「自分史」を書き換えることによって自分を変える
東日本大震災も発生から丸3年を迎えました。その間いくつかのキーワードが生まれました
が、「絆」と共に「希望」もその一つでしょう。
それではここで「希望を持つ」とはどういうことかについて、心理学的に改めて考えてみたい
と思います。
○個人的な背景
この「希望を持つ」ということについては、私にとって今も思い出すことがあります。
それは数年前、私が米国コロラド州のデンバー大学大学院のカウンセリング心理学の博士課程
で勉強していた時のことです。
カウンセリングの実習で指導教授と共に私の面接テープを検討していた時、その教授はカウン
セリングの目的は相談者(クライエント)に希望を与えることだ、と言いました。
しかしながら私自身は半信半疑でした。というのは、クライエントに希望を与えても、もし
それが実現不可能なら逆にクライエントは深く傷つくのではないか。つまり偽りの希望を
与えることはクライエントの真の利益に反するのではないか、と思ったからです。
しかしながら、その後読んだ希望についてのいくつかの心理学的研究が、私の希望についての
理解を深めてくれました。
○希望についての心理学的研究
その一つが、希望についての心理学的研究の中心の一人である米国ノースカロライナ大学の
バーバラ・フレドリクソン教授の「なぜ希望を選ぶか」という小文です。
教授によると、希望は他の肯定的な感情とは大きく違うというのです。つまり、大部分の肯定
的な感情は、安全で充足していると感じる時に起きてくるのに比べ、希望は状況が良くない
時、例えば物事がうまくいかない時、あるいはどうなるか非常に不確定な正にその時に起きて
くるというのです。
そのような状態で起きてくる希望を、有名な心理学者のリチャード・ラザラスは、“最悪を
恐れながらも、より良いものを祈願する”ものと表現しています。
フレドリクソン教授は、希望は文字通り我々に前途を開かせ、恐怖や絶望に打ち勝つ力を
与え、物事を大局的に捉えることを可能にし、創造的に振舞うことを可能にする、と述べて
います。
その理由は、希望は「物事は変えうる、そして良い方向に向かう可能性が存在する」という
信念に基づいているから、というのです。
また、希望の心理学的研究における別の第一人者であるシェーン・ロペス博士は、希望とは
“恍惚的な自信と恐怖心を足して2で割ったもの”と表現しています。言い換えれば、”万能感
と合理性の中間、また楽天性と注意深さの間にあるものだ“とするのです。
ロペス博士は更に、希望は、“将来が良い方向に向かうという信念だけでなく、それを実現
するための実際の行動も含むもの”と言っています。この実際の行動も含む点で、態度だけ
である「楽天的」であることとは異なると言っています。
○希望を持つことについての私の考え
以上から私が学んだことは次のことです。
➀希望を持つということは自動的に起きてくることではなく、それを「選ぶ」ことであること
➁希望を持つというのは、根拠のない夢に基づいているのではなく、背景に冷静な計算や判断
があること
③真に希望を持つには、「物事は変えうる」という基本的な信念・価値観が必要なこと
つまり、希望を持つという行動自体、主体的な勇気のある行為であるということです。
皆さんはどうお考えでしょうか。
なお、出典は以下です。
1)http://www.psychologytoday.com/blog/positivity/200903/why-choose-hope
2)https://psychcentral.com/blog/the-psychology-of-hope#1
村田 晃
心理学博士 (PhD University of Denver USA)
臨床心理士、富山県スクールカウンセラー



