新日本保険新聞に「新米社労士イノキュウの現場からの本音の報告」(第20回)が掲載されました

追悼 BSサミット事業協同組合 理事長 磯部 君男様(2025年8月掲載原稿)
磯部さんと話をしていると、だいたい、5分に1度くらい、電話がかかってきます。
高らかに鳴り響く「聖者の行進」の呼び出し音が着信を知らせてくれるのですが、
磯部さんはワンコールしない内に電話を取り、まるでその電話に対する準備ができていたかのように的確に対応し、電話をしてきた人をなごませる冗談をかまし、相手の話を把握したうえで、自分の考えを話し、組織としての方向性を示し、電話を切り、すぐにその手で、その問題解決に必要なキーパーソンに電話をかけ、要点を説明の上、同意を得て、数分前にかかってきた電話に対する処理を完了します。驚くべき、課題解決・問題処理能力です。
この人並外れた頭の良さ、勘の良さ、さらに私利私欲に一切走らない潔さがあったから、
1983年のRSサミット21研究会発足から、ご逝去された2025年5月27日(火)までの42年間、鈑金塗装業界を代表する組織BSサミット事業協同組合のトップに君臨し続けたのであると私は確信しています。
これ程永きに一つの組織のトップに君臨した方を私は知りません。
私は、磯部さんに連絡をとることをいろいろな事情があり、我慢していたのですが、
2023年の8月、いつものようにウォーキングをしているとき、ふっと磯部さんの顔が頭にうかび、スマホの連絡先を見ましところ、「磯部 君男」様の名前と携帯電話番号がありましたので、思わず、その電話番号を押して、電話をかけていたのです。
すると、いつもの通り、1コールしないうちに磯部さんが電話にでてくれたのです。
そして、「井上さん、事務所開業のご案内をいただいていたのに、何もできなくて悪かったね。」「ただ、井上さんが頑張っていることは、いつも見ていたので、いずれ、お世話になる日が来ると思っていたんだよ。」「実は、井上さんに相談したいことがあるので、近々、BSサミットの本部にきてくれないかな?」
私は、当然、こう答えます。
「はい。ありがとうございます。承知いたしました。すぐに、伺います。」
正直、何の相談かは、まったくわかりませんでしたが、その電話で、訪問を決め、
2023年8月25日(金)午後3時に京橋のBSサミット事業協同組合の本部にお伺いいたしました。
約束の時間にお伺いし、久しぶりの再会のご挨拶を申し上げると、すぐに、磯部理事長から、このようなお話をいただきました。
「井上さん、BSも世界の一流企業とお付き合いするようになってね。」
「昔は、鈑金塗装と整備をしっかりやっておけば良かったのだが、今は、そうはいかなくなったんだよ。」(世界の一流企業の社名は記載する訳にはいきませんが、その企業は、誰でも知っている日本を代表する自動車会社です。)
「今、最重要のテーマは、何といってもコンプライアンスなのです。」「コンプラを完璧にしなければ、その企業に見放されてしまい、今までやってきたことがすべてが崩れてしまう。」「だから、とにかく、コンプラが大事なんだ。」「特に人事労務関係をしっかりとしなければならないのだが、なかなか、いい人がいなくてね。」
そこまで、聞けば、私の言うことはもう決まっています。
「磯部さん、私でよろしければ、全力でお手伝いさせていただきます。」
「そうか、それはありがたい。よろしくお願いしますよ。」
というようなことで、あっという間に、私はBSサミット事業協同組合の人事労務関係のお手伝いをすることになったのです。
しかし、報酬がいくら等の話は一切なく、簡単に言えば、
約30年前から信頼関係のある二人が、お互いの事業において、力を合わせて、
今後、協力していくという男と男の契りが結ばれた瞬間でした。
その後、理事会を経て、私は正式にBSサミット事業協同組合の顧問社労士となったのです。(以下次号)



