩となり、自分をより深く知る道でもあるのです。
「不安に振り回されない成熟した自分」を成長させる道です。

心理カウンセリングは、その道を安心して歩むための、信頼できる伴走者のような存在です。
不安を感じたとき、一人で抱えずに話してみることから始めてみませんか。
心理カウンセラーとの対話は、不安を整理し、自分らしい安心を取り戻すための第一歩になるでしょう。

不安を通して自分を知り、心を整えていく――
それが、VUCA時代をしなやかに生きるための、新しいウェルビーイングの形ではないでしょうか。

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一瀬英史
専門家

一瀬英史(心理カウンセラー)

Eustress株式会社

かけがえのない人生を豊かに生きる上でストレスは必ずしも悪ではありません。心理カウンセリングや各地でのストレスマネジメント支援の豊富な経験を生かし、個人や家族,会社や組織の心の健康をサポートいたします。

一瀬英史プロは山梨日日新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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