遠隔画像診断支援サービス(コトセラ)
1.はじめに
筆者は遠隔画像診断を活用して地方の保険医療機関(送信側保険医療機関)で検査したCTやMRIの画像診断において、画像診断管理加算2が算定できる仕組みを活用したことで、地方の保険医療機関のモダリティ稼働率が向上した事例を報告してきた。
地域内での遠隔画像診断の普及により、専門医療施設への患者集中の緩和と共に送信側医療機関の遠隔医療の継続的実施や件数拡大を可能にする効率性や経済性を示す可能性がある。今回は送信側保険医療機関の月間検査数を規模別に5年間の経過を追跡したので報告する。
2.方法
(1)読影依頼件数の計測
遠隔画像診断支援システムを導入した依頼側施設からの読影依頼件数を、1年目から5年目までの利用実数を計数した。それを元に、毎年の平均月間依頼件数を算出して、比較した。
(2)使用した遠隔画像診断支援スキーム(図1)
図1 遠隔画像診断支援スキーム
検査対象者(患者)は各診療所から遠隔画像診断依頼施設(送信側施設)に紹介される。送信側施設は画像検査を実施する。検査画像は遠隔画像診断施設(受信側施設)に直ちに伝送される。受信側施設では画像診断医が読影を行い、翌診療日までに画像診断レポートを送付する。送信側施設はそれを直ちに検査対象者のいる診療所に返却する。
当スキームは以下の要件を満たす必要がある:
1)受診側施設は所属する厚生局に遠隔画像診断の届出をしている「様式32(画像診断管理加算1,2,3の施設基準に係る届出書類)、別添2(特掲診療料の施設基準に係る届出書)&様式34(遠隔画像診断の施設基準に係る届出書添付書類)」。
2)送信側施設は受診側施設の情報を所属する厚生局に届出をする「別添2(特掲診療料の施設基準に係る届出書)&様式34(遠隔画像診断の施設基準に係る届出書添付書類)
」。
3)受診側施設は画像診断レポートを翌診療日まで返却。
(3)検査規模別5年前後検査数の推移
4.考察
今回の調査では遠隔画像診断導入により、送信側医療機関は画像診断受け入れ数が増加し遠隔医療の継続的実施や件数拡大を可能にする効率性や経済性を示すことが判明した。また、画像撮影のために専門施設に紹介する必要が減少することで専門医療施設への患者集中の緩和にも寄与する可能性もある。
遠隔画像診断は、平成28年厚生労働省告知第52号、第2章の第4部、通則の6と7の規定で行っている。当規則では、受信施設(画像診断が行われる保険医療機関)の施設名や専門医名等の情報を依頼施設(画像の撮影が行われる保険医療機関)が所属する厚生局に届出をして、受信施設も依頼施設の施設名などの情報を所属する厚生局に届出るように規定している。
双方厚生局への届出及び専門医による決まった診療時間内での遠隔診断の取決めが重要な方法であり、患者が地方にいながらして大病院並みの医療サービスを得られる。平成30年度の診療報酬改定では、ICTの活用と画像診断管理加算3(300点)も新設しており、遠隔画像診断による病院間連携の保険制度は向上している。
本制度を用いた医療画像連携では、画像診断機器の無いクリニック、画像診断機器のある中小病院、遠隔画像診断受け入れの大病院それぞれにメリットがあると思われる。
自前の検査機器を所有していないクリニックでも、画像検査結果の通知が迅速なため、患者を待たせる期間が短いことに加えて、経験豊富な専門医による質の高い診断を提供できる結果、患者離れを抑制できる。請求可能保険点数は、初診料:282点、診療情報提供料Ⅰ:250点、再診療:72点(検査結果を伝え診察する時)で合計604点である。
一方、遠隔画像診断送信側保険医療機関の中小病院では、読影医が不在でも自前の施設で検査を行ったのちに専門医による遠隔画像診断を受けることで増収と診断精度が担保され、近隣施設との連携も可能になる。請求可能な保険点数は、初診料:282点、撮影料(検査料) CT:900点、MRI:1330点、電子画像管理加算 CT/MRI:120点、コンピュータ断層診断料:CT/MRI:450点、遠隔画像診断による画像診断管理加算3 CT/MRI:300点、診療情報提供料Ⅰ:250点で合計2,482/2,912点である。
最後に遠隔画像診断受診側保険医療機関の大病院では、症例が集まるので臨床研修に活用、研修医が集まりやすくなることと、診断のための他施設への移動時間がないので医師負担軽減につながっている。また、近隣施設との連携することで入院日数の短縮や専門治療が必要な患者増に寄与すると思われる。
5.まとめ
地域内での遠隔画像診断の普及により、送信側医療機関の遠隔医療の継続的実施や件数拡大を可能にする効率性や経済性を示すとともに、専門医療施設への患者集中の緩和に寄与する可能性が示唆された。