会社員のまま始める2030年勝ち組ビジネス|起業18フォーラム新井一代表が語る「今すぐ動くべき5つの理由と具体的戦略」
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「頑張っているのに利益が残らない」はなぜ起きるのか
――新井さん、今日は業績に悩むフリーランスや一人社長の方に向けて、具体的なアドバイスをいただきたいと思います。まず、頑張っているのになぜか現金が残らないという声をよく聞くのですが、どこに問題があるのでしょうか?
新井:そうですね。多くの方が「売上を増やせば利益も増える、そして現金が増える」と考えていますが、実はこれが最大の落とし穴なのです。特に一人でやっている方は、売上を追いかけるほど忙しくなって、結局手元に残るお金が少ないという悪循環に陥りがちです。
――確かに、売上は上がっているのに生活が楽にならないという話はよく聞きます。
新井:はい。私が25年以上、延べ60,000人の起業をサポートしてきた中で気づいたことは、個人事業で成功している方は例外なく「利益の最大化」を最優先にしているということです。売上高ではなく、利益を基準に経営している。これが最も重要なポイントです。
儲からない仕事を抱え続けることが最大の負債
「下の2割」を切り捨てる勇気
――利益を最大化するために、具体的にどんなことから始めればいいでしょうか?
新井:まず最初にやっていただきたいのは、儲からない業務を切り捨てる、あるいは外注することです。パレートの法則をご存知ですか? 売上の8割は、全体の2割の業務や顧客から生まれているという法則です。
――はい、よく聞きます。
新井:ということは逆に言えば、残りの2割の業務は、8割の時間を使っているのにほとんど利益を生んでいないということなのです。この「下の2割」を特定して、思い切って排除する。これが利益を増やす最短ルートです。
――でも、お客様を切るというのは勇気がいりますよね?
新井:その気持ちはよくわかります。ただ、自分の「一番儲からないこと」を抱え続けることが、実は一番の負債になるのです。私は受講生の方にいつも言うのですが、「さっさと人に振ってしまう」つまり外注することを強く推奨しています。
自分の得意分野だけに集中する
――外注するといっても、どんな業務を外注すればいいのでしょうか?
新井:基本的には、自分の得意な分野以外のすべてです。特に事務的な作業や、専門性が必要な会計業務などは、自分で頑張って解決しようとせず、専門のサービスに依頼することを検討してください。
――つまり、自分にしかできないコア業務に時間を使うということですね。
新井:その通りです。一人でやっているからこそ、時間は最も貴重な資源なのです。時給換算で考えたとき、自分がやるべき高付加価値の仕事と、誰かに任せられる仕事を明確に分ける必要があります。
ターゲットを絞り込む「ナローダウン戦略」[/大見出み]
「いいお客様」の条件を明確にする
――利益を増やすために、他に重要なポイントはありますか?
新井:はい、次に重要なのがターゲットの絞り込みです。一人ですべてのお客様に対応することは物理的に不可能ですから、お付き合いしたい「いいお客様」の条件を明確にする必要があります。
――「いいお客様」というのは、具体的にどういう方でしょうか?
新井:それは業種によって異なりますが、共通しているのは以下のような条件です。
- 自分の専門性を理解し、適正な対価を支払ってくれる
- コミュニケーションがスムーズで、相互に尊重し合える関係が築ける
- 長期的な関係を望んでいる
- 自分が本当に力になりたいと思える課題を抱えている
――なるほど。逆に、こういう方とはお付き合いしたくないという「反意」を伝えることも大切だとおっしゃっていますね?
新井:そうです。これは多くの方が躊躇するポイントなのですが、実は非常に効果的です。「こういう人には向いていません」と明確に伝えることで、本当にサービスを必要としている人が集まってくるのです。
「誰に」を明確にすることで売上も利益も上がる
――ターゲットを絞ると、逆に売上が減るのではないかと心配する方も多いと思います。
新井:これは起業支援を25年以上やってきて確信していることなのですが、ターゲットを絞れば絞るほど、売上も利益も上がります。なぜなら、明確なターゲットに向けたメッセージは響きやすく、成約率が格段に上がるからです。
――そういうものなのですね。
新井:はい。「誰でもウェルカム」という姿勢は、実は「誰にも響かない」ということなのです。特に個人経営では、自分の強みを最大限に活かせる領域に集中することが成功の鍵です。
[大見出し]一人社長のための「最強仕事術」
優先順位は「やらないこと」を決めることから
――日々の仕事の進め方についても、何かアドバイスはありますか?
新井:はい、これは私が「最強仕事術」と呼んでいる方法なのですが、タスクの優先順位付けは、優先度の高いものを選ぶのではなく、「やらないこと」を決めることから始めてください。
――それはどういうことでしょうか?
新井:多くの方が、To Doリストを作って優先度の高いものから順にこなそうとします。でも、これだとリストはどんどん増えていくばかりで、いつまでも終わりません。
――確かに、そういう経験はあります。
新井:そうではなくて、まずリストの中から「やらないこと」を決めて削除していく。仕分けですね。最終的に残ったものが、今日やるべき最も優先度の高いタスクなのです。これを私は「引き算の仕事術」と呼んでいます。
完璧主義を捨てる勇気
――なるほど。でも、やらないと決めたタスクは、いつかやらなければいけないのではないですか?
新井:それがポイントなのです。実は、「いつかやらなければ」と思っていることの8割は、やらなくても何も問題は起きません。もし本当に重要なことであれば、自然と優先度が上がってきますから。
――それは目からウロコです。
新井:一人でやっている以上、完璧主義は敵です。80点主義でいい。むしろ80点で早く終わらせて、次の仕事に取りかかる方がはるかに生産的なのです。
会計の基本を押さえて利益を残す
税務用の会計とは別に財務を管理する
――最後に、会計面でのアドバイスもいただけますか?
新井:はい、これは多くのフリーランスが見落としているポイントなのですが、税務のための会計とは別に、自分自身でP/Lを管理することが非常に重要です。
――税理士さんに任せているだけではダメということですか?
新井:税理士さんがやってくれるのは、あくまで税務申告のための会計です。もちろんそれも大切なのですが、経営判断をするための会計は、自分自身で理解している必要があります。
変動費と固定費を理解する
――具体的には、どんなことを理解すればいいでしょうか?
新井:最低限、変動費と固定費の違いを理解し、自分のビジネスでそれぞれがいくらかかっているか把握することです。変動費は売上に比例して増える費用、固定費は売上に関係なくかかる費用ですね。
――それがわかると、どんなメリットがあるのですか?
新井:例えば、固定費を下げれば、売上が少なくても利益を出しやすくなります。逆に、変動費率が高い場合は、価格設定や仕入れ先の見直しが必要だとわかります。こうした戦略的な判断ができるようになるのです。
最終的に現金が残ることが最重要
――会計で最も大切なことは何でしょうか?
新井:個人経営で大事なのは、最終的に現金が残ることです。どんなに売上が多くても、手元に現金が残らなければ意味がありません。
――利益と現金は違うということですね。
新井:その通りです。売掛金が多くて入金が遅れたり、在庫を抱えすぎたりすると、黒字なのに資金繰りに困るということが起きます。だからこそ、キャッシュフロー、つまり現金の流れを常に意識することが重要です。
今日から始められる「引き算経営」
――今日のお話を聞いて、フリーランスの方は、まず何から始めればいいでしょうか?
新井:まずは、自分の業務を棚卸しして、「下の2割」を特定することから始めてください。そして、それを切り捨てるか外注するかを決める。これだけで、時間的にも経済的にも大きな余裕が生まれるはずです。
――引き算の発想が大切なのですね。
新井:はい。多くの方が「もっと頑張らなければ」と足し算で考えてしまうのですが、一人でやっている以上、限界があります。だからこそ、何をやらないかを決めることが、実は最も重要な経営判断なのです。
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
新井:業績が伸び悩んでいる方は、決して能力が足りないわけではありません。ただ、やり方を変える必要があるのです。私は25年以上、数多くの起業家を見てきましたが、成功する人は例外なく「選択と集中」ができています。勇気を持って不要なものを手放し、自分の強みに集中してください。必ず道は開けます。
――新井さん、貴重なお話をありがとうございました。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間延べ1000人を超える。
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