会社員のまま個人事業主になる方法|開業届から確定申告まで新井一氏が徹底解説

新井一

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テーマ:起業

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

個人事業主への第一歩は「事業を始めること」

――新井さん、本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。最近、会社員の方から「個人事業主になりたいけれど、何から始めればいいかわからない」というご相談が増えているのではないでしょうか?

新井:こちらこそ、ありがとうございます。おっしゃる通りです。この質問はよくいただきますね。皆さん、個人事業主になるのは複雑で難しいことだと思われがちですが、実際はそんなことはありません。

――では、個人事業主になるための基本的な流れを教えていただけますか?

新井:まず大前提として理解していただきたいのは、個人事業主とは法人を設立せずに個人で継続反復的に事業を営んでいる人のことです。つまり、個人事業主になるための第1歩は「継続的に営む事業があること」なのです。

売上48万円を超えたら確定申告が必要

――事業を始めた後の手続きについて教えてください。

新井:個人事業で得た売上から経費を引いた年間の所得が48万円を超えると、原則として確定申告が必要になります。会社員の副業なら、給料とは別に副業の所得が20万円を超えると確定申告はマストですね。

――つまり、会社員をやりながら個人事業主にもなれるということですね?

新井:その通りです。あくまで分け方は法人か個人かです。会社員の副業であっても、継続的に事業として行っているのであれば個人事業主ということになります。起業18フォーラムのメンバーさんも、ほとんどの方が会社員のまま個人事業主として活動されています。

開業届は「出しておくべき」3つの理由

――開業届について詳しく教えてください。

新井:所得税法には「新しい事業を始めたら1ヵ月以内に開業届を提出するように」と定められています。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、この書類を管轄の税務署に提出するだけです。手続きは本当に簡単なのです。

――開業届を出していなくても罰則はないと聞いたことがあるのですが...?

新井:確かに罰則はありません。個人事業主として仕事を受けたり確定申告をすることも可能です。ただし、開業届を出しておくべき3つの理由があります。

節税効果のある制度を利用できる

新井:1つ目は、小規模企業共済や事業融資を受ける時に開業届が個人事業主の証明になるケースがあることです。2つ目は、店舗やオフィスを借りる時にも証明書として使えること。3つ目は、保育園などの申し込みにおいて、開業届が自営業の証明書に採用されている自治体もあることです。

青色申告で最大65万円の特別控除

――確定申告について教えてください。

新井:個人事業主は年間の所得が48万円を超えると原則確定申告をすることになります。会社員の副業なら20万円を超えたらマストです。所得税の確定申告には青色申告と白色申告があります。

――どちらがおすすめでしょうか?

新井:断然、青色申告です。青色申告には最大65万円の特別控除など様々なメリットがあり、節税のことを考えると圧倒的にお得です。

青色申告承認申請書の提出タイミング

新井:ただし、青色申告をするには事前に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。新規に開業する人は、開業日が1月1日から15日の間であれば3月15日までに、1月16日以降の開業なら開業から2ヵ月以内に管轄の税務署に届け出をすればOKです。

――開業届と一緒に提出する方が多いのでしょうか?

新井:そうですね。開業から2ヵ月以内ということもあり、開業届と青色申告承認申請書を一緒に提出する人が多いようです。

確定申告ソフトで「簡単に」「正確に」

――確定申告の具体的な方法について教えてください。

新井:所得税の確定申告とは、1年間の所得とそれに対する税金の額を自ら計算して税務署に申告することです。毎年2月16日から3月15日にかけて申告と納税期間が設けられています。

――税理士さんにお願いした方が良いのでしょうか?

新井:税理士にお金を払って代行してもらうこともできますが、私のおすすめは確定申告ソフトを使って自分で簡単にやる方法です。最近のソフトは本当に優秀で、家計簿をつけるような感覚で帳簿の作成から決算書や申告書の作成、e-Taxによる電子申告まで一括でサポートしてくれます。

――個人事業主にとって確定申告は毎年のことですものね。

新井:その通りです。正確に楽にやる方法を見つけておくことが重要です。インボイス制度や消費税の申告にも対応しているソフトが多いので、将来的な事業拡大も見据えて準備しておくと良いでしょう。

独立する場合は健康保険・年金の切り替えを

――会社を辞めて個人事業主として独立をする場合の注意点はありますか?

新井:独立をする人は、健康保険や年金の種類が変わります。健康保険は国民健康保険に加入するか、または勤めていた会社の健康保険を任意継続することも可能です。

どちらがお得か検討が必要

新井:国民健康保険になると所得に応じて保険料が上がるため、どちらがいいかよく検討してみることが大切です。加えて業種によっては国民健康保険組合や商工会議所などの団体保険もあります。

――年金についてはいかがでしょうか?

新井:個人事業主は厚生年金ではなく国民年金に加入することになります。年金は2階建てにも例えられますが、国民年金は1階部分のみです。会社員と比べて将来受け取れる年金の額が減ってしまうため、iDeCoや国民年金基金などを活用してご自身で備えるという人も多いですね。

会社員のまま個人事業主になる意味

――改めて、なぜ会社員のまま個人事業主になることをおすすめされるのでしょうか?

新井:私が25年以上、延べ60,000人の会社員をサポートしてきて感じるのは、「いつでも会社を辞められる」という選択肢を持つことの価値です。リストラも怖くない、副業のまま続けても構わない、そんな人生の自由度と心のゆとりを手に入れることができます。

――実際に成功されている方も多いのでしょうか?

新井:想像以上に多くの会社員が「サラッと」起業しています。正社員だったり、派遣社員だったり、子育て中だったり、休職中だったり、日本全国各地、海外からも集まっている数百人の仲間たちは、皆、立場もバックグラウンドも違います。ですが、理想の働き方と稼ぐ力を手に入れるという想いは同じです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、25年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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