相続した不動産を名義変更するときの注意点
既に法務局への自筆証書遺言の保管制度が開始してから5か月が経過しようとしていますね。
法務省民事局で遺言書の保管制度の利用状況を公表していますが、申請件数は令和2年7月(2,608件)、8月(2,362件)、9月(1,978件)、10月(2,263件)と4か月の累計は9,211件となりました。
原本が公証役場に保存されて偽造、隠匿、紛失を防ぐことができる公正証書遺言の作成件数が昨年実績(令和元年)で年間113,137件と比較すると自筆証書遺言の件数はまだまだ少ないですが、今後は利便性が高くなったことにより自筆証書遺言の保管はますます利用者が増えていくことでしょう。
但し、簡便になったからと言って自筆証書遺言を作成しても法的な要件を満たさない遺言書や争いの火種になるような遺言書を作成しては元も子もないので、安易に自筆証書遺言を作成してはだめです。
また、単に公正証書遺言と比較して費用が安い、簡単に作成できる、検認が不要だから自筆証書遺言を作成しようとするのも良くないことなのです。
何故なら遺言を作成する目的は争いの防止と相続人への想いを伝えることに尽きるからです。
円満な相続を願って遺言を作成してもその結果として遺言が発端で争続になる場合もあります。
そこで今回は自筆証書遺言を作成する際のポイントを纏めてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
・「相続分・分割方法の指定」は「何を誰に」と具体的に指定すること
分割方法を指定するときに遺留分を考慮するのはもちろんですが、この分け方で揉めることがないかをしっかりと考えましょう。
法定相続で平等にと考えて分数的割合の指定をしてはいけません。
例えば相続人が子供3人の場合、均等に3分の1を遺産分割すれば問題が起こらないだろうとそれぞれに「財産の3分の1を相続させる」遺言書を残したと仮定します。
この場合、いざ相続が発生したときに3人の子供達は具体的な遺産分割の話し合いをしなければならないので、これが揉める要因になります。
・遺言執行者を指定すること
遺言は作成して終わりではなく実現させることが最終目的です。
遺言の執行手続きは相続分の指定を受けた相続人等が自ら行うのが理想的ですが、相続法改正により法律も変わっているために相続に精通した専門家に依頼することも必要です。
・予備的遺言を記すこと
遺言事項として誰に何を相続させるか具体的に指定した場合でも指定を受けた相続人が遺言者よりも先に他界することもあり得ます。このようなリスクを回避するためにも万が一、遺言者より先に指定した相続人が亡くなった場合はどうするかを決めて遺言に記しておくことが大切です。
この予備的遺言がないと他の共同相続人で遺産分割協議をして帰属先を決めることになりますので遺言を作成した意味が無くなります。
・付言事項を記すこと
何故遺言を作成したのか、どうして分割方法の指定をしたのか、その理由を遺言者の考えや遺言者から相続人へ思いを伝えるのが付言事項です。
ケースバイケースですが、遺言者の想いを込めた付言事項が争続の抑止になりますので、付言事項は必要不可欠です。
遺言者は必ず遺言書に心を込めた付言事項を記しましょう!!!
これから自筆証書遺言を作成して法務局へ保管を考えている方は法務省のサイトで手続き方法が確認できますので、参考にすると良いでしょう。
法務省ホームページ