3月,新しい日々を前に沈む心と心理カウンセリング
あなた自身やお子様が過敏性腸症候群でお悩みではありませんか?
私は小学校4年生の頃,月曜日になるとなぜかお腹が痛くなり,学校を休みがちになった時期がありました。
現在では,ストレスや自律神経の乱れなどで腸の調子が悪くなり便秘や下痢などを引き起こす過敏性腸症候群と診断されるでしょう。
私は,見通しがもてない出来事に遭遇すると自律神経の調子が悪くなり腹痛を起こしやすい体質です。
過敏性腸症候群の悩みの改善を目指す心理療法をご存じでしょうか?
心身一如の心理療法である動作法の症例をご紹介します。
子どもの頃からお腹をこわしやすかった会社員のAさん。
特に長期休暇明けや新年度などに症状が出やすく,新しい部署に配属された今年,会社に行けなくなってしまいました。
以前のAさんは,会議で発言したり,プロジェクトリーダーになったり,活動的で積極的な面が見られていました。しかし,新しい部署で仕事を抱えてしまい周囲に相談することができず,苦手な業務が滞ってしまったことがきっかけでした。
復職支援の心理カウンセリングでAさんは,「仕事に取りかかりづらくなった。自分のことなど誰もわからない。相談してもしょうがない」と話しました。
少しずつ職場復帰を目指すのですが,腹痛が生じて長く職場にいられません。
「お腹が張ってくると,お腹が痛くなるのではないかと不安になってガマンする。ガマンするとガスが出てしまうのではないかと緊張する。その様子に気づかれて変に思われる・・・」と悩んでいました。
Aさんは動作法に取り組み,自分の身体と対話しながらさまざまな気づきを得ていきました。
まず,腕を上げる動作です。
カウンセラーに腕を支えてもらいながら上げてみたのですが,その時カウンセラーから「Aさんは上げる瞬間に,すごく力を入れるのですね」と言われました。
自分では全く気がつきませんでした。
改めて自分の身体の様子をじっくり味わいながら腕を上げようとすると,確かに上げはじめる時にグッと動きを止めるような力を入れていることに気づいたのです。しかし,その力を抜こうと思ってもなかなかうまくいきません。抜く方法が分からないのです。
次に,横臥位で身体をひねる動作を行いました。
柔軟体操をするかの如く,心理カウンセラーが腰と肩に手を当て横臥位を支えてもらいながら身体をひねって弛めていくのです。
すると,心理カウンセラーが肩に手をあてた瞬間,Aさんは全身に力を入れて身を固めました。それはまるで誰かに援助してもらうことを拒むかのような緊張でした。
そしてAさんは,肩を上げてみるようにカウンセラーに言われました。
Aさん自身は肩を上げているつもりなのですが,しかし,その動作は上半身を釣り上げていくような動きになっていて肩はほとんど動きません。カウンセラーから肩だけを動かすように促されても,Aさんは「動かしています」と答え,動いていない自分の肩の様子を自覚できませんでした。
カウンセラーは,カチカチになったぶ厚い岩のようなAさんの肩を感じたのでした。
動作の様子は,腹痛を生じさせる仕事の様式と重なっています。
例えば,Aさんの腕を上げ始めたとき力が入ってしまう動作は,新しい部署に配属された時の仕事ぶりに通じており,何かし始めるときに必要以上に頑張ってしまう様式なのかもしれません。
身体をひねって弛めていく動作の時に力が入ってしまうのは,他者からのサポートを受けること自体に緊張するAさんの様式が現れ,相談しづらいことにつながっているのかもしれません。
肩が動かないことに気づかず,肩を上げようとして上半身を引き上げていたのは,バリバリ仕事をしているように見えても苦手なことに気づかず,やらなくてもよい仕事をしてしまう様式だったのかもしれません。
Aさんは,仕事上の不安がたくさんあったにもかかわらず,不安を感じないように過剰にガマンをしていたのでしょう。身体のあちこちに力を入れ,その緊張が慢性化し,その緊張を自分で程よく弛めることが難しくなってしまい,自分の意図に反して身体が緊張に耐えられずおならが出てしまうような感じになったのかもしれません。
子どもの頃から長い間に身につけてきた不安に対する対処方法なのでしょう。しかし,過剰にガマンするという不安への対処方法は,本来のAさんらしさを実現させるためにはふさわしい方法ではないのです。
腹痛は,本来のAさんらしさを実現させるためのサインなのかもしれません。
Aさんは,動作法を通して慢性的な緊張に気づき,力の入れ方や抜き方に取り組むことで,少しずつ自分の身体を自分の思った通りに動かすことができるようになっていきました。それとともに,症状に悩むことはなくなっていきました。
動作法による心理カウンセリングをご希望の方はお問い合わせください。☞ https://eustress.jp/ask
※ 症例は,事実に基づいたフィクションです。
動作法の症例をお知りになりたい方は,鶴光代著「臨床動作法への招待」金剛出版がわかりやすく参考になります。