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得重貴史

国際法務・知財に豊富な経験とスキルを持つ弁護士

得重貴史(とくしげたかし) / 弁護士

銀座得重法律事務所

コラム

英文契約書作成上の注意点その1

2019年10月28日

テーマ:英文契約書・英語・国際取引一般

コラムカテゴリ:法律関連

「英語・英文の契約書を作成しなければならない」という状況に陥った場合に,何を気を付けなければならないか,本コラムシリーズで,基本的なことを記載していきます。

こうしたコラムを読むのは少々面倒なので,直接に弁護士に依頼して英文契約書を作成したい,もしくはチェックしてほしい,という場合は,当職までご用命ください。英文契約書でもリーズナブルな対応をいたします。

【注意点その1,どこの国の法律が適用されるのか】
 売買などの国際取引を行う場合,ウィーン条約か,米国法に準じることが契約書上では多くなっています。
 しかし,これはこれらの法律については,自らも契約の相手方も馴染みがあり,万が一紛争になった場合でも裁判所も与しやすいという部分が少なからずあります。
 税法など,どうしてもその国の法律を適用しなければならない場合を除いて,契約で「どこの法律をもとに判断するか」ということは合意によって決めることができます。

【「どこの国の法律を用いるか」,には2種類の意味がある】
 少し込み入った話をしますと,「どこの国の法律を用いるか」には2種類の意味があります。
 一つは,裁判等になった際に,どこの国の法律に則った手続きを進めるか,という,「手続面」です。このうち,最も重要なのは,どこの国の裁判所または仲裁所で紛争解決を行うか,というものです。
 もう一つは,契約そのものの解釈を,どの法律に則って判断するか,という「実体面」,「中身」です。これを準拠法と呼ぶこともあります。

【管轄裁判所】
例えば紛争を解決する裁判所を東京地方裁判所で行いたいときなどは,以下のような文案にします。
The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon Tokyo District Court over any disputes arising out of or relating to this Agreement.
(両当事者は,本契約に関する紛争が生じた場合,東京地方裁判所を専属管轄裁判所とすることに合意した)。

なお,専属を避けたい場合,「exclusive」を「non-exclusive」に変更する修正もあり得ます。

【仲裁裁判所】
また,商事契約では商事仲裁により決するとしているところもあるでしょう。
仲裁の場合,その判断に当事者がしたがうという合意をしており,仲裁判断が出た後に,任意の履行が期待されやすく,また迅速に終わるため有用とも言われています(ただし,仲裁人に高額の費用を支払わなければならない可能性はあります)。
たとえば,こういった条項が記載されていると思われます。

All disputes, controversies or differences which may arise between the parties hereto, out of or in relation to or in connection with this Agreement shall be finally settled by arbitration in Osaka, in accordance with the Commercial Arbitration Rules of The Japan Commercial Arbitration Association.
この契約からまたはこの契約に関連して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、大阪において仲裁により最終的に解決されるものとする。

 今でもシンガポールを仲裁所とする契約は多いと思われますが,近時,日本(大阪)でも国際仲裁が可能となりました(東京も2020年は仲裁所ができると言われております)。仲裁所を日本とすることで,日本企業としては,移動費等のコストをおさえられると存じます。

【準拠法】
 This Agreement shall be governed by and construed in accordance with tha laws of Japan without reference to principles of conflict of laws.
 本契約は、日本法に準拠し、解釈されるものとする。ただし法の抵触のルールは適用しない。
 どこの国の法律に則るか,というのは,戦略上,非常に重要です。慣れている日本法が最適と思われますが,場合によっては米国法の方が,有利な場合があります。どの法律を適用するか,慎重にご検討ください。
 なお,「法の抵触のルール」とは,そのルールを当てはめると,かえって日本法が使えなくなってしまうようなルールでして,念のため,「法の抵触のルール」を適用しない,と規定した方が良いかと存じます。

以上,ご参考になりましたら幸いです。

この記事を書いたプロ

得重貴史

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得重貴史(銀座得重法律事務所)

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