フリーランス1300万人時代の盲点! 「働けば働くほど疲れる」起業家が知るべき仕組み化の本質
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「忙しい」のに時間はある? 会社員の起業準備が止まる本当の原因
――新井さん、本日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、「起業したいのに準備が進まない」という会社員の方、かなり多いのではないですか?
新井:ありがとうございます。多いですよ。ものすごく多い。起業18フォーラムに入会された方に、最初に1週間分の生活ログを出していただくのですが……正直に言うと、物理的な時間は結構あるのです。
――え、そうなのですか?
新井:ええ。スマホでゴロゴロ、Netflixで2時間、食後の休憩と称してソファに沈没。でもご本人は「いやー、忙しくて……」とおっしゃる。嘘じゃないのです。ただ、それは物理的な忙しさではなく、精神的な忙しさなのです。
――精神的な忙しさ、ですか。
新井:仕事のこと、家族のこと、明日の段取り。エンターテイメントを楽しんでいるようでいて、頭の中はずっとぐるぐる回っている。仕事終わりの疲労で脳はすでに省エネモードに入っていて、新しいことを考えるスペースなんて残っていない。だから「忙しい」と感じる。時間はあるのに余力がない。これが多くの会社員のリアルです。
――それは……身に覚えがあります(笑)。
新井:もう1つ厄介なのが、情報収集の罠です。「知識が足りないから準備が進まないんだ」と思って、みんな一生懸命調べるのですよね。ネット検索、YouTube、AIに質問。やる気はある。
――調べること自体は良いことのように思えますが?
新井:問題は、正しい知識がないまま、バラバラの断片情報ばかり仕入れてしまうことなのです。「まず会社設立かな?」と検索すると会社設立の情報がどっさり出てくる。「起業アイデアがない」と検索すると、せどりだ、noteの有料コンテンツだ、いろいろ出てくる。で、「結局どれから?」とわからなくなる。資格を取りに行っちゃう人もいますね。ものすごい遠回りです。
――脳のメモリーがパンクしている状態ですね。
新井:まさにそうです。精神的な余裕のなさと、断片情報による脳のパンク。この2つが、多くの会社員の起業準備を止めている正体です。
「ダメな自分」を責めなくていい。それは正常な反応です
――ここまで聞いて「自分はダメだ」と感じてしまう方もいそうですが……。
新井:ちょっと待ってください、とお伝えしたいですね。仕事が終わって、やっと自分の時間。ゴロゴロしたい。Netflix見たい。当たり前じゃないですか。それは怠けているのではなく、正常な反応です。
――たしかに、毎日フルパワーで仕事をした後にさらに頑張れ、というのは酷ですよね。
新井:そうなのです。じゃあ、これまでの起業支援の人たちは何と言ってきたか。「モチベーションを上げましょう!」「夢をイメージしましょう!」「目標を紙に書きましょう!」……一瞬ふわっとなりますよね。で、すぐ落ちる。
――やる気の「波」に振り回されてしまうわけですね。
新井:そういうことです。それから「効率化しましょう」というアドバイスもよくありますが、起業準備はルーティンワークではないのです。毎日やることが違う。新しいことをどんどんやっていかなきゃいけない。効率化が効くのはルーティンの中であって、起業準備の本質的な解決にはなりません。
26年・60,000人の支援で見えた「本当に必要な3つのこと」
――では、起業準備を前に進めるために本当に必要なことは何でしょうか?
新井:経験から言いますと、必要なのは3つです。
1つ目:全体像の「地図」をざっくり持つこと
新井:「どこがゴールですか? 何をすればいいですか?」と細かいプロセスを求める方は多いです。会社員は手順書があると安心しますからね。でも、1人ひとりやるビジネスが違う。性格も環境も違う。全員に共通する細かいステップを示すのは、実は不可能なのです。
――とはいえ、何もないと途方に暮れますよね。
新井:だから「ざっくりこういう流れで進んでいくんだな」というステージ別の概要は、つかんでおいた方がいい。おすすめは本を1冊読むことです。最近は本を読まない人が増えましたが、本にはネット検索では一生得られない価値があります。大切なことが順番に並んでいる。チェックリスト代わりに、まず1冊。これだけで頭の中の交通整理ができます。
――ネット検索だと、どうしても情報がバラバラになりますものね。
2つ目:リアルタイムで相談できる環境
新井:「質問できます」「予約して面談できます」というサービスはたくさんあります。でも、それだけでは足りないのです。
――どういうことでしょうか?
新井:みんな精神的に忙しい中で、「あ、今ちょっとやろうかな」という瞬間があるのです。電車の中で「ちょっと調べたいな」と思った時。せっかく気持ちが乗って作業を始めたのに「ここがわからない」で止まった時。その瞬間にパッと疑問を解消できるかどうか。しかも返ってくる情報が正しいこと。この環境を手に入れられるかが、実はものすごく大きいのです。
――「隙間時間を活かす」って、まさにそういうことなのですね。
新井:おっしゃる通りです。予約制の面談を待っている間に、せっかくのやる気が消えてしまう。それではもったいない。
3つ目:動きを止めない「習慣」をつくること
新井:習慣というより、もはや「やらないと気持ち悪い」レベルまで持っていく感覚です。
――歯磨きのような感覚ですか?
新井:まさにそうです。食後にすぐ歯を磨く人って、それをしないとモヤモヤしますよね? あの感じ。ポイントは、簡単だからこそ習慣になるということ。歯磨きがものすごく大変な作業だったら、誰も習慣化できません。だから、いかに起業準備を「簡単な行動」に落とし込むかが勝負です。
会社員でもできる! 具体的な1日の回し方
――具体的には、どんなリズムで1日を回せばいいのでしょうか?
新井:朝、いつもより30分だけ早く起きてください。その30分で、今日やるタスクを1つだけ決める。「今日はこれについて調べる」「この案を決める」と、具体的な行動に落とし込みます。「素敵な1日を過ごす」みたいなふわっとしたものではダメですよ。
――タスクを1個、必ず決める。シンプルですね。
新井:そして、そのタスクに必要な情報をリアルタイムで手に入れる。朝のうちに質問を投げておく。隙間時間にちょこちょこ作業を進める。
――夜はどうすればいいですか?
新井:夜は疲れていますよね。省エネモードですよね。だから夜は考えなくて済む作業をやるのです。発信作業、事務作業、数字の管理。売上がいくらだったか、経費がいくらだったか。「頭を使わないけど前に進む」作業を粛々と進める。そしてまた朝、次のタスクを決める。この繰り返しです。
――平日にまとまった時間が取れない人はどうすれば?
新井:週末にちょっとまとめて作業する時間を確保する。仲間と一緒に黙々と作業する「もくもく作業会」みたいな場を使うのも手です。1人だと腰が重くても、誰かと一緒なら動けるという方は多いですよ。
会社員のあなたが動けないのは「あなたのせい」じゃない
――最後に、起業準備で悩んでいる会社員の方にメッセージをお願いします。
新井:起業準備が進まない本当の理由は、時間不足でも知識不足でもありません。精神的な余裕のなさと、断片的な情報による脳のパンク。この2つです。そして、それを解消するために必要なのは、モチベーションアップでも効率化でもなく、全体像の地図を持つこと、リアルタイムで相談できる環境、そして小さな習慣を回し続けること。
――環境を整えることが大事なのですね。
新井:会社員として毎日頑張っているあなたが、起業準備を進められないのは「あなたのせい」ではありません。環境の問題です。環境を整えれば、ちゃんと動けます。焦らなくていい。でも、止まらないでください。
――新井さん、本日は大変参考になるお話をありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
→ 新井一のセミナー日程一覧



