産後クライシスのご相談前編 :原因とチェックリスト
こんにちは
夫婦カウンセラーの緒方リサコです。
小さなすれ違いが積み重なり、相手から離婚を切り出されるというケースは少なくありません。
今回は、妻から離婚を切り出されたという男性からのご相談を例に、夫婦のコミュニケーションのあり方やすれ違いに対する向き合い方についてお話しします。
45歳男性・Iさんからのご相談
結婚して15年目、小学校6年生の長男と小学校2年生の長女の2人の子どもがいます。
ここ数年、子育ての考え方や価値観の不一致から妻との関係が悪化してしまいました。
さらに最近私が在宅勤務になったことで関係の悪化に拍車がかかり、先日、長男の中学受験が終わったタイミングで離婚したいと妻から切り出されました。
私が妻の言い分を理解せず、高圧的な態度をとっていることや、子育てに積極的に参加していないことが理由のようです。
私自身は反省しており、謝罪して妻の話を聞くように努めていますが、いまさら何を言っても遅いと取り合ってもらえません。
夫婦関係がギクシャクしていることで子どもたちにもストレスがかかっているようなので、なんとか関係を改善したいと思っています。
1.夫婦のコミュニケーションを振り返る
夫婦関係が悪化したのはこの数年というIさん。
まずは関係が良好だったときのコミュニケーションがどうだったか、振り返ってみましょう。
信頼関係を築くための会話はできていた?
考え方や価値観の違いは、どんな夫婦にもあるものです。
会話を重ねることでお互いの違いを受け入れ、たとえ衝突したとしてもそれを乗り越えてきた夫婦であれば、すれ違いによって離婚にまで至ることはないと思います。
お互いの気持ちや意見を話し合うと言い争いになってしまうので、それを避けるために話をしないというご夫婦もいらっしゃいますが、相手を理解するにはやはり話し合いは大切です。
もちろん、相手のことを理解しようとする姿勢がなければ、単なる喧嘩になってしまいます。
お互いがお互いを尊重し、関係をよりよいものにするためにどうしていくべきかを考えながら話し合いをすれば、たとえ強い口調になったとしても、言い争いにはならないはずです。
相手を理解しようとする態度でコミュニケーションしていた?
話し合いを通じて信頼関係を築いてこなかった夫婦の場合、ライフステージの変化によって関係性が悪化してしまうことが少なくありません。
たとえば、尽くすタイプの妻と甘えるタイプの夫という相補的な関係の夫婦の場合、話し合いをしなくてもうまくいくことがあります。
けれど、夫婦の間に子どもが生まれ、妻にとって最優先すべき相手が夫から子どもに変わると、夫はそれを不満に思い、妻は妻でそんな夫をうとましく思うかもしれません。
Iさんの場合、高圧的な態度をとっていると奥さまから指摘されていますが、もしかしたら言葉遣いや話し方は結婚当初から変わっていないのかもしれません。
ただ、奥さまはお子さんができて子育てと仕事で手一杯になり、結婚当初とは状況や立場が大きく変わっています。
その変化によって、Iさんの言葉遣いや話し方に対する感じ方が変わってきた可能性もあるのです。
そうしたすれ違いを修正するには、相手の思いを理解しようとする態度で話を聞き、自分の思いを誠実に伝える姿勢が必要です。
Iさんは「謝罪して妻の話を聞くように努めている」とおっしゃっていますが、奥さまの思いを奥さまの立場になって理解しようとしているか、振り返ってみる必要がありそうです。
2.パートナーの気持ちを理解し、よりよい道を探る
夫婦関係を改善したいと願うIさんですが、奥さまはどのようなお気持ちなのでしょうか。
夫婦関係は夫と妻、2人の関係ですから、関係をどうしていくか決めるために、奥さまの気持ちを確かめてみましょう。
Iさんの奥さまの思い
夫と一緒にいる時間がとにかく苦痛です。
これまでは週末だけ我慢すればよかったですが、夫が在宅勤務になり、家で安らげる時間がなくなりました。
もう気持ちが限界です。
私は離婚する決意をしているので、いまさら関係を改善したいとは思いません。
ただ、子どもに悪影響を及ぼしたくはないので、なるべく円満に別れられればと思っています。
夫婦関係を改善することはできそう?
Iさんは夫婦関係を改善したいとおっしゃっていますが、奥さまにはそうした気持ちはなく、離婚を強く望んでいらっしゃいます。
女性が離婚を決意した場合、そこから夫婦関係を修復するのは非常に困難なケースがほとんどです。
妻が夫を拒絶しているにもかかわらず、どうしても離婚したくないと妻の言い分に聞く耳を持たなかったとしたら、その後の夫婦関係はうまくいくでしょうか?
妻を愛する気持ちがあるのならば、妻の気持ちを尊重し、受け入れることが大切だと分かるはずです。
ここまで2人の溝が深くなっていなかったとしても、夫婦としてどういう関係性を築いていくべきかを真剣に話し合ったことのない夫婦では、「関係を改善する」ということ自体が難しい可能性もあります。
二人にとって目指すべきものが明確になっていないので、どうやって改善したらいいかがわからないからです。
夫婦関係だけでなく、たとえば子育てに関しても、学校は公立か私立かといった表面的なことだけでなく、どういう人格を持った人に育ってほしいかという根本的なことを話し合っているかどうかがとても重要です。
そうしたビジョンを共有できていれば、たとえ意見が食い違ったとしてもお互いに納得できる妥協点を見つけていけるはずです。
子どものためにどうしていくことが最善?
Iさんご夫婦の場合、夫婦関係を改善することは難しそうですが、お子さんのことを気にかけている点はお互いに一致しています。
Iさんはお子さんのために夫婦関係を改善したいとおっしゃっていますが、奥さまの気持ちを考えると、夫婦関係ではなく子どもの父親と母親という関係に目を向けるほうがよいように思います。
たとえ離婚したとしても、子どもにとって父親、母親であることに変わりはありません。
子どもはとても敏感なので、父親と母親が互いにいがみ合っていれば、必ずそれを察知します。
子どもを傷つけないために、子どもの父親と母親としてよりよい関係を築いていくことを目指してみてはいかがでしょう。
3.相談者がこれからできる、すれ違い対処術
子どもの父親と母親としての関係をよりよいものにしていくために必要なのは、やはり話し合いです。
どちらかが離婚を決意するほどの状況で建設的な話し合いを行うのは、とても大変なことです。
それでも子どもの幸せを願うなら、きっと努力できると思います。
まずは、自分のコミュニケーションのパターンを振り返ることから始めてみましょう。
Iさんの場合、奥さまから「話を理解してくれない」「高圧的な態度をとっている」と言われているので、態度を改めなければならないという意識を持たなくてはいけません。
考えや意見が食い違ったとしても、まずは相手の言うことをそのまま受け止めましょう。
相手の言うことを否定するのではなく、違いを認めたうえで、自分の考えを相手に伝えればいいのです。
話し合いで求められるのは、相手の話すことに関心を持ち、相手の感じることや思いを相手の身になって理解しようとする態度です。
たとえ相手に非があると感じたとしても、相手の態度を変えることはできません。
自分が変えられるのは、自分のことだけです。
もどかしさを感じることもあるかもしれませんが、相手にも自分にも誠実な態度でコミュニケーションをしていけば、きっとよりよい関係を築いていけるはずです。
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