ネガティブ・ケイパビリティと里山マインド
日向灘の地震の発生を受け,南海トラフ巨大地震へ備えるように注意が呼びかけられています。
毎月11日はストレスマネジメントの日。
今回は,地震などの災害で辛い体験をした時の心のケアの備えとして,人をサポートする時の話しの聴き方や質問の仕方について,3つの心得を書いてみようと思います。
人へのサポートを知ることは,自分が被災者になった時のセルフケアにも役立つものです。
一緒にいることを大切にしながら事実や状況を聴く
「話を聴かせてもらえますか?」と,最初に事実や状況を質問しますが,体験したことを語ることは相当困難なことです。
それを理解した上で相手の話す様子を察し,「今,話していて辛くはありませんか?」と声をかけることもサポーティブです。
その人の「話すことが辛い」という主体性を支えることになるからです。
辛い体験をした時に一緒にいてくれるだけで心が支えられた経験をしている人も多いと思います。
災害に限らず,痛みや傷つきを味わうあらゆる場面において,人は,自分の体験を誰かと共有することで支えられるようです。
心身のストレス反応を否定しないで聴く
「眠れていますか?」,「食欲はありますか?」,「いつも通りの活動ができていますか?」と,睡眠や食欲,活動の様子を質問します。
応答の様子でその人のダメージの程度が予想できます。
他にも,
「イライラすることはありますか?」
「やる気が起こらなかったり,思い出して辛かったりということはありませんか?」
「自分を責めてしまうようなことはありませんか?」
と,心身の反応をていねいに質問します。
場合によっては,「自分が悪いとか,死んでしまいたいと思うくらい辛いというようなことはありませんか?」といった考えや気持ちを聴くことも必要な時があるでしょう。
大切なことは,話を聴く人が反応を悪いこととか,無くそうとか考えないことです。
なぜなら,反応は「大変な出来事に対する心身のサイン」であり,その人の主体性の現れだからです。
語りに対して「そうなることも自然なことだと思います」,「私が同じ体験をしても同じようになると思います」と受け止めます。
ストレス反応に対する本人の対処を聴く
「そのような時にはどうしていますか?」と,本人の心身の反応に対する対処について質問します。
そして,「そうしているのはいかがですか?」と,その対処が本人にとってどういう効果があるか質問します。
対話によって,その人が自分で解決できる健康的な面を支え,また,健康さの程度を知ることができるでしょう。
例えば,「夜中起きてしまったら,そのまま起きてしまいます」<そのまま起きているのはどうですか? 仕事に影響しませんか?>「そうですね。でも,もっと大変な人のこと考えればそんなこと言ってはいられません」といった応答であれば,その方の現状を尊重するでしょう。
<困難なことへ気丈に向き合っているように感じます>と,その人の様子から感じたことをお伝えします。
援助を求められた場合にはできる支援を提案し,気持ちの落ち込みや不安定さが強い場合には諸機関に相談するようにすすめ,自暴自棄で不適切な行動をしていた場合に行動を制限することも必要です。
しかし,サポートする側の役に立ちたいという気持ちが先行したり,解決しない状態に耐えられなくなったり,支援によって利益が得られることから働きかけてしまう,といったことがあります。
心理支援の専門家であっても(あるが故に)それに気づけない場合があります。
「心の傷を無くすことや辛い体験の記憶は消えない。心のケアとは,辛い体験に伴う自分の反応に対してセルフコントロールできるように支援すること」です。
「人の心を支えるってどういうことだろう?」ということを日頃から考えることも災害への備えではないでしょうか。
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