アイデアを商品化して起業をする方法
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「起業したいけど家族が反対」は、誰もが通る道
――新井さん、今日は「家族の反対」というテーマでお話を伺いたいと思います。起業相談の中でも、かなり多いテーマなのではないでしょうか?
新井:そうですね。25年以上この仕事をしていますが、家族の反対に悩む方は本当に多いです。特に会社員の方ですと、配偶者やご両親から「安定した仕事を辞めるなんて」と言われるケースが大半ですね。
――やはり「安定」というキーワードが出てくるのですね。
新井:はい。でも、私がいつもお伝えしているのは、無理に反対を押し切るのは絶対にやめてくださいということなのです。強引に進めても、家族の協力が得られない状態でのスタートは、本当に苦しいものになりますから。
家族が反対する本当の理由
漠然とした不安が反対を生む
――家族が反対する理由は、やはり経済的な不安が大きいのでしょうか?
新井:もちろん経済的な不安もありますが、実はもっと根本的な不安があるのです。それは「この人、本当に大丈夫なのだろうか」という漠然とした不安ですね。
計画性がない、準備不足、勢いだけで突っ走りそう…そういった印象を持たれてしまうと、当然反対されます。
――なるほど。具体的な計画が見えないことが、不安を増幅させてしまうのですね。
新井:その通りです。ですから、まずはじっくり話し合うことが大切なのです。自分がなぜ起業したいのか、どんな未来を描いているのか、それが家族の幸せにどう繋がるのかを、丁寧に伝える必要があります。
「会社を辞めない」という選択肢
――でも、話し合っても理解してもらえないこともありますよね?
新井:そういう時こそ、「会社を辞めません」と約束するのです。
――え? それでは起業できないのでは?
新井:いえいえ(笑)。正確には「会社を辞められる経済力が身に付くまで、絶対に会社を辞めない」という約束ですね。これが、私が25年間お伝えし続けている「会社員のまま6カ月で起業する」という方法なのです。
――なるほど! 副業から始めるということですね。
新井:はい。会社員という安定した収入を維持しながら、小さく事業を始める。リスクを最小限に抑えながら、実績を積み上げていく。これなら家族も安心できますし、ご本人も焦らずに済みます。
40代、転職歴3回、それでも起業できる?
「一生できる仕事」を求める気持ち
――先日、40代半ばで転職歴が3回あり、家族に猛反対されているという方から相談を受けたそうですね。
新井:ええ。「どうしても会社を辞めたい、馴染めなくて苦しんでいる」という内容でした。小学生のお子さんもいらっしゃって、一生できる仕事を見つけたいと悩んでおられました。
――そういう方には、どのようなアドバイスをされるのですか?
新井:まず、その気持ちはよく分かるとお伝えしました。決められた箱の中に入ろうとする、入れられそうになると、苦しくなる人は多いのです。
でも、起業をすれば自分で箱を作ることができる。これが大きな違いなのですね。
安易な転職は起業へのパワーを削る
――その方にも「会社を辞めずに」とアドバイスされたのですか?
新井:はい。安易に転職や退職をせず、2年ほど頑張ってみてくださいとお伝えしました。今の仕事を継続しながら「一生できる仕事」を手に入れるための行動を始める。これが最善策だと思います。
――2年というのは、具体的で良いですね。
新井:転職は精神的に大きな影響があります。新しい環境に適応するだけでエネルギーを使いますから、起業へのパワーを大きく削ってしまうのです。
ただし、どうしても今の環境が厳しい場合は、派遣社員になるなど、時間の確保を優先した転職なら検討しても良いと思います。
好きなことで副業を始めると人生が変わる
――副業を始めることで、会社での悩みも軽くなるのでしょうか?
新井:そうなのです! これは多くの方が実感されていることなのですが、好きなことで副業を始めると「自己実現」を感じる機会が増えてきます。
すると不思議なもので、会社での出来事など気にならなくなるのです。生きる目標を感じ、目標達成に向けて行動することが、最高の楽しみになりますから。
――それは素晴らしい変化ですね。
新井:一生、継続していける仕事を得ることによって「安定感」「満足感」に繋がってきます。そんな姿を見ているご家族もまた、安定感、満足感を感じることができるはずなのです。
FCや高額開業は慎重に
「すぐに起業したい」という焦り
――残業や休日出勤が続いて、「このままではいつまでも起業できない」と焦ってしまう方もいますよね。
新井:はい。そういう方から「すぐにでも起業できるFCに加盟したい」という相談を受けることもあります。でも、開業資金が高額で家族の同意が得られない、というケースが多いのです。
――FCは確かに手軽に見えますが…。
新井:まず考えていただきたいのは、そのFCは本当に続けていけそうかということです。良心的なFC本部だったとしても、家族で働くことを想定しているような業態だと、続けていけないリスクもありますね。
反対を押し切ることの危険性
――やはり、家族の反対を押し切るのは良くないのですね。
新井:絶対にやめた方が良いです。ただでさえ大変なスタート時に、家族の協力がないどころか反対されている状態…これは本当に辛いですよ。きっと続かなくなります。
――では、どうすれば良いのでしょう?
新井:やはり、小さい所から始めて、リスク回避をすることですね。飲食のFCですと数千万円、コインランドリーなども相当な金額がかかります。そこまでのリスクを取る前に、もっと小さく、もっと安全に始められる方法があるはずです。
家族を味方につける起業準備の進め方
段階的に信頼を築く
――結局、家族の協力を得るには、どうすれば良いのでしょうか?
新井:実績を見せること、これに尽きます。
- 会社を辞めずに副業として始める
- 小さくても収益が出ることを証明する
- 計画性を持って段階的に進める
- 家族との対話を継続する
この4つを守れば、自然と家族も理解してくれるようになります。
――最初から大きなことを目指すのではなく、小さな成功を積み重ねていくのですね。
新井:その通りです。会社員という箱に縛られて人生を過ごすよりも、自分自身が求める自己実現に向けて取り組みたいという情熱。それが社会参加、社会貢献に繋がっていき、家族がもっと幸せになれるということ。
この考えをしっかりと家族に伝え、そして行動で示していく。これが家族の反対を乗り越える、最も現実的な方法だと思います。
地道な努力の積み重ねが、一生の仕事を生む
――最後に、家族の反対に悩んでいる方へメッセージをお願いします。
新井:地道な努力の積み重ねが必要ではありますが、努力を重ねた結果、一生できる仕事を得ることができたらどうでしょうか? それは何物にも代え難い財産になります。
焦らず、でも着実に。会社を辞めずに、リスクを抑えて、家族を安心させながら、自分の夢を実現する。これが、私が25年間お伝えし続けている起業の形なのです。
――ありがとうございました。家族の反対は、実は自分の準備不足や計画性の欠如を示すサインでもあるのですね。
新井:その通りです。反対されたら、それをチャンスと捉えて、より良い計画を立て直す。そういう柔軟さを持つことも、起業家には必要な資質だと思いますよ。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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