相続登記の義務化に向けた長期相続登記等未了土地解消事業について
「特別受益」という言葉を聞いても相続に直接関わりがない場合には何か分かったような、
分からないような、そのような印象をお持ちの方が多いでしょう。
前回のコラムで遺産分割に関する最高裁(平成17年10月11日 遺産分割審判に対する抗告
審の変更決定に対する許可抗告事件)の判例を取り上げましたが、判例には特別受益に関す
る内容も含まれていましたので、ここでは特別受益に関する法の規定や特別受益の対象にな
るものを正しく理解することが遺産分割や相続手続を円滑に進めていくポイントだと知って
いれば良いのではないかと思います。
「特別受益」とは、相続人の中に被相続人(亡くなった人)から遺贈(注1)や生前贈与に
よって特別の利益を受けた者がいる場合に、その相続人の受けた贈与等の利益のことをいい
ます。
(注1)遺贈とは、遺言によって他人に財産を贈ることをいいます。
このような贈与の額は、相続開始の時に実際に残されていた相続財産の額と合算したうえで、
各相続人の相続分を決めなければならないと定めていますがこれを「特別受益の持ち戻し」
といいます。
本来は平等である相続人の中に特別な財産等を贈られた者がいた場合、その利益考慮をしな
いで残りの財産だけを遺産分割協議にかければ他の相続人は不公平だと思うでしょう。
このように特別受益を考慮せずに遺産分割協議で揉めると争族に発展する可能性も高くなり
ますので、特別受益の定めはこのような争いの誘因となるような不公平を防ぐために設けら
れたものです。
そのため特別受益について正しく理解し、配慮した上で遺産分割を行わないと後々に遺産分
割の無効や取消しを争う訴訟が起こる事態にもなりかねませんので、注意が必要です。
次に特別受益の対象になるものは、大まかに分けて3つありますが代表的なのは生前贈与
です。
生前贈与とは生きている間に財産を他者に無償で渡すことです。
生前贈与の中には、特別受益の対象となるものと扶養義務の範疇だとして特別受益の対象に
ならないものもありますので、実際に行われた生前贈与が相続財産の前渡しに該当するかを
踏まえた上で特別受益の対象となるかを判断することになります。
2つ目は遺贈で、この遺贈を受けた者が相続人の場合は、遺贈によってもたらされた利益が
特別受益の対象になります。
3つ目はあまりなじみのないものですが、死因贈与です。
死因贈与とは、生きている間に「私が死んだら財産の〇〇を贈与します」と契約しておき、
相続時に財産を渡すことです。
この死因贈与を受けた者が相続人の場合は、死因贈与によってもたらされた利益が特別受益
の対象になります。
上述のように特別受益について簡単にご紹介してきましたが、相続における特別受益は
トラブルになりやすいことや何が特別受益の対象となるかの判断が難しいケースも多々ある
ことなので、公平な遺産分割と相続手続については司法書士等の専門家に依頼することを
オススメします。