中小企業倒産32ヵ月連続増加の裏に隠された「3つの機会」とは?
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「リピート購入の仕組みを先に作るな」が鉄則
――新井さん、今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。起業業界でよく聞く「単発ビジネスはダメ! 継続課金モデルを作りましょう!」というアドバイスについて、先日の取材で真っ向から否定されていましたね。25年以上のキャリアで60,000人の会社員をサポートしてこられた新井さんから見て、なぜこのアドバイスが間違いなのでしょうか?
新井:順番が逆なんです、完全に。起業コンサルの9割が言っている話なんですけど、これって既に商品力がある人の話なんですよ。
――既に成功している人へのアドバイスということでしょうか?
新井:そういうことです。私が25年間見てきた中で、最初から継続課金がうまくいった人なんて、ほぼいません。なぜかって? お客さんはあなたの商品の価値をまだ知らないからです。
――確かに、商品の価値を知らない段階で継続課金は難しいですね。
新井:継続課金って、「毎月お金を払い続ける価値があるか?」を常に判断されている状態なんです。商品力が弱いうちに継続課金にしてしまうと、すぐに解約されて終わり。それよりもまずは単発で確実に価値を感じてもらう。「この人の商品、本当に良いな」「また何かあったらお願いしたいな」この感情を作ってから、継続したらお得になる提案をするのが正しい順番です。
成功者の「最初の1個」物語が教えてくれること
8カ月かけて初契約、そして涙の報告
――実際に、新井さんがサポートした方の事例があれば教えてください。
新井:起業18の会員さんで、人事コンサルをしているTさんの話をしましょう。今では月100万円以上の売上を安定してあげているのですが、最初の1件を取るまでに8カ月もかかっているんです。
――その間は何をされていたのでしょうか?
新井:無料相談を30社以上実施、提案書を100枚以上作成、断られ続けて価格を3回下げた、商品内容を5回以上見直した。もう、涙ぐましい努力ですよ。
――それでやっと1件目の契約が取れたと。
新井:そうなんです。やっと1件目の契約が取れた時、彼女はZOOMの向こう側で、涙を流して報告してくれました。「新井さん、やっと売れました! でも正直、赤字です...」って(笑)
――赤字でも嬉しい瞬間だったんですね。
新井:ここからが本当のスタートなんです。この最初のお客さまを徹底的に満足させることで、Tさんは「自分の商品の価値を本当の意味で理解できた」のです。これ、面白いでしょ? 自分で自分の価値がわかっていないんです。最初はそんなもの。
顧客から「継続してお願いしたい」と言われるまで
――その後の変化はどうでしたか?
新井:2件目、3件目と続いていき、今では顧客の方から「継続してお願いしたい」と言われるようになった。これがサブスクビジネスになっていったのです。決して最初から継続課金モデルを作ったわけではない。
――自然発生的にリピート購入の仕組みができあがったということですね。
新井:そうです。まずは目の前のお客さん1人を120%満足させることに全力を注ぐ。リピート購入の仕組みなんて、そんなの後回しですよ。
「継続課金」なんて甘すぎる
事業者にとって最高、顧客は嫌がるのが囲い込み
――多くの起業家が陥る失敗には、具体的にはどのようなものがありますか?
新井:「最初から月謝制にしよう」なんて考えている人は甘すぎます。月謝を払ってでも通いたいと思わせる価値を提供できますか? まだ商品すら完成していないのに、「継続課金モデル」だの「サブスクリプション」だの、耳当たりの良い言葉に踊らされている。
――現実は厳しいということですね。
新井:最初の購入で満足してもらえなければ、二度と買ってもらえない。だからこそ、最初の1個にすべてを注ぎ込む。これが王道です。
――「赤字になるの嫌だ」と思う人も多そうですが...
新井:最初のお客さんには、赤字でもいいから120%の価値を提供する! これって一見損に見えるかもしれないけど、最も効率的な投資です。
――「120%の価値」にはどのような意味があるのでしょうか?
新井:顧客の購買行動って、最初の体験で決まるんです。最初に良い印象を持てば、その後も期待を持って接してくれる。逆に最初でガッカリさせたら、もう二度とチャンスはありません。
――つまり、最初の1個こそが最重要ということですね。
新井:そうです。心理学でも証明されている現象ですね。最初の印象が、その後の関係性をすべて決定づける。だから最初の1個は、利益度外視で価値を提供するべきなのです。
60,000人を見てきて分かった「成功する順番」
失敗する人の共通点は「順番間違い」
――長年多くの起業志望者を見てこられて、成功する人と失敗する人の違いはどこにあるのでしょうか?
新井:起業で失敗する人の共通点は、順番を間違えることです。
- 継続課金モデルから始める(×)
- 単発商品で価値を証明してから継続提案(○)
――順番さえ守れば成功できるということでしょうか?
新井:これに限らずですけど、60,000人以上の起業志望者を見てきて、成功する人は様々な順番を守っている。逆に言えば、順番さえ間違えなければ大丈夫なことがほとんどです。需要→商品(○)、商品→需要探し(×)なんかが典型例ですね。
――今日は貴重なお話をありがとうございました!
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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