「社員を壊す」経営者
公衆トイレの男性用小便器に
弓矢の的や小さな虫や
サッカーゴールのデザインを施すことで
飛沫による汚れが
80%も減少するという話をご存知でしょうか
(これにより
清掃コストも大幅に削減)
このような工夫は行動経済学における
「ナッジ(nudge)」という理論に基づきます
強制や命令をすることなく
暗に良い行動を促すこの発想は
直訳すると
「ヒジで軽く突く」という意味を持ちます
臓器移植
ナッジ理論の興味深い例として
「臓器移植の意思表示」に関する話を紹介します
脳死後の臓器提供に同意する率は
・オーストリア:98%
・スウェーデン:86%
・ドイツ:12%
・デンマーク:4%
と大きな差・・・
言語も文化も近い国々で
これほど同意率が異なる理由は何でしょうか?
その鍵は
各国の初期設定(デフォルト)にあります
*同意率の高い国では
「提供したくない人」が所定の欄に
チェックを入れる仕組みになっており
*同意率の低い国では
「提供したい人」が
チェックを入れる設定です
多くの人は初期設定を変えず
自発的な意思決定を避ける傾向があるため
この違いが大きく影響・・だとか
身近な初期設定による影響として・・・
新品のスマホに不要なアプリが
プリインストールされていたり
ECサイトで購入後に
メルマガ受信がデフォルト設定
されていたりします
これらもすべて行動経済学の一環なのです!
人は面倒なことを避け
損をしない選択をする傾向があるため
初期設定をそのまま放置しがちです
社員育成
先日S社長との雑談の中で
「この話を社員育成に活かせませんか?」
と問われました
トイレの話や初期設定の話を応用し
選択を強制せず
インセンティブを大きく変えることなく
予測可能な形で
スタッフの行動を修正する仕組みを
作ることができないかと・・・
具体的には
●社員が参加しやすい
研修プログラムを初期設定にする
●業務プロセスを簡素化する
●フィードバックの頻度を増やす
・・・など
そして
そこからもう一歩踏み込んだ
アクションプランを練り込むことが
双方の次なる課題といったところで
次回訪問へと・・・
ナッジ理論を活用したマネジメントは
組織全体の効率向上やコスト削減に
繋がる可能性がありますが
まちがっても
社員の望ましい行動誘導だけに
意識が偏ってしまうと
目的と手段をはき違えてしまうことは
言うまでもありませんよね
強制や命令ではなく
自主性のある風土とモラル形成は
今もこれからも
経営者さんの永遠の課題ですね
今日もまた・・・言うは易し行うは難し
#323
本コラムは
「行動経済学BEST100」
著:橋本之克さんの書籍より一部引用