AI時代に読まれる起業家ブログの書き方|ゼロクリック検索6割時代のコンテンツ戦略を起業支援の専門家が解説
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
年間200万回検索される「イエベブルベ」が示す新しいビジネスモデル
――新井さん、今回は「イエベブルベ経済圏」についてお話を伺いたいと思います。年間200万回も検索されているとのことですが、これは単なる美容トレンドではないですよね?
新井:これは完全に「経済圏」として成立しています。注目すべきは、検索の内訳です。「ブルベ 冬」「イエベ 秋」など、診断を受けたい人だけでなく、すでに診断済みで買い物したい人も多い。
――診断そのものよりも、その後の消費行動も大きいということですか?
新井:まさにそうです。「イエベ リップ」「ブルベ アイシャドウ」「イエベ ファンデーション」などなど...。美容系企業はとっくにこの構造に気づいていて、化粧品売り場には「イエベ向け」「ブルベ向け」の表示が当たり前のように並んでいる。カラーコンタクト、ヘアカラー、ネイル、アクセサリー...... あらゆる商品が「イエベブルベ」で分類され始めました。
4タイプ分類が生んだ「永遠のリピート需要」の仕組み
――この経済圏の強さは、どこにあるとお考えですか?
新井:顧客を4つのタイプに分類したことです。イエベ春、イエベ秋、ブルベ夏、ブルベ冬。たった4つ。このシンプルさが恐ろしく強力なビジネスモデルを生み出しました。
――4つという数字に意味があるんですか?
新井:4タイプそれぞれに、専用商品が必要になるからです。イエベ春の人がブルベ冬向けのリップを買っても似合わない。だから必然的に「自分のタイプ専用」の商品を探し続ける。新作が出るたびに「イエベ秋に似合う新色は?」と検索する。つまり、永遠のリピート需要が構造的に組み込まれているのです。
――それは企業側にとっては理想的なビジネスモデルですね。
新井:この分類は「自己診断」が主流なんです。プロの診断を受けるのは少数派で、多くの人がネット情報やアプリで「自分はイエベ春だ」と決めつけている。ということは、「実は診断間違ってたかも......」という不安が常に残る。だから定期的に再診断を検索し、また買い直す。完璧すぎるビジネスサイクルです(笑)
芸能人の「カミングアウト」が市場を爆発させる構造
――最近、芸能人が自分のパーソナルカラーを公表することが増えていますよね?
新井:それが経済圏をさらに加速させています。「○○さんはブルベ冬」「△△さんはイエベ秋」と公表されると、ファンは即座に検索する。「ブルベ冬 芸能人」「イエベ 芸能人」というワードも多く検索されています。そして「同じブルベ冬の○○さんが使ってるコスメは?」と調べ、買う。
――インフルエンサーマーケティングとの相性が良いんですね。
新井:もはや美容系インフルエンサーは、自分のパーソナルカラーを公表することが義務みたいになっています。公表しないと、フォロワーから「イエベですか? ブルベですか?」と質問される。企業側も「ブルベさん必見」「イエベ秋の方におすすめ」というマーケティング文言を使う。これは美容業界の共通言語になっているんです。
男性市場への侵食が始まっている
――女性向け市場というイメージが強いですが、男性はどうなんでしょうか?
新井:まだ女性市場ほどじゃないですが、確実に男性にも浸透し始めていますね。メンズコスメ市場の拡大とともに、「男もパーソナルカラーを知るべき」という風潮が広がりつつあるのでしょう。
――韓国のK-POPアイドル文化の影響もありそうですね。
新井:その通りです。今後5年で、男性向けイエベブルベ市場は10倍以上に成長する可能性があると見ています。
この経済圏で実際に儲かっているのは誰か?
――この巨大経済圏で、実際に儲かっているのは誰なのでしょうか?
新井:いくつかのプレイヤーがいます。
- 化粧品メーカーは、商品ラインを4倍に増やせる大義名分を得た
- 診断サロンは、1回数千円〜数万円の診断料を得ている
- 美容系インフルエンサーは、「イエベ向けコスメ紹介」で収入を得ている
- メディアは、「あなたは何タイプ?」系コンテンツでPV稼げる
- EC業界は、「イエベ」「ブルベ」タグで商品整理すれば売上アップ
新井:全員がWin-Winに見えます。
――消費者にとってはどうなんでしょうか?
新井:ここが最大の皮肉なんですが、終わりがないんです。「イエベ春だからこの色」と買っても、次のシーズンには「やっぱりイエベ秋かも」と迷う。プロの診断を受けても、結果が違うこともある。「セカンドタイプ」とか「ベストカラー」とか、どんどん概念が複雑化していく。そして消費者は永遠に検索し続ける。永遠に「自分に本当に似合う色」を探し続けるのです。
起業支援25年の視点から見た「終わりのない悩み」ビジネスの本質
――これは幸せなことなんでしょうか?
新井:私は起業支援を25年以上やってきましたが、「終わりのない悩み」を商品化したビジネスほど強いものはないと断言できます。ダイエット市場と同じ構造なんです。「完璧な答え」は存在しないから、消費者は永遠に商品を買い続ける。企業は永遠に新商品を出し続けられる。
――起業を考えている人は、このビジネスモデルから何を学ぶべきでしょうか?
新井:3つあります。1つ目は、複雑さはそれ自体が商品になるということ。4タイプ分類というシンプルさの中に、実は無限の複雑さが隠れている。「春だけどちょっと秋寄り」とか「ブルベ冬だけど夏の色も似合う」とか。この適度な複雑さが、専門家需要を生み、商品多様化を正当化するんです。
――2つ目は何でしょうか?
新井:「自分探し」市場は永遠に成長するということです。人間は「自分のことを知りたい」という欲求から逃れられない。性格診断、才能診断、そしてパーソナルカラー診断。形を変えて、永遠に需要があるのです。
――3つ目は?
新井:分類は帰属意識を生むということです。「私はイエベ春」と自己認識した瞬間、その人は「イエベ春コミュニティ」の一員になる。同じタイプの人の情報を探し、共感し、消費する。分類は、部族を作るのです。
起業希望者への具体的な選択肢「入るべきか」「作るべきか」
――起業を考えている読者には、どんな選択肢がありますか?
新井:2つの選択肢があります。1つは、この経済圏に参入すること。イエベブルベ関連ビジネスは、まだまだ伸びます。特に男性市場、地方市場、シニア市場は未開拓です。診断ツール開発、専門メディア運営、コンサル業...... 参入の余地は十分あります。
――もう1つの選択肢は?
新井:同じ構造の経済圏を別分野で作ることです。これの方がもっと面白い。「4タイプ分類」×「永遠の自分探し」×「専用商品需要」… この公式は、美容以外でも成立します。ビジネスパーソナリティ診断とか、キャリアタイプ診断とか、探せばいくらでもある。あるいは、あなたが新しい分類を発明するのもいい。
――具体的にはどう考えればいいのでしょうか?
新井:重要なのは、人々に「自分はこのタイプだ」と思わせることです。そして、そのタイプ専用の商品やサービスを継続的に提供すること。次の10年で、あなたが新しい「経済圏」を作る側になってもおかしくない。
データで見る具体的な市場機会
――最後に、実際の検索データから見えてくる具体的なビジネスチャンスを教えていただけますか?
新井:未開拓ニッチ市場として、検索はあるけど供給不足の分野があります。
- イエベブルベ×ウェディング
- イエベブルベ×着物
- イエベブルベ×インテリア
新井:この辺りは検索需要があるのに、専門サービスがほとんどない。先に動いた者勝ちです。
――会社員のまま起業を目指す人にとって、このような市場の見方は重要ですね。
新井:そうです。大きな資本がなくても、データを読み解き、未開拓のニッチを見つければ、十分に勝算があります。それでは、あなたの起業アイデアが「経済圏」に育つことを願っています。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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