新米社労士イノキュウ現場からの本音の報告(第21回)

2026年1月掲載予定原稿 「業務指示を聞かない従業員への対応について」
私は、今まで、働き方改革推進支援センターの相談員として、また、日本の人事部のQ&Aの回答者として、約4,000人のお客さまに対応してまいりました。今回から、3回は、その中で、特に問題のある社員に対するご質問と、私のアドバイス(回答)をご案内申し上げます。よろしくお願いいたします。
(ご質問)
業務指示に従わない社員に対しての
会社としての対応について、ご教授いただきたく存じます。
以前、該当の社員は早出残業中に事故を起こしたため、
作業部門から事務部門へ配置転換し、今後は、作業しないように指示いたしました。
しかし、勝手に事務作業を離れて現場の作業をしてしまいます。
また、出勤時間は8:30~なのですが、5:00~出勤をするなど、こちらが早出を認めない旨を伝えても本人の判断で早出をし、勝手に仕事をしております。
(回答)
1.本件の基本的な問題点
本件は単なる「勤怠ルール違反」にとどまらず、
① 業務命令違反
② 安全配慮義務を無視した独断行動
③ 無断早出による時間外労働問題
が複合的に生じている、比較的重大な労務問題と評価できます。
特に、過去に早出残業中の事故が発生し、その再発防止のために配置転換および「現場作業を行わない」という明確な指示を出している点は、会社側の対応として合理性が高く、これに反する行為は重く評価されやすい事案です。
2.業務指示に従わない行為の法的評価
会社が、
・配置転換を行い
・「現場作業を行わない」「早出は認めない」
という具体的かつ合理的な業務指示を出しているにもかかわらず、本人が自己判断でこれに反している場合、当該行為は正当な業務命令に対する明確な違反に該当します。
また、無断早出は、
・時間外労働の事前命令・承認制を無視している
・結果として会社に残業代支払義務や労災リスクを生じさせる
点で、会社の管理権限を著しく侵害する行為と評価され得ます。
3.会社として取るべき基本対応(段階的対応が重要)
① 業務命令の再確認・明確化
まず、
・現場作業は禁止であること
・出勤時刻は8:30であり、早出は禁止していること
を書面で明確に再指示してください。
「口頭で言ったつもり」では不十分であり、業務命令書や指示書として文書化することが重要です。
② 指導・注意の記録化
違反行為があった場合には、
・いつ
・どの指示に反し
・どのような行動を取ったのか
を具体的に記録し、注意指導書や面談記録として残します。
この段階で、
「今後も同様の行為があった場合、懲戒処分の対象となる可能性がある」
旨を明確に伝えておくことが重要です。
③ 懲戒処分の検討
改善が見られない場合、就業規則に基づき、
・戒告
・譴責
・減給(要件充足が必要)
など、段階的な懲戒処分を検討します。
本件では、過去の事故歴があり、再発防止のための指示を無視している点から、単なる軽微違反とは言い難いため、比較的早期に懲戒対応へ移行することも合理性があります。
4.無断早出への実務対応上の注意
無断早出であっても、実際に業務を行っている以上、労働時間として扱わざるを得ない点には注意が必要です。
そのうえで、
・早出を認めていないこと
・無断で行った早出は服務規律違反であること
を切り分けて指導する必要があります。
「勝手に働いたから賃金は払わない」という対応は許されません。
5.最終的な対応(配置・解雇の検討)
再三の指導・懲戒を行ってもなお業務命令違反が継続する場合には、
・さらなる配置転換
・職務限定の明確化
・普通解雇
も検討対象となります。
特に、業務命令を守る意思が根本的に欠如している場合は、労働契約上の信頼関係が破壊されたとして、解雇の合理性が認められる可能性もあります。
6.まとめ
本件は、
①業務命令を文書で明確化
②違反行為の記録と指導
③段階的懲戒処分
④改善がなければ配置・解雇検討
という順で対応することが、実務上・法的にも最も安全です。
特に「安全確保を目的とした業務指示」を無視している点は、会社側の正当性を裏付ける重要な要素であり、毅然とした対応が求められる事案といえます。
いかがでしょうか。次回は、「作業能率・勤務態度が不良な社員の退職について」ご案内申し上げます。



