【アサーティブ21】「言いたいことが言える」が命を救う - コミュニケーションが変える高リスク職場の未来
起業家インタビュー(聞き手:新井一@起業18フォーラム)
今回は、MPS consulting代表でキャリア設計アドバイザーの井上明彦さんにお話を伺いました。多くの人が悩む「自分に向いている仕事って何だろう?」という問いについて、外からの評価と内なる声のズレから深く掘り下げていただきます。
"向いている仕事"への違和感―なぜ腑に落ちないのか?
MPS consulting代表 キャリア設計アドバイザー 井上明彦さんとは
自己分析代行とキャリア設計支援を通じて、個人の納得感ある進路選択をサポートしている。特に「自分らしいキャリア」の構築を重視し、表面的なスキルマッチングではなく、その人の価値観や内発的動機を軸としたキャリア支援を提供している。
「周りが決める"向いている"」への疑問
新井:井上さん、本日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。さっそくですが、キャリア相談を受けていて「自分に向いている仕事がわからない」という声をよく聞かれるのではないでしょうか?
井上:そうですね。本当に多くの方からそのご相談をいただきます。ただ、お話を伺っていると、「向いている」という言葉の捉え方に、ある種の違和感を持たれている方が多いのです。
新井:どのような違和感でしょうか?
井上:例えば「あなたは営業に向いているよ」と上司に言われたり、「この資格を取れば安定するから」と親に勧められたり。そうした他人からの評価や期待で「向いている仕事」を判断しようとするのですが、どこか腑に落ちないという感覚を持たれるのです。
新井:確かに、他人から見た「向いている」と、自分が感じる「やりたい」は違いますもんね。
井上:まさにそこなのです。周りからは「できているように見える」「成果も出ている」けれど、本人は「なんかモヤモヤする」「これでいいのかな?」という気持ちを抱えている。これって実は、とても自然な反応だと思うのです。
"向いている"の正体―外的評価と内的納得のズレ
新井:そのモヤモヤの正体って、何なんでしょうね?
井上:私は、外的な評価と内的な納得のズレだと考えています。他人の期待に応えることはできるかもしれませんが、それが必ずしも自分の心が本当に納得することとは限らないのですよね。
新井:なるほど。では、そのズレを埋めるにはどうすればいいのでしょうか?
井上:まず大切なのは、「心が本当に動いた瞬間」を思い出すことです。資格や経験、周りの評価とは関係なく、「あ、これ面白い」「もっとやってみたい」と自然に思った瞬間はきっとあるはずなのです。
新井:確かに、そういう瞬間ってありますね。でも見過ごしてしまいがちかも...
井上:そうなのです。日常の忙しさに追われて、自分の心の動きを見過ごしてしまう。だからこそ、意識的にその瞬間を言語化することが重要なのです。
心が動いた瞬間を言語化する―内発的欲求を見極める技術
「なぜその時、心が動いたのか?」を深掘りする
新井:具体的に、心が動いた瞬間をどうやって言語化すればいいのでしょうか?
井上:例えば、「プレゼンが上手くいって嬉しかった」という体験があったとします。そこで終わらずに、「なぜ嬉しかったのか?」を深掘りするんです。
- 資料作りで新しいアイデアを考えるのが楽しかった?
- 相手に伝わった瞬間が嬉しかった?
- チームで協力して作り上げるプロセスが充実していた?
- 相手の課題を解決できたという達成感があった?
新井:同じ「プレゼンが成功した」でも、何に心が動いたかは人それぞれですね。
井上:その通りです。そして、その背景にある内発的な欲求が見えてくるのです。「創造したい」「人とつながりたい」「課題を解決したい」など、その人らしい動機が浮かび上がってきます。
他人の評価に振り回されていた部分を手放す
新井:内発的な欲求がわかったら、次はどうすればいいでしょうか?
井上:ここが一番難しいところですが、他人からの評価に振り回されていた部分を手放す練習が必要です。「親が喜ぶから」「世間体がいいから」「安定しているから」といった外的な理由を一度横に置いてみる。
新井:それって勇気がいりそうですね...
井上:そうですね。でも、完全に手放す必要はないのです。大切なのは、自分の声をキャリアの中心に据えること。他人の期待も考慮しつつも、最終的な判断軸は自分の内なる声にする、という順番を整理することなのです。
新井:バランスの問題ということですね。
井上:はい。自分の心が「これはやりたい」と言っているときは、たとえ周りから「もったいない」と言われても、その声を信じる勇気を持つことが大切です。
自分の声をキャリアの中心に据える―確信への道筋
"向いている仕事"への確信はこうして生まれる
新井:自分の声を中心に据えることで、どのような変化が起こるのでしょうか?
井上:はじめて"向いている仕事"に確信を持てるようになるのです。それは「他人から見て向いている」ではなく、「自分の心が納得する仕事」への確信です。
新井:具体的にはどんな感覚なのでしょうか?
井上:「これをやっていると、時間を忘れる」「困難があっても、なぜかやり続けたくなる」「成果が出ても出なくても、プロセス自体に意味を感じる」といった感覚ですね。
新井:それは素晴らしい状態ですね。
井上:そして何より、「これで大丈夫」という安心感が生まれるのです。他人と比較して不安になることが減り、自分のペースで成長していけるようになります。
キャリア設計における「内なる声」の優先順位
新井:とはいえ、現実的には収入や将来性も考えなければいけませんよね?
井上:もちろんです。ただ、考慮する順番が大切なのです。まず自分の内なる声を明確にして、その上で現実的な条件を検討する。この順番を逆にしてしまうと、また「なんかモヤモヤする」状態に戻ってしまいます。
新井:順番が大事ということですね。
井上:そうです。自分の軸がしっかりしていれば、現実的な制約があっても「この方向で工夫しよう」「段階的にアプローチしよう」という前向きな発想が生まれます。軸がないまま現実だけ見ていると、どうしても受け身になってしまうのです。
実践編―今日からできる「自分の声」の見つけ方
心の動きを観察する習慣
新井:読者の方が今日からできることはありますか?
井上:はい。まずは「心の動きを観察する習慣」をつけることから始めてみてください。
- 今日一日で「面白いな」と思った瞬間はあったか?
- 逆に「なんか違うな」と感じた瞬間はあったか?
- 時間を忘れて没頭していたことはあったか?
- 人に話したくなるような出来事はあったか?
新井:日記のように記録するといいかもしれませんね。
井上:そうですね。そして週に一度、「なぜその時、そう感じたのか?」を振り返る時間を作ってみてください。最初は言語化が難しいかもしれませんが、続けるうちに自分のパターンが見えてきます。
小さな実験から始める
新井:内発的な欲求がわかったら、どう行動に移せばいいでしょうか?
井上:いきなり大きく変える必要はありません。小さな実験から始めることをお勧めします。例えば、「人とつながりたい」という欲求があるなら、まずは社内の勉強会に参加してみる、「創造したい」という欲求があるなら、業務の中で新しいアイデアを一つ提案してみる、といった具合です。
新井:リスクを抑えながら試してみるということですね。
井上:そうです。そして実験の結果を振り返って、「やっぱりこの方向が気持ちいい」「思っていたのと違った」という情報を集めていく。自分の声への確信は、こうした体験の積み重ねから生まれるのです。
対談を終えて―読者の皆さんへのメッセージ
「自分らしいキャリア」への第一歩
新井:井上さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。この記事を読んでくださっている皆さんにメッセージをお願いします。
井上:読者の皆さんには、まず「自分の心の声を大切にすることは、わがままではない」ということをお伝えしたいです。
新井:確かに、「自分勝手」だと思ってしまう方もいそうですね。
井上:そうなのです。でも、自分の心が納得するキャリアを歩んでいる人の方が、結果的に周りに良い影響を与えることが多いのです。無理をして他人の期待に応え続けるよりも、自分らしさを活かした方が、本当の意味で価値を提供できるからです。
新井:自分を大切にすることが、結果的に周りのためにもなるということですね。
井上:その通りです。そして、「完璧を求めなくていい」ということも大切です。内なる声を見つけるのも、それに従って行動するのも、時間がかかるプロセスです。小さな一歩から始めて、試行錯誤しながら進んでいけばいいんです。
迷いながらも前に進む勇気
新井:最後に、今まさに迷っている方へ一言お願いします。
井上:迷うことは悪いことではありません。迷いは、自分の心が「もっと自分らしい道があるはず」と教えてくれているサインなのです。
その迷いを大切にしながら、今日お話しした「心の動きを観察する」ところから始めてみてください。きっと、あなたの中にも「これだ」と思える何かが見つかるはずです。
そして、一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談することも大切です。MPS consultingでも、そうした皆さんのキャリア設計をお手伝いしていますので、いつでもお気軽にご相談ください。
新井:井上さん、本日は本当にありがとうございました!
井上:こちらこそ、ありがとうございました!
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