事業承継と経営者保証の解除⑨
「じつはあまり知られていない融資のしくみ」
経営者保証は融資に付随することですが、ここでは、まず融資のことについてご説明します。
取引先との価格交渉と同じく、金融機関との融資交渉も一種の戦いです。よく知られる孫子の一節に「敵を知り、己を知れば、百戦殆うからず」とあるように、交渉を有利に進めるには、事前に相手の事情や立場をよく見極めておくことが大切です。しかし、金融機関のなかで実際にどのようなプロセスを経て融資が行われているのか、一般的にはあまり知られていないようです。
たとえば、最近はほとんど聞かれなくなりましたが、かつては有力者の口利きによって融資を引き出そうとしたり、銀行の支店長の歓心を買うことで何らかの手心が加わることを期待するような風潮もみられました。
たしかに、90年代前半のバブル期までは、そういったイレギュラーな要素が融資の判断に影響を与えるケースも一部ではみられたようです。しかし、現在の金融機関でそうした情実融資が行われることは皆無といってよいでしょう。コンプライアンスに関する意識が社会的に高まるなかで、金融はその取り組みが最も厳格な業種のひとつです。また、あらゆる業務がデジタル化された昨今は融資のシステムが確立しており、そもそも不適切な要素が入り込む余地はありません。たとえ支店長であっても、個人的な意向によって融資に関する判断をねじ曲げることはできないのです。
とはいえ、当然ながら、書類上の数字だけで機械的に融資の可否が決まるわけでもありません。金融機関から不信感をもたれるより、信頼される経営者のほうが何かと有利であることは間違いないでしょう。また、ふだんはまったく金融機関との接点がない経営者に比べて、定期的に面談の機会を設けている経営者のほうが融資を引き出しやすいのは当然です。融資に関する判断に情実が入り込む隙はないものの、日常的なコミュニケーションを心がけて、信頼関係を築いておくことが得策なのです(次回に続く)。
経営者保証や融資について、ご自身の会社における対応方法など、お気軽にお問い合わせください。金融機関経験者の視点で親身に対応します。初回相談は無料です。
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