新たな不動産投資スタイル「民泊投資」
(概要)
日本に訪れる外国人観光客が増える中、所有物件を民泊に切り替えて「不動産投資としての利回りを大きく上げた」という話を耳にするようになりました。
ただ「民泊投資の利回りがいい」といっても、一般的な賃貸に比べてどれほどの違いがあるのでしょうか。今回のコラムでは両方を比較して、民泊投資の利回りの実態をお伝えしていきます。
利回りとは
東京などは、訪日外国人が増えて民泊需要が高まっています。そのため、所有する不動産を民泊として運用しているオーナーさんも増えています。
不動産投資の重要な指標である「利回り」を気にするオーナーさんが多いですが、利回りと言っても実際にはいくつかの意味があります。まずは、一般的な利回りの種類を紹介していきましょう。
(1)表面利回り
この利回りは、単純に年間の家賃収入を購入した金額で割った数字です。実際には、管理維持に必要なお金や税金などは考慮されていませんので、ざっくりとした指標です。
(2)想定利回り
これは、物件の現状も賃料収入や相場賃料をもとに算出する指標です。現状の賃料がそのまま安定している場合や、賃借人が途切れなかった場合を想定して算出します。しかし、実際には一定期間空き室になったり、賃料の値下げというマイナス要素が発生しますので、想定利回りを下回ることが多いのが現状です。
(3)実質利回り
これは、毎年の税金や維持管理費など必要経費を差し引いて、計算した利回りです。実際に手もとに残る利益を想定する際に、最も重視すべき指標です。
不動産の利回りはこれくらい
この利回りを基準にして、民泊投資と不動産投資を比較していきましょう。
不動産投資において、東京で物件を賃貸に出した場合、一般的な実質利回りは4~6%と言われています。もちろん、新築か中古かなどの条件によっても異なります。また、利回りを出す際に用いる分母は購入価格です。この実質利回り4~6%というのは、初期投資の回収に20年前後かかる計算になります。
この不動産投資の基準で民泊投資を見た際に、民泊投資は不動産投資を本当に上回っているのでしょうか。
民泊の利回りは
では、民泊の利回りをある物件の実例をみて、計算していきましょう。
この物件は最寄り駅から徒歩7分 面積34.5㎡、1DK、家賃80,000円で、年間家賃は960,000円。それを売買価格2,000万円で割ると4.8%となります。この物件を民泊で活用した場合、収容人数5人、月平均売上が386,000円、平均稼働日数が27日でした。
ただ、実際に運営にかかり費用であるAirbnbへの手数料や運営代行会社への手数料、他に光熱費や水道料、Wi-Fi代がかかってきます。
これらの経費をまとめて35%と考えて計算すると、「386,000円×65%=250,900円」となります。この手もとに残る利益を家賃で割ると、「250,900円÷80,000円=3.1倍」で、家賃収入の3倍の利回りが得られる計算になります。利回りで計算すると、25万円×12カ月=300万円、300万円÷2,000万円=15%というかなりの高利回り物件となりました。利回り15%の投資なんてなかなか見つからないと思います。
もちろん、民泊代行サービスを活用して適切な運営を心がける、宿泊の稼働率をあげるということが必須です。単純に開業したら儲かるというものではありません。
しかし、民泊には通常の賃料収入を大きく上回る利回りを確保できる可能性があるということは言えます。こうした点に注目するからこそ、不動産オーナーは新たな不動産投資で利益を得るチャンスである今、民泊に期待しているのです。
ただし、失敗例もあります。
転貸タイプの民泊では、経営に苦労している物件もあるようです。民泊代行業者に運営を委託した場合、20%~30%程度の手数料が売り上げにかかります。そのために、宿泊料が大事になるのですが、集客に苦労したため、宿泊料を値下げせざるを得ないケースがありました。こちらでは、当初に想定していた利回りを大きく割り込んで、赤字になってしまいました。
また、マンションの一室を民泊にしたケースでは、ゴミ出しなどを巡って同じマンションの住民から苦情が入り、民泊を行っていることへの対応が管理組合で協議され、民泊をやめざるを得なくなった例もあります。
こうした点を考えると、不動産投資として有望な民泊投資でも、転貸の民泊のスタイルでは、コスト面や運営面を巡って苦労する実例も出てきています。
一方で、1棟まるまる民泊にした場合、管理運営面での効率化や、同じ建物内からの苦情がないことから、民泊の恩恵を受けているケースが多いようです。
こうした現状を考えると、宿泊需要が高い地域で、駅が近く交通の便がよい1棟物件を所有している場合、民泊経営に舵をきってもよいのでないでしょうか。
民泊は確かにブームです。そして、不動産投資に比べて、民泊投資の方が利回りが高いケースも多いです。
しかし、民泊投資は不動産投資の一種です。物件の立地や周辺環境、さらにはランニングコスト、そして相場感など不動産投資を判断する際に欠かせない要素を考慮に入れることも必要です。
適切な物件選びや運用利回りの計算、民泊経営に関するリスクなどを知ったうえで、民泊投資を検討してください。