相続で問題となる「特別受益」とは?
昨年7月10日に法務局の自筆証書遺言の保管制度がスタートして以来、その概要をお伝えしてきましたが、現状では遺言書の保管申請時に何らかの不備があり保管に至らなかったケースが多発しているようです。
従いまして、これから手続をする場合、現状の問題点を認識して間違いない申請手続をするためにも遺言書、申請書、添付書類および本人確認書類等は法務局ホームページ等で十分に確認し、準備万端にしてから保管手続に臨むことです。
現段階で方式や要件の不備が多いものを箇条書きに纏めましたので、是非とも参考にして下さい。
遺言書の様式は(遺言書保管法4条2項)(省令9条別記第1条様式)で次の通り定められていますが、要件を満たさないと申請できません。
・用紙は文字が明確に判読できる日本産業規格A列四番の紙であること
・各ページにページ番号を記載すること
・片面のみに記載すること
・数枚にわたるときであっても閉じ合わせしないこと
・用紙に一定(上5㎜、下10㎜、左20㎜、右5㎜)以上の余白を設けること
次に遺言書と本人確認書類及び添付書類では以下の1)~7)の不備が多いことが遺言書保管官より指摘されています。
1)遺言書がパソコンやワープロで作成されており、自書でないもの
(民法968条1項)
2)自書によらない財産目録の毎葉に遺言書の署名、押印がないもの、財産目録として添付された預貯金通帳等のコピーの印字が薄くて文字が読み取りにくいもの (民法968条2項)
3)遺言書の記載事項を変更した場合において、変更した旨の付記及び遺言者の署名がないもの、変更箇所への押印が遺漏しているもの、修正液や修正テープが用いられているもの
(民法968条第3項)
4)遺言書用紙のサイズがA列四番のサイズではないもの、ページの記載が
ないもの、余白が設けられていないもの
(遺言書保管法4条2項 省令9条別記様式第1号様式)
5)本籍の記載のある住民票の写し等(作成後3ケ月以内のもの)が添付されていないもの (遺言書保管法4条5項、省令12条)
6)遺言書の一部が外国語により記載されている場合において、日本語による翻訳文が添付されていないもの (遺言書保管法4条5項、省令12条1項2号)
7)顔写真付きの公的機関の発行した身分証明書の提示がないもの
(遺言書保管法5条、省令13条)
また、申請書類で住民票に記載のない「○〇マンション」等の(建物名)を申請書の住所欄に記載するなど申請書に添付書類(住民票)と異なる記載しているケースが多々ありますのでこちらも注意が必要です。
前述の通り、様々な事由によりせっかく法務局に出向いて遺言書類を提出しても要件が満たないと補正や却下される場合がありますので、申請手続は慎重にしたいものです。
遺言者の最終意思の実現に向けて民法改正で自筆証書遺言が法務局へ保管する制度ができたのは大変良いことですが、保管の方式は厳格に定められていますので、苦労して作成した遺言書が方式違反にならないことが肝心です。
東京法務局ではYouTube東京法務局チャンネルを開設して、自筆証書遺言の保管制度について動画の配信をしていますので、ご参考まで。
youtube東京法務局チャンネル