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栄光の 英検1級 合格

上野伸彦

上野伸彦

 
先般、英検1級1次試験に合格したAさんが2次試験にも合格し、合格証書とともに挨拶に来られました。
当館から6人目の1級合格者です。


彼女の足跡を振り返ってみます。

Aさんは2010年の2月に入校なさったアラサーの女性です。
入校時には準1級をお持ちでしたが、それに満足することなく基礎の基礎から丁寧に研鑽を積んで来られました。

英検1級は高度な社会的事象を取り扱う難々長文を読みこなさなければなりません。
単語も日常語とはかけ離れた難解表現の羅列になります。
礎となる文法・構文力も完璧でなければ太刀打ちできません。

「間違いを恐れずに英語を使いなさい」という言い方がありますが、それは中級までの話です。
1級受験者がそのような姿勢を持てば10年たっても合格は不可能です。
「間違えても構わない」というアバウトな姿勢をお持ちの方は最初から1級など目指してはいけません。
アリの這い出る隙もないほどに英語力を磨き上げる覚悟を持った者、そしてその道を歩み切った者だけが手にできる栄光の資格なのです。


今回合格したAさんにも苦しい時代がありました。
当館入校から1次合格まで丸4年かかっています。

彼女からはよくメールを頂きました。
専門的な事柄に関する質問も多かったのですが、時々、弱気になられたり道に迷うこともありました。
その都度、「どんな道でも成就には時間がかかる。Aさんには必ず合格できる才能がある。」と励ましのメールを送り続けました。

1次合格の直前に長文問題の演習が不調でボロボロだったことがあります。
Aさんは「頑張っているんですけど・・」と涙声になられたのです。
彼女が教室で泣いたのは初めてでした。

しかしその1週間後の英検でついに1級1次合格を掴んだのです。



1次合格のあとはスピーキングの練習になります。

「環境問題の今後」とか「女性の社会進出」みたいな社会的話題について英語で2分間のスピーチを行ない、さらに質疑応答をこなさねばなりません。
当教室で50題ほどのトピックについて訓練を重ねました。
また、ICレコーダーでその模様を録音し、あとで聞き直して精査することも繰り返しました。

彼女は現場で英語を使って仕事をしておられますので、流暢な語り口には相当ハイレベルなものがあります。
ネイティブスピーカーと並べても全く引けをとらないレベルです。

ところがあろうことか、1回目、2回目と無念の涙を呑んだのです。
得点表を精査すると、流暢なはずの発音点が悪いのに気付きました。


その時に彼女に送ったメールです。

「1次も4年かかりましたし、2次も4回受ける覚悟で頑張ってください。
いくつか問題点を整理しましょう。
まず、文法・語彙ですが、前回は1次対策もあってマメにノートに書いてチェエクしていましたし、
長文や語彙問題も解いたりして、いわば「オン」の状態にありました。
今回は筆記試験対策をしていなかった分、目が英語から離れて雑になっていたと思います。
日頃からネイティブの書いた論説文をたくさん読んで、正しい文のセンスを磨くことが必要です。
独りよがりな文構造にならないように。

次に、発音ですが、これまでに受かった方のデータを確認したら全員12点でした。
どの方もどちらかといえば「ジャパニーズ」なカタカナ発音です。
しかし、流暢そうに見えるAさんより点数がいいのです。

以前、「帰国子女は1級に受かりにくい」と聞いたことがあります。
一見流暢にしゃべりますが、この場でそんな言い方はないだろう、ここはパブリック・スピーキングの場だ、
ということで評価が低いそうです。

さらに、ネイティブはアメリカ系の崩れた発音は汚く聞こえるそうです。
イギリス系の音が格調高く聞こえる、したがってジャパニーズの発音はきれい系に聞こえるそうですよ。

第2次大戦中、日本軍捕虜になったアメリカ人パイロットの戦記を読んだことがあります。
その時の日本人の英語を「綺麗なクイーンズイングリッシュで話しかけてきた」と書いています。
戦前の一般の日本人が、発音が綺麗なわけがありません。カタカナ英語ですよ。
それが綺麗に聞こえるのです。
Aさんの発音は方向性が逆ですよね。

2点の差は大きいです。
英検では、崩さない丁寧な発音をして下さい。
あと、速くなくてもいいのです 。
早口が上手ではありません。正確で丁寧な語り口が高評価を得ます。

質疑応答も同じことです。
イマイチ不正確な文法で、グチャグチャっとした話し方をすれば評価は下がります。

内容点に対する対策は、毎回、テーマについて書いてみることです。
口で話すと雑になります。
1次時代も含めて、50個ほどは練習しています。
順番に正確に書いてみて下さい。

前回より下がったこと、得意なはずの発音が悪いこと、どの項目も評価が低いこと。
自分を否定された辛さを乗り越えるしか道はありません。
本気でやり直すしかないと思います。」


厳しい物言いですね。
しかし、彼女は素直に受け入れてやり直しました。

昨日頂いたメールです。
「先生のアドバイス通り頑張ってみたら受かりました! 先生のおかげです。ありがとうございます^_^」



挨拶に来られたAさんは苦悩していた時代とは打って変わって、穏やかな笑みをたたえた大人の女性に見えました。

誰もが憧れる至宝の英検1級合格。
しかしその至宝に至るまでのイバラの道を思うとき万感胸に迫るものがあります。


Aさんは「このあと、どうすればいいんでしょうか? まだまだ文法も怪しい気がするし、先生の時間が取れればまた教えて下さい」とおっしゃいます。

「もうあなたは研修生ではありません。落語で言えば2つ目ではなく真打ちです。
 これからは同じような苦悩を抱えて頑張っている若い方の相談にのるなど、後進の指導にも目を向けたらいかがでしょうか?
 また、富山にも外人が増えました。言葉の違いがもとで福祉の行き違いがあったりもするそうです。語学力を活かして間を取り持つとか、そういう社会貢献もされたらいいのではないでしょうか」と申し上げました。


華やかな栄冠の陰にある艱難辛苦・・
高く険しい山の頂きまで歩き続けた彼女の4年半を思うとき、深い敬意と熱い思いを禁じ得ません。

おめでとうございました。








栄光の1級合格証書   76点というハイスコア(60点以上で合格)



ライセンスホルダー Aさん

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