自閉スペクトラム症児の診断~2014年に診断された次男の場合
お子さまの発達に心配があるとき、相談できるタイミングや対応してくれる専門機関はたくさんあります。また、現在はインターネットでも発達に関するありとあらゆる情報が簡単に入手できるようになりました。お子さまの発達を支える社会資源は、医療、教育、福祉などのあらゆる分野で、10年前とは比較にならないほど豊かになっています。
一方で、実際に子育てをされている保護者さまも、10年前とは違った新たな不安に直面しています。一つは、医師の説明にモヤモヤする、専門職によってアドバイス内容が違う、療育機関の支援が家庭の中で活かせないなど、適切な支援機関につながってもなお感じる不安。もう一つは、溢れかえる情報のなかから自分に必要な情報が選べない、SNSに挙がる同じような特性の子と自分の子を比べてしまうなど、情報を発信することも受け取ることも容易になった現代のライフスタイルが影響している不安です。
お子さまに発達特性があるとわかったとき、専門機関に相談することや、インターネットを活用して様々な情報を収集することはとても大切なことです。というよりも、保護者さまからすればごく自然なことではないでしょうか。子育てをしているかぎり、お子さまの発達に適したかかわり方を学び続ける必要がありますし、特性や配慮点についても就園、就学や進学などのあらゆるタイミングで、関係者にわかりやすく伝えることを求められるからです。
私は、こどもと家族にかかわる社会福祉士(ソーシャルワーカー)として、これまで多くの発達特性のあるお子さまとその保護者さまの相談支援に携わってきました。医療職、教育職、福祉職などさまざまな専門職と一緒に支援をしてきた経験から、それぞれの専門的なアセスメント(評価)や支援を尊重しつつも、最後には保護者さまご自身が子育てに自信を持てるようになること、お子さまがありのまま愛され自分らしさを輝かせながら自立して生きていけることを目指した相談支援を実践してきました。
まだできないこと、人と比べて苦手なことや、その理由にばかり目を向けてしまうと、お子さまも保護者さまもどんどんつらくなってしまいます。そうではなくて、生活環境を考慮しながらお子さまの好きなことや上手なことを伸ばしたり、溢れる情報の中からそのご家庭に必要なことをご自身で選んでいけるように方向性を整理することが、社会福祉士(ソーシャルワーカー)に求められる仕事だと考えているからです。
医療や福祉のサービスを利用するにしても、あるいは通常級・支援級・支援学校を選択するにしても、そのご家庭のニーズを100%満たす社会資源は存在しません。だからこそ、どのメリットを享受して、どのデメリットをフォローするか、お子さまと保護者さまが「自分で決めたことだから、がんばろう!」と思えるまで、伴走させていただくつもりでかかわっています。
特性のあるお子さまの子育ては、本当に大変です。しかし私は、多くの保護者さまのお話を伺うたび実感することがあります。「あぁこの子は、このお母さんを選んで生まれてきたのだな」「このお父さんに会いたかったんだな」と。私自身も含めて、すべての保護者さまがお子さまを幸せにする喜びに安心して目を向けることができ、こどもたちが自分を大好きなまま大きくなれる、そんな社会を支えていきたいー。
専門機関での相談にモヤモヤしたとき、溢れる情報に不安になったしまったときは、こどもの発達を専門とする社会福祉士(ソーシャルワーカー)に相談してみましょう。どんなに素晴らしい専門職のアドバイスも、エビデンスのあるネット情報も、唯一無二の大正解ということはあり得ません。一人ひとりに合った子育てについてともに考えながら、お子さまが自分らしく輝きながら社会に羽ばたいていけるよう応援できたなら、社会福祉士(ソーシャルワーカー)としてこれほど嬉しいことはありません。