会社員の起業は「儲かる起業アイデアランキング」を見てはいけない理由|嫌われ仕事こそ穴場ビジネスの宝庫
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
副業がバレるのはなぜ? 住民税の仕組みを理解しよう
――新井さん、今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。起業18フォーラムでは「会社員のまま起業」を推進されていますが、多くの方が心配されるのが「会社にバレるのでは?」という点だと思います。まず、副業が知られてしまう仕組みについて教えていただけますでしょうか?
新井:ありがとうございます。確かにそのご質問は非常に多いですね。実は副業がバレる最大の原因は住民税なんです。多くの方がご存じないのですが、副業で収入を得ると、その分の住民税が本業の会社に通知されてしまうんです。
――具体的にはどのような仕組みになっているのでしょうか?
新井:例えば、あなたが副業でアルバイトをしたとします。そのアルバイト先は市町村に「給与支払報告書」を提出するんですね。すると、本業の給料とアルバイトの給料が合算されて住民税が計算され、その通知が本業の会社に届くわけです。経営者の方なら「あれ? この社員、給料の割に住民税が高いな」と気づいてしまうということです。
20万円の壁は本当? 知られざる住民税申告の落とし穴
――よく「副業の所得が20万円以下なら申告不要」と聞きますが、これは本当でしょうか?
新井:これは多くの方が誤解されている点ですね。確かに20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。しかし、住民税の申告は別途必要なんです。つまり、20万円以下でも住民税が発生すれば、その通知が会社に届く可能性があるということです。
――それでは、完全にバレないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
新井:重要なポイントは確定申告書の「住民税の徴収方法」という欄です。ここで「自分で納付」を選択することで、副業分の住民税は自分で直接納付することができ、会社には通知されません。ただし、市町村によっては手続きが不十分な場合があるので、申告後に念のため市町村に電話で確認することをお勧めします。
社会保険料の落とし穴にも要注意
新井:もう1つ注意が必要なのは社会保険料です。副業のアルバイトで年間130万円以上稼いでしまうと、そちらでも社会保険の加入が必要になり、2つの会社で社会保険料が合算される手続きが行われます。これは確実にバレてしまいますね。
起業18フォーラムが推奨する「会社員のまま起業」の実践法
――新井さんが提唱される「会社員のまま起業」は、こういった税務リスクを回避しながら事業を始めるということでしょうか?
新井:まさにその通りです。私たちが推奨しているのは、アルバイトではない起業(個人事業)です。誰かに雇われるのではなく、副業であっても自分が事業主になることを目指していきます。小さく始めて、税務上の問題をクリアしながら段階的に成長させていく方法です。
――具体的にはどのような方法で始めるのでしょうか?
新井:例えば、以下のような流れで進めていきます。
- 最初の3カ月:スキルアップと市場調査(収入ゼロでも問題なし)
- 4〜6カ月目:小さな案件を受注し、月5〜10万円程度の収入を目指す
- 7〜1年目:安定して月20万円程度稼げる仕組みを構築
- 1年半後:独立するか副業継続するかを選択
この方法なら、最初の段階では住民税の問題も発生しませんし、徐々に収入が増えてきた段階で適切な税務処理を行えます。
成功事例:ITエンジニアのAさんのケース
新井:実際の成功事例をご紹介しましょう。起業18フォーラムのメンバーであるITエンジニアのAさんは、会社員をしながらWebサイト制作の副業を始めました。最初の半年は勉強期間として収入ゼロ、その後徐々に案件を受注し、現在では月30万円の安定収入を得ています。
――税務処理はどのように行われたのでしょうか?
新井:Aさんの場合、フリーランス(個人事業)で年間所得が20万円を超えた時点で確定申告を行い、「自分で納付」を選択しました。社会保険は本業の会社で支払っています。現在も本業を続けながら、将来的な独立の選択肢を持った状態で活動されています。
副業から起業への正しいステップアップ方法
――副業から本格的な起業へステップアップする際の注意点はありますか?
新井:最も重要なのは段階的な移行です。いきなり会社を辞めるのではなく、副業収入が本業収入を上回り、かつ安定してから独立を検討することをお勧めします。
独立のタイミングを見極める3つの指標
新井:私たちが推奨している独立の判断基準は以下の通りです。
- 副業収入が本業収入の1.5倍以上で、3カ月以上継続している
- 6カ月分の生活費を貯蓄できている
- 家族の理解と同意を得られている
これらの条件が揃って初めて、安心して独立できると考えています。
――税務上の手続きで、独立時に注意すべき点はありますか?
新井:独立時には個人事業主の開業届を提出し、青色申告の承認申請も同時に行うことをお勧めします。これにより、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができ、大幅な節税効果が期待できます。
よくある失敗パターンと対策
――起業準備を進める中で、よくある失敗パターンはありますか?
新井:最も多いのは情報収集ばかりして行動しないパターンですね。YouTubeやブログで情報を集めることに満足してしまい、実際に手を動かさない。起業18フォーラムでは、「まず小さく始める」ことを徹底的にサポートしています。
税務処理を後回しにするリスク
新井:もう1つ危険なのが、税務処理を後回しにすることです。「まだ少ししか稼いでいないから」と確定申告を怠ると、後で大きな問題になることがあります。少額でも適切な処理を行うことが重要です。
――新井さんのフォーラムでは、そういった税務面のサポートも行っているのでしょうか?
新井:私は税理士ではないので直接サポートすることはできません。もちろん一般論はお答えできますが、わからないことがあればメンバーさん各自で青色申告会や税務署に直接聞いてもらうことが一番確実ですので、そのようにしてもらっています。起業家として当たり前の行動ですから。ただ実際、難しいことなんてほとんどありません。きちんと払うというスタンスであれば、何も心配することはありません。
2025年、会社員起業の新しい時代へ
――最後に、これから副業・起業を考えている会社員の方へメッセージをお願いします。
新井:現在、大企業では副業が解禁される流れがあり、「会社員のまま起業」という選択肢がより現実的になっています。ただし、正しい知識と段階的なアプローチが不可欠です。
起業18フォーラムでは、延べ60,000人の会社員の起業をサポートしてきました。その経験から言えるのは、準備をしっかり行い、リスクを最小限に抑えながら進めれば、誰でも「稼ぐ力」を身に付けることができるということです。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。皆さんが自分らしい働き方と稼ぎ方を見つけられることを心から願っています。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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