新米社労士イノキュウ現場からの本音の報告(第21回)

新日本保険新聞に私の「新米社労士イノキュウの現場からの本音の報告」2026年2月分の原稿が掲載されました。
2026年2月 「作業能率・勤務態度が不良な社員の退職について」
(ご質問)
作業能率・勤務態度が不良な社員の退職について
作業能率・勤務態度が不良な社員の退職についての相談です。
試用期間中(6か月)の正社員についてですが、研修中、居眠りがひどく研修にもついていけてない状態です。退職してもらうためにはどのような手続きをするのがよいのでしょうか。
(回答)
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答願います。
1.試用期間中であっても自由に退職させられるわけではない
試用期間中の正社員であっても、労働契約は既に成立しており、会社が一方的に退職させることはできません。解雇や本採用拒否については、客観的合理性および社会通念上の相当性が必要とされます。
もっとも、試用期間は「本採用の適格性を見極める期間」であるため、一般の本採用後社員に比べれば、能力不足や勤務態度不良を理由とした退職処理が認められやすいとされています。
2.本件事案の評価
ご相談のケースでは、
・研修中に居眠りが頻発している
・業務理解が進まず、研修についていけていない
という状況にあります。これらは、単なる一時的な不調ではなく、職務専念義務違反や業務適格性の欠如として評価され得る事情です。したがって、適切な手順を踏めば、退職勧奨や本採用拒否を検討することは可能と考えられます。
3.退職に向けた基本的な進め方
重要なのは、いきなり退職を求めるのではなく、段階的な対応を行うことです。
① 事実の記録
まず、居眠りの頻度・時間帯、研修中の態度、理解度、注意指導の有無などを、日時・内容が分かる形で記録します。後日の紛争防止のため、口頭注意のみで済ませず、面談記録や指導メモを残すことが重要です。
② 明確な指導・警告
本人に対して、
・居眠りは業務命令違反・勤務態度不良であること
・現状のままでは本採用は困難であること
を具体的に伝えます。この際、「改善されない場合の不利益(本採用拒否等)」を明確に説明することが必要です。
③ 改善機会の付与
一定期間(例:2週間~1か月)を設け、改善の機会を与えます。あわせて、健康上の問題(睡眠障害、服薬の影響等)や業務との著しいミスマッチがないかを確認し、会社として配慮すべき事情がないかを検討します。
4.退職に至る具体的手段
(1)退職勧奨
最も実務的で紛争リスクが低い方法は、**合意による退職(退職勧奨)**です。現状と今後の見通しを説明し、本人の理解を得たうえで退職を促します。強要や威圧的な言動は避け、あくまで本人の自由意思による合意とすることが重要です。
(2)本採用拒否
改善指導や猶予期間を経ても状況が改善しない場合には、「試用期間中に本採用に必要な適格性が確認できなかった」として本採用を拒否する方法が考えられます。この場合も、指導経過や評価内容を具体的に説明できることが前提となります。
(3)試用期間中の普通解雇
改善の見込みがなく、業務に重大な支障が生じている場合には普通解雇も選択肢となりますが、解雇予告または解雇予告手当が必要であり、紛争リスクは最も高くなります。
5.まとめ
本件では、
①客観的事実の記録
②明確な指導・警告
③改善機会の付与
を行ったうえで、退職勧奨 → 本採用拒否の順で進めるのが、実務上最も安全かつ現実的な対応といえます。
適切なプロセスを踏むことで、不当解雇等のトラブルを回避しつつ、円滑な解決を図ることが可能となります。
以上です。よろしくお願いいたします。
いかがでしょうか。次回は、「本人の意思が確認できない場合の退職処理」についてご案内申し上げます。



