火災保険を適用される屋根のトラブル
家づくりを考えているときは、「大きなリビングがほしい」「1階から3階までの吹き抜けをつくりたい」など、さまざまな夢を持っていることと思います。
また、外観も洋風、和風など夢は大きく膨らんでいると思います。しかし、機能性や安全性といったことを考えると、妥協せざるをえない部分も出てきてしまいます。例えば、和風建築にしたいと思っても、日本瓦は重いので地震が起きたら危険なのではないか、といった不安も出てきます。
今回は、瓦屋根は本当に地震に弱いのかについて考察していきます。
家の倒壊は瓦ではなく耐震性の問題
瓦を使う屋根は重く、スレートを用いた屋根の倍以上の重さになると言われています。
地震が起きたときは、屋根部分が重ければ重いほど揺れは大きくなるため、日本瓦のほうが、地震に弱いと言われています。
世界でも有数の地震大国といわれる日本において、地震が起きた際に建物が倒壊してしまう恐れがある瓦屋根を選択することは、大きなリスクを抱えることになります。
しかし、本当に瓦を使った建物は、地震の際、倒壊のリスクが高いのでしょうか?
実は、ある耐震シミュレーションソフトを使って、地震の際に、屋根の重さが建物を倒壊させる要因になるのかどうかについて検証が行われました。
この検証によると、同じ震度であれば、仮に屋根を軽くしても耐震補強をしていない建物であれば、倒壊してしまうという結果が出ています。
またこの調査では、重い瓦屋根であっても、壁量を増やす耐震補強をした家は倒壊のリスクが減るといった結果も出ています。
つまり、屋根が重いということは耐震性において有利ではないものの、軽い素材であっても、建物自体の耐震性が低ければ倒壊の恐れがあるということです。
こういったことから、しっかりと耐震補強を行えば、瓦を使った家づくりができるということがわかります。
景観だけではない、瓦屋根の大きな魅力
瓦屋根の魅力は、単に見た目が美しい、日本の景色に調和しているというだけではありません。瓦屋根にはいくつも魅力がありますが、そのなかでも大きいのが断熱性です。
現在、日本の住まいは高気密・高断熱が当たり前となりつつありますが、屋根の断熱性において、瓦は金属やスレート屋根に比べて、その性能が高いことで知られています。
粘土が主成分の瓦は、金属やスレート屋根に比べ温度は平均で7~8度も低くなります。さらに冬場は、日中、瓦に蓄えられた熱が日没後の急激な温度低下を防ぎます。このことから、夏は涼しく、冬は暖かい家を実現します。
ほかにも、定期的なメンテナンスを欠かさなければ、素材により30年、長いものでは50年、100年は持つといわれるほどの耐久性を備えています。トラブルがあった際、その部分の瓦だけを外して補修ができることなど、経済性の高さも瓦屋根の大きなメリットです。
瓦屋根の耐震性をつかさどるガイドライン工法とは?
さまざまなメリットを持つうえ、壁量の耐震補強を行えば耐震性も高まるとなれば、瓦屋根を選択する方は増えるかもしれません。
しかし、それでも地震や強風で瓦が割れたり、ズレたりするほか、落下の危険性が高いといった不安がつきまとうかもしれません。
ただ、最近ではそうした不安も無用のものとなりつつあります。それがガイドライン工法です。
ガイドライン工法とは、建築基準法で定められた耐風性能および耐震性能の技術上の基準を試験などによって確認し、合格した工法です。
具体的には、従来であれば粘土で葺き固めていたり、何枚かに1枚留め付けられていた瓦を、釘や銅線、金具類を使って躯体と全数緊結するなど、より強固に瓦同士をつなげるようにする工法です。耐震実験や実物大の家屋による振動実験では、震度7クラスの大地震であっても、瓦が割れたりズレたりすることなく耐えられることが科学的に検証されています。
またガイドライン工法を使った瓦屋根は、耐震性だけではなく、50年に一度の強風でも瓦が飛ばない設計になっています。これは地震だけではなく、毎年のように大きな台風が上陸する日本において、非常に安心できるものだといえるのではないでしょうか。
最新の工法、瓦を使えば憧れの純日本建築も夢ではない
重い瓦であっても壁量の耐震補強を行い、ガイドライン工法に基づいて瓦を設置することで、耐震性を高めることが可能です。
現在の建築技術をもってすれば、瓦屋根を採用した住まいが地震に弱いといった心配は軽減されたのではないでしょうか?
そして、さらに安心感を高めたいのであれば、軽量防災瓦の利用をおすすめします。
軽量防災瓦とは、従来より厚みを抑え、重量を軽くしつつ、瓦同士の重なりでロックし合うなど工法の工夫により安全性を高めた瓦です。用いる瓦、工法、耐震補強など正しい知識で家づくりをすれば、瓦を生かした素敵な住まいを実現することができます。