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【ブログ】遠回りが意外と近道

岩崎正克

岩崎正克

【ブログ 3代目岩崎太成】

遠回りに見える仕事ほど、実は一番の近道だった

今日の仕事を終えて、ふと思ったことがあります。
「これは遠回りなんじゃないか?」と感じる作業ほど、
あとから振り返ると、いちばん無駄がなかった仕事だったな、ということです。

表具の仕事は、どうしてもすぐに形が見えない工程が多くあります。
下準備、紙の状態確認、湿り具合の調整、
一見すると「今日はあまり進んでいないな」と思ってしまう日もあります。

今日も、予定していた工程を一気に進めることはできませんでした。
作品の状態を見て、
「今日はここまでにしておいた方がいい」
そう判断して、あえて手を止めた場面がありました。

正直なところ、
急げば、もっと“進んだ感”のある一日にはできたと思います。

でも、無理に進めていたら
あとで必ず歪みが出たり、
余計な修正が必要になったり、
最悪の場合、作品そのものを傷めてしまう可能性もありました。



表具は「先を読む仕事」

表具師の仕事は、
「今きれいに見えるか」よりも
「何十年後にどうなっているか」を考える仕事です。

今日、少し遠回りに見えた判断は、
未来のトラブルを一つ潰した、ということでもあります。

・今日は無理をしない方がいい
・今は貼らず、落ち着くのを待つ
・ここで急ぐと、後で必ず狂う

こうした判断は、
瞬時に目に見える成果にはなりません。
でも、完成したとき、
そして何年も経ったあとに、確実に差になります。



急がないことは、手を抜くことではない

「ゆっくりやる=丁寧」
「急がない=進んでいない」

そんなふうに見られることもありますが、
実際はその逆だと思っています。

急がないというのは、
仕事に責任を持っているということ。

今日の遠回りは、
明日以降の近道であり、
数年後の安心につながる道です。



今日の仕事は、ちゃんと前に進んでいる

一日を振り返ってみると、
確かに工程は少なかったかもしれません。

でも、
作品にとって必要な判断をし、
無理をしない選択ができた。

それだけで、
今日の仕事は十分意味があったと思います。

表具は、結果がすぐに見えない仕事です。
だからこそ、
遠回りに見える一歩を、ちゃんと信じて進んでいきたいと思います。

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岩崎正克
専門家

岩崎正克(伝統工芸)

表具一式 岩崎精正堂(せいしょうどう)

伝統に培われた技術力で掛け軸や屏風、額などの仕立てや修復を行う。「染み抜き」に関しては、県外から文化財や名品を預ける顧客が年々増えています。

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