最近遭遇した手術中でのモニター不具合
電気メスは正しくは電気手術器と言われる医療機器で、高周波の電圧を体に流して電圧をかけるメス先を生体に接触させることで生体組織を爆発させることで切開または乾燥させることで凝固させています。
体に電気を通しているのに何で安全なんだ?と思われる方も居られると思いますが、これは流れる電流が200kHz-3.3MHzと高周波だからです。
人体が感電するする周波数1kHz以下で、家庭用の商用交流50・60Hz辺りが最も危険な周波数です。
そして、作用させる部分から生体を通過した電流を回収するのが対極板で極めて重要な役割を担っています。バイポーラの場合は攝子の2つの先端がそれぞれ陰極・陽極になっているため、電流はこの2極間しか流れない為対極板は作用しません。
電気メスの医療安全上にはこの対極板の貼り方が重要で、人工骨頭やペースメーカーなどの植えこまれた金属の近くや、骨ばった部位、手術部位や体毛の多い部位は避けて、観察しやすい大腿部・臀部、背部、ふくらはぎや上腕などのたいらで血行が良く筋肉の多い部位が適しています。また、消毒液が掛からなく手術部位に近い所が適しています。
対極板は患者さんの体格に合ったサイズのものを使い、重ねて貼ったり加工してはいけません。
また、どんな機器でも多かれ少なかれ漏れ電流というものが存在しますが、これはJIS規格で定められた基準値以下なら問題ありません。ただ、この影響を悪い面で受けてしまう可能性が有りまして、電気メスの場合は高周波漏れ電流という漏れ電流に注意が必要です。規格では15mA以内と定められていますので、定期的な測定器による点検で観ておく必要が有ります。もしこれが規格外だった場合機器の絶縁が確保されていませんので危険な状態にある為直ちに使用中止としてメーカー修理に出す必要が有ります。
また、使用上はメス先についているコードを他のコードとコイル状に巻いたり、他の電気メスなど高エネルギーを発する機器のコードと束ねたり、鋼製器具と束ねたりしては行けません。束ねることで電磁場が発生し熱を持ちやすくなります。ここにアルコールを使用すると揮発したアルコールに引火する危険性が有り実際事故も発生しています。
また腹腔鏡下では内部で電極が他あの金属部分に接触したり、鉗子などの絶縁が不良で剝きだした金属部分が生体に触れて熱傷を起こしたり、容量結合といって絶縁物を高周波が飛び越えてしまうことで起こる熱傷もあります。
日頃の注意点としては鉗子などの絶縁ラバーは破損していないかチェックする必要が有ります。今は絶縁チェッカーもありますので活用したいところです。
また、熱傷と言えば高周波分流というものがあり、生体に指輪などの小さな金属が付いている場合、この部分に電流密度の高い電流が流れることで熱傷を引き起こします。
手術台の金属部分に少し患者さんの体に触れていても同様です。
電気メスとラブルをまとめますと
1,対極板の一部分への電流が集中することで起こる熱傷:対極板が剥がれている部分を作らないようにします。
2,メス先が意図しない部分に接触していることによる熱傷:特に通電後、不用意に覆布の上に置くと通電しなくても熱傷を起こす場合が有ります。
3,高周波漏れ電流:対極板で回収されるべき電流が他の体の部位に流れてしまう子で起こる熱傷です。点検を怠らないようにしましょう。
4,高周波分流:体が意図しない金属部分に触れたことにより発生した熱傷。体位の変換などには特に注意が必要です。