相続した空き家を放置したときの様々なリスクについて

三枝秀行

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テーマ:相続情報



相続した実家や親族の家が空き家となっていて今後も住む予定がなく処分に困っている方は
多いのではないでしょうか。
近年では空き家の増加が深刻な社会問題になっていて総務省の2023年度の「住宅・土地統計
調査」によると全国の空き家数は約900万戸と過去最多となり1993年から2023年までの30年
間で約2倍になりました。
空き家が増えた要因は少子高齢化や人口減少、都市部への人口集中によるとされていますが、実際は自宅を所有する高齢者が老人ホームへ入所したり亡くなった後に相続人等で住む人がい
ないというケースが最も多いでしょう。                 
遠方だからといって空き家を放置すると次のように様々なリスクを伴うことになります。
1)庭木の手入れを怠ることにより隣家や道路に木々の枝がはみ出して建物を傷つけたり歩行者
の通行を妨げたりすること
2)壊れた窓からの不法侵入で犯罪の原因になることから治安の悪化につながること
3)草木や雑草が生い茂ることからゴミを不法投棄されたり壊れた外壁などが放置されることで
 景観が悪化して野生動物が住みついたり害虫が発生することから不衛生な状態になること
4)建物の外壁や屋根等の破損を放置することで落下する危険性があり建物が古く傷みが激しい
と倒壊する危険性があること
 以上のように空き家を放置すると様々なリスクがありますが、空き家対策特別措置法により
市町村から危険な空き家(特定空き家)や特定空き家になる恐れがある空き家(管理不全空き家)として行政指導や勧告が行われる可能性がありますので注意しなけれはなりません。
 その一方で、様々なリスクがあることを認識していても空き家を解体して更地にすると土地
の固定資産税と都市計画税は住宅用地特例の適用がなくなるので、土地の固定資産税は最大で
6倍、都市計画税は最大で3倍になることから空き家を解体せずにあえてそのままの状態で持ち
続ける方も多いです。
また、老朽化した空き家を解体しようとしても昨今の人手不足による人件費高騰から解体費用
もここ数年で20%以上に上昇していることから解体工事を断念されるケースも多々あること
です。
 このような空き家のリスクを回避する方法の一つは以前のコラムでもご紹介した『空き家の
譲渡にかかる3千万円控除の特例』を利用して売却することです。この特例では売却するため
の要件があるとしても空き家の維持管理の負担がなくなることは良いことだと思います。
 また、国の相続土地国庫帰属制度により相続した土地を引き取ってくれる制度も令和5年4月
27日からスタートしましたので、この制度を利用することも選択肢の一つです。
相続土地国庫帰属制度は、所有者不明の土地を減らす目的で創設された制度であり相続で取得
した土地を国が有料で引き取ってくれるもので、相続土地国庫帰属制度の申請前に法務局で
相談することもできます。
 ただし、この制度で国が引き取れない土地の要件として以下の各項目が該当することから
申請するにはハードルはかなり高いと言えるでしょう。
① 建物が存在する土地
②担保権等の負担のある土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地
④土壌汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地
⑥崖がある土地
⑦工作物・車両樹木が地上にある土地
⑧地下に除去すべき有体物がある土地
⑨隣人とのトラブルを抱えている土地
 尚、あまり知られてはいませんが、空き家の解体と撤去は、国土交通省の「空き家再生等
推進事業」により自治体に対して支援が行われていることから空き家の所有者は国土交通省
から財源を確保し助成制度を設けた自治体に申請して助成金を受けることができます。
 老朽危険家屋解体撤去補助金は、老朽化により倒壊の恐れがある空き家の解体を助成する
もので、自治体の現地調査によって解体に必要と判断された空き家に支給されます。
 一般的に空き家の解体や撤去でもらえる助成金は、条件等が各自治体により異なっていて
補助金の上限額は100万円が目安になりますが、この上限額以下でも補助金制度そのものが
ない自治体もあります。
自治体からの補助金の支給要件については、1年以上住んでいないことや1981年6月以前に
建てられた旧耐震の建物としていることが多いので、自治体に条件や工事内容をしっかりと
確認することも必要です。
 こちらで最後になりますが、空き家解体後の土地の活用の一例をご紹介しましょう。
自己資金があまりない場合で需要が高い場所であれば土地を賃貸することや駐車場、トランク
ルームの経営があります。
ある程度まとまった投資が可能であればコインランドリー経営やアパートやマンションを建築
して賃貸経営を始めることができます。
 郊外で宅地としての需要がない場合でも広大な土地であれば太陽光発電や資材置き場として
使うこともできますが、土地の有効活用はあくまでも立地や条件で変わってきますので、土地
の有効活用で悩んでいる方は専門家に相談することをおすすめします。

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専門家

三枝秀行(相続コンサルタント)

株式会社三枝エステート

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