転機の兆しの見極め方|人生はいつも遠回り

新井一

新井一

テーマ:起業

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
――新井さん、今日は「転機」についてお話を伺いたいと思います。起業支援を25年以上されてきた中で、多くの方の転機に立ち会ってこられたと思うのですが、転機ってどんな風にやってくるものなのでしょうか?

新井:転機って、多くの人が誤解していると思うのですが、嵐みたいにバーンと来るものじゃないのですよ。実際は静かに、でも確実に、足音を立てずに近づいてくるものなのです。

――静かに、ですか。確かに、もっとドラマティックなものをイメージしていました。

新井:そうでしょう? わたしも25年以上この仕事をしてきて、何度も「あ、これは節目だな」って感じる瞬間に立ち会ってきました。自分自身も、クライアントさんも。けれど面白いことに、誰もが最初から勢いよく走り出せたわけじゃないのです。

――というと?

新井:むしろ逆で、ぐっと踏みとどまる時間のほうが長かったりするのです。

根拠のない自信が、ふっと湧く瞬間

「まだ準備が足りない」が口癖になっていませんか?

――踏みとどまる時間、というのは具体的にどんな状態なのでしょうか?

新井:「まだ準備が足りない」「まだ勇気がない」「まだ周りに説明できない」そう思って、足がすくむ期間ですね。誰にだってあります。わたしのクライアントさんも、みんなそうでした。会社員として働きながら起業準備をする人たちは、特にこの葛藤が強いのです。

――確かに、会社員の場合は特に慎重になりますよね。

新井:ええ。でも不思議なことに、ある朝、目が覚めた瞬間。ある夕暮れの帰り道。ある会話の途中で。ふっと、「今なら進めるかも」って確信が湧いてくる瞬間が訪れるのです。

――それは何がきっかけなのですか?

新井:理由? わかりません。でも、霧の向こうが一瞬だけ晴れたように、迷いが薄れていくのです。それが転機の予兆なのだと思います。

理屈より直感が強くなる時

――予兆、ですか。他に転機の兆しはありますか?

新井:理屈より直感のほうが強い時があります。背中を押された気がする。重かった荷物が急に軽く感じる。怖さより、わくわくが勝つ。そんな変化が、はっきり起こります。

――なるほど。頭ではなく、心とからだが動き始めるのですね。

新井:その通りです。モヤモヤが続く期間は苦しい。本当に苦しい。でもね、それは停滞じゃないのです。

――停滞じゃない?

新井:熟成時間なのです。麦茶のパックみたいに、殻の中で味が出ている時期。まだ飛べない鳥の羽が生え揃うのを待つようなもの。そう考えると、ちょっと気が楽になりませんか?

――確かに。すごく励まされます。

転機は掴みに行くものではなく、迎え入れるもの

焦っても、転機は思った時間には来ない

――では、転機を早く呼び込むために、何かできることはあるのでしょうか?

新井:焦っても、転機は思った時間には来ません。無理に呼ぼうとしても、こちらが疲れるだけです。

――じゃあ、ただ待つしかないのですか?

新井:いえいえ、だからといって、何もしないわけじゃない。好きな方向に、日々すこしずつ歩いておく。種をまく。心の状態を整えておく。わたしが会社員の方に伝えているのは、まさにこれです。

――具体的には?

新井:いきなり会社を辞める必要はない。週末や仕事の合間に、小さく種をまいておけばいいのです。そうしていると、ある日ドアを叩く音がします。コンコン。「そろそろ行きますか?」それが転機の合図なのです。

小さな種まきが、大きな転機を呼ぶ

――小さく種をまく、というのは例えばどんなことでしょう?

新井:SNSで情報発信を始めてみる。興味のある分野の勉強会に参加する。週末だけ小さなサービスを試してみる。そういった会社員という安全基地を持ちながらできることから始めればいいのです。

――それなら、リスクも少なく始められますね。

新井:そうなのです。わたしが提唱している「会社員のまま6カ月で起業する」方法も、まさにこの考え方がベースになっています。

転機を経験すると、力みが抜けていく

1度大きな変化を越えると見える景色

――転機を経験した人には、何か変化がありますか?

新井:1度大きな変化を越えると、人は少しずつ学びます。急ぐ必要はない。勝手にジャッジされる必要もない。人生は章に分かれているだけ。次の章が開くタイミングを知っている自分が、ゆっくり育っていきます。

――それは、精神的な成長ですね。

新井:ええ。そして手に入る喜びは、目に見える成果より静かな自信や、心のしなやかさだったりします。

――新井さんご自身も、今また新しい転機を感じていらっしゃいますか?

新井:また新しい扉の気配を感じています。慌てずに、でもそっと準備をして、呼ばれるその時を楽しみに待っています。

読者の皆さんへのメッセージ

――最後に、これを読んでいる会社員の方々にメッセージをお願いします。

新井:あなたにも、もしかしたら今、静かに近づいている転機があるかもしれません。焦らず、でも心だけは開いておいてください。そして、小さくてもいいから種をまき始めてください。転機は、準備ができた人のところに必ずやってきますから。

――新井さん、今日は貴重なお話をありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、25年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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