会社員の起業準備、自己資金はいくら必要? 資金計画で失敗しない「0円起業の落とし穴」と現金管理の本質

新井一

新井一

テーマ:起業

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
――本日は、起業時の資金計画について、多くの会社員が抱える疑問を新井さんに伺いたいと思います。よろしくお願いします。

新井:よろしくお願いします。資金の話は、起業準備で最も避けて通れないテーマですからね。

――まず、多くの方が気にされる「正直いくらお金を準備しておけば安心か」という質問ですが、新井さんはどうお考えですか?

新井:これは本当によく聞かれる質問です。でも、答えは「人それぞれ」としか言えないのですが、1つだけ確実に言えることがあります。それは自己資金が多いほど、経営は圧倒的に安定するということです。

――それはなぜでしょうか?

新井:単純な話で、お金があれば焦らなくて済むからです。起業って、長距離ドライブに似ているのです。目的地だけ決めて、ガソリンの残量を一切見ないで走り出したら、どうなりますか? 資金計画は、そのガソリンメーターに相当するものなのです。

自己資金の「多い」「少ない」で何が変わるのか

資金に余裕があれば、判断を誤らない

――具体的に、自己資金が多いとどんな利点があるのでしょうか?

新井:まず、価格競争に巻き込まれにくくなります。資金に余裕があれば、安売りせずに済むのです。粗悪な顧客に振り回されることもありません。自分のペースで、自分の理想に近い仕事ができる。これは本当に大きいですよ。

――逆に、デメリットはありますか?

新井:強いて言えば、貯めるまでに時間がかかることですね。あとは、準備に慎重になりすぎて動けなくなる可能性もあります。でも、それは本質的な欠点ではないと思います。

――では、すべて自己資金で賄う必要があるのでしょうか?

新井:いえ、そんなことはありません。借入は否定しません。信用金庫、政策金融公庫、公的な制度融資、補助金、家族からの一時借入など、現実的な選択肢は複数あります。大事なのは、「借りること」ではなく、借りたお金をどう使うか、そしてどう返すかを事前に設計しておくことです。

「0円起業」という美しい言葉の裏側

お金をかけない代わりに、時間を現金で支払っている

――最近「お金をかけずに起業する」という言葉をよく耳にしますが、新井さんはどう見ていますか?

新井:魅力的に聞こえますよね。でも、実態はこうです。ホームページを自分で作る、名刺やチラシも自分でデザインする、広告は一切出さない、人を雇わない、外注もしない。これは節約ではありません。時間を現金で支払っている状態です。

――どういうことでしょう?

新井:時間は増えません。1日は24時間です。その限られた時間を、本来プロに任せるべき作業に使ってしまえば、肝心の「売上を生む活動」ができなくなります。結果として、立ち上がりが遅くなり、収益化も遠のくのです。

――つまり、お金を節約しているつもりが、実は機会損失を生んでいると?

新井:その通りです。情熱や理想だけでは前に進めません。現実の経営では、毎月の支払いがあり、仕入れがあり、人件費があり、広告費があります。それらを無視して「やる気」だけで乗り切ろうとするのは、正直に言って無謀なのです。

資金繰りで最も怖いのは「支払い遅延」

赤字よりも恐ろしいのは、信用を失うこと

――経営における資金繰りで、最も気をつけるべきことは何でしょうか?

新井:経営で最も怖いのは、赤字そのものではありません。支払いが遅れることです。支払いが遅れると、信用を失い、人間関係が壊れ、取り返しがつかなくなります。

――「人生はお金じゃない」という言葉では済まされない、ということですね。

新井:その通りです。仕入先、外注先、スタッフ、税金、社会保険。すべてに期限があります。その期限を守れなければ、どれだけ良い商品を持っていても、どれだけ熱意があっても、信頼は失われます。

利益と現金は、別物である

――多くの起業初心者が混乱するポイントだと聞きました。

新井:はい、ここは本当に重要です。利益が出ていても、現金がないということは、実際に起こります。その理由は、売掛金と買掛金のタイムラグです。

――具体的には?

新井:たとえば、商品を納品しても、入金は1か月後。でも、仕入れ代金の支払いは今月末。このズレが積み重なると、帳簿上は黒字でも、口座には現金がない状態になります。だからこそ、未来の支払い予定と入金予定を、必ず管理する必要があるのです。

――どのように管理すればいいのでしょうか?

新井:会計ソフトや簡易的な表でも構いません。毎月の現金の動きを「見える化」することが、資金繰りの第一歩です。

借金を抱えたままの起業は、高リスク

生活コストを背負ったまま、不確実性を乗せる行為

――住宅ローンや教育ローンを抱えたまま起業する方も多いと思いますが。

新井:はい、これは本当に慎重に考えるべきです。起業は、「今ある生活コスト」を背負ったまま、さらに不確実性を乗せる行為です。毎月の返済が固定であればあるほど、事業の柔軟性は失われます。

――すべての借金を返してから起業する必要がありますか?

新井:いえ、そこまでは言いません。ただし、最低限、毎月の固定支出がどれくらいあるのかを把握しておくことは必須です。その上で、事業の収益計画を立てなければ、破綻は目に見えています。

資金計画は夢を縛るものではなく、安全装置

実務への落とし込み視点

――最後に、実際の起業準備で意識すべきポイントを教えてください。

新井:次の3点だけでも意識すると大きく変わります。

  • 毎月の固定支出を「起業前」に洗い出す
  • 最低6か月分の生活費+事業費を見積もる
  • 「売上につながる支出」を惜しまない

――「売上につながる支出」というのは?

新井:たとえば、広告費や外注費です。自分でやれば0円かもしれませんが、その時間を営業や商品開発に使えば、もっと大きな成果が生まれるかもしれません。そういう視点を持つことが大事なのです。

――資金計画は、夢を最後まで走らせるための安全装置、ということですね。

新井:はい、まさにその通りです。資金計画は、夢を縛るためのものではありません。夢を最後まで走らせるための、安全装置です。しっかり準備して、安心して起業の道を歩んでいただきたいですね。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、25年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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