50代起業は本当に可能? 起業18フォーラム代表・新井一氏に聞く会社員のまま始める起業戦略
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「起業したいけど何をしていいかわからない」は当たり前
――新井さん、起業相談で「起業したいけど何をしていいかわからない」という声が多いと伺いました。実際、どのくらいの方がこの悩みを抱えているのでしょうか?
新井:そうですね、相談に来られる方の7~8割くらいは、この状態からスタートしますね。25年以上、起業支援をしてきましたが、この相談は本当に多いです。
――それだけ多いということは、かなり深刻な問題ですね。
新井:でも、僕は全然悪いことだと思っていないのです。昔、同業者と話した時に、彼らは「そんなこと言うやつは終わってる。そもそも無理」って言っていたのですが、僕の考えは違います。アイデアが出ないのには、ちゃんと理由があるから。それも、あなたのせいじゃない。ただ、やり方を知らないだけなのです。
――やり方を知らないだけ、ですか。
新井:はい。起業アイデアが見つからない人には、2つの決定的な不足がある。1つ目は「知識不足」、2つ目は「センサーの感度不足」です。この2つを理解すれば、起業アイデアは面白いように湧いてきます。
知識がないと何も始まらない
――まず1つ目の「知識不足」について、詳しく教えていただけますか?
新井:当たり前の話なのですが、ないものは、ない。何もないところから、いきなりアイデアなんて生まれてこないのです。種がないのに花は咲かないでしょう? 起業アイデアが出ないって言ってる人の多くは、圧倒的にインプットが足りてないのです。
――インプット不足、ですか。
新井:例えば、僕の本には事例がいっぱい載っています。ホームページにも、実際の起業事例をたくさん載せている。でも... 見られてないのです(笑)
――見られてない?
新井:そうなのです。だから、まず見て欲しい。知って欲しい。知れば「あ、こんなのもあるんだ」「これなら自分にもできそう」って、次の考えが浮かんでくるのです。何もないところから「起業したいけど何しよう」って考えても、それは無理な話。まずはインプットです。
――具体的には、どんなインプットが必要でしょうか?
新井:基礎知識や事例をとにかく仕入れることですね。本を読む、セミナーに参加する、実際に起業した人の話を聞く。僕の起業18フォーラムでも、皆さん最初は「何をしていいかわからない」状態からスタートしています。でも、いろんな事例を知ることで、「これなら自分にもできる」というアイデアが生まれてくるのです。
センサーの感度を磨く、これが超重要
――2つ目の「センサーの感度不足」とは、どういうことでしょうか?
新井:インプットが終わったら、次はセンサー。センサーって何かっていうと... 世の中の需要をキャッチする力のことです。起業って基本的に問題解決なのです。社会の課題を解決すること、人の困りごとを解決すること。
――問題解決、ですか。
新井:そうです。「こうだったらいいな」「こうなったら便利だな」「こうなりたいな」。こういうのを叶えてあげるのがビジネスなのです。起業したいけどアイデアがないって言ってる人は... そういうものを持ってないことが多い。今あるものに慣れちゃって、疑問に思ってない。ここが問題なのです。
――慣れてしまうことが問題なのですね。
新井:不便だったら便利にしたいと思ってよ、と。それがイノベーションに繋がってくわけで。例えば、お勤めの会社で、めちゃくちゃ非効率な仕事とかありませんか? 「なんでこんなことやってんの、うちの会社」って思うこと。
――ありますね(笑)
新井:
- なんで変なシステム使ってんの?
- なんでこんなアナログなの?
- なんでこんな手間かかる方法でやってんの?
最初はそうやって疑問に思う。でも、だんだん慣れちゃう。で、業務やっちゃってる。そして、後輩が入ってきた時に「うちの会社ってこうなんだよね」って、それを当たり前のことのように伝えるわけです。慣れちゃってるから。それを直さなきゃいけないのに。
「慣れ」がビジネスチャンスを殺す
――確かに、慣れてしまうと問題が見えなくなりますね。
新井:その不便な状況に慣れちゃって、当たり前だと思い込んじゃうと、ビジネスにならない。昔は移動する時に馬に乗ってた。早く行こうと思ったら、どうしたか? もっと早い馬、もっと強い馬を育てたわけです。
――なるほど。
新井:でも、その中からは、電車とか飛行機っていう発想は生まれてこない。ある特定の人たちが「これ、もっとできないかな」「馬って不便だよね」って感じになって、馬に変わるものを考えていった。蒸気機関車とか、そういうものを。ビジネスって、そこなのです。
――つまり、今あるものに疑問を持つことが重要なのですね。
新井:そうです。センサーを磨くというのは、「これ、おかしいぞ」「これ、不便だな」って感じる力を育てることなのです。
アイデアを思いつくための2ステップ
――では、具体的にどうすれば起業アイデアが見つかるのでしょうか?
新井:2つのステップがあります。
――教えてください。
新井:ステップ1は、インプットする。基礎知識や事例をとにかく仕入れる。本を読む。ステップ2は、センサーを磨く。「これ、おかしいぞ」「これ、不便だな」って感じる力を育てる。この2つができたら、すぐそれはビジネスになります。
――すぐにビジネスになる?
新井:ただし、スモールビジネスの場合、できることに限界があります。だから、その中からさらに自分にできることを選んでいく。そんなイメージですね。
――会社員として働きながら起業を目指す場合、どのくらいの期間が必要でしょうか?
新井:僕は「会社員のまま6カ月で起業する」方法をお伝えしています。6カ月あれば、インプットして、センサーを磨いて、実際にビジネスを立ち上げることができるのです。実際、起業18フォーラムでは、多くの方が6カ月以内に小さく起業をスタートさせています。
――最後に、これから起業を目指す会社員の方にメッセージをいただけますか?
新井:「起業したいけど何をしていいかわからない」は、全然恥ずかしいことじゃないです。やり方を知らないだけ。まずは、いろんな事例を知って、インプットを増やしてください。そして、日常の中で「これ、おかしいな」「これ、不便だな」って感じるセンサーを磨いてください。この2つができれば、必ずアイデアは見つかります。頑張っていいアイデア作りましょう。
――ありがとうございました!
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間延べ1000人を超える。
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