会社員のまま起業準備を始めたい人が陥る「情報収集の罠」とは? 起業支援25年のプロが明かす、リスクゼロで始める起業準備の新常識
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
AIブームに警鐘を鳴らす起業支援のプロ
――新井さん、最近はChatGPTやClaude等のAIツールを使って起業アイデアを考える方が増えていますが、この現象についてどう思われますか?
新井さん:確かにAIは便利ですし、短時間で大量のアイデアを生成してくれます。でも、はっきり申し上げると、AIが出すアイデアで成功する起業家は、ほぼいません。25年間で6万人を超える起業希望者を見てきた結論として、AIに頼った起業アイデアでは「血の通った商品」は絶対に作れないんです。
――それは興味深いご指摘ですね。なぜAIのアイデアではダメなのでしょうか?
新井さん:本当にヒットする起業アイデアは「現場の不満」「消費者の本音」「業界の常識への疑問」から生まれるからです。これらは全て、あなた自身が実際に体験し、感じ、悩んだからこそ見えてくるものなんです。
実際のヒット商品を見てください。ティファールの電気ケトルは「お湯を沸かしすぎる不安」から、サラダチキンは「売れ残りの胸肉をなんとかしたい」という現場の切実さから生まれました。これってAIには絶対に見えない「リアルな悩み」ですよね?
体験こそが最強の武器になる
――確かに、AIには「体験」がないということですね。
新井さん:その通りです。例えば、あなたが毎朝の通勤で感じるイライラ。満員電車でスマホが見にくい、コンビニで同じものばかり買ってしまう、上司との微妙な距離感...こういう「あるある」な悩みこそが、実は宝の山なんです。
起業18フォーラムメンバーで大成功したAさんは、会社のデスクワークで肩こりに悩んでいました。市販のクッションを色々試しても、どれもしっくりこない。そこで自分でオリジナルクッションを作ったところ、同僚から「それ、どこで買えるの?!」と大反響。今では年商3000万円の会社を経営されています。
――すごいですね! これ、AIに「肩こり解決商品のアイデア考えて」って言って出てくる内容とは全然違いそうです。
新井さん:まさにそこなんです! AIには「体験」がないので、どうしても表面的で、どこかで聞いたことがあるような内容ばかりになってしまうんです。
常識を疑う目は人間にしか持てない
――新井さんがおっしゃる「現場感覚」を身につけるには、どうすればよいでしょうか?
新井さん:まず大切なのは「常識」を疑う目を持つことです。ヒット商品の法則を研究していると、面白いことに気づきます。多くの成功商品が「業界の常識」を無視して生まれているんです。
サラダチキンがまさにそうでした。鶏肉業界では「皮がついてる方が美味しい」が常識だったんです。でも、皮を取ることで40%もカロリーをカットし、健康志向の消費者にバカ売れしました。
――「常識って本当?」という疑問を持つことが大切なんですね。
新井さん:この疑問を持てるのは、その業界で実際に働いている人だけです。AIは過去のデータを学習しているので、むしろ「常識」を強化する方向に働きがちなんです。
あなたの働いている業界にも、絶対に「なんでこうなってるんだろう?」って思うことがありますよね? それこそが起業アイデアの種なんです。
時代の空気を読む力が成功の鍵
――タイミングも重要な要素なのでしょうか?
新井さん:とても重要です。成功する起業家に共通するのが「時代の空気を読む力」です。
LINEが爆発的にヒットしたのは、東日本大震災の直後でした。既存の連絡手段に不安を感じていた人々のニーズと、LINEのリリースタイミングが完璧に合致したんです。半年遅れていたら、ここまでのヒットはなかったと言われています。
この「今だ!」という感覚は、AIには絶対に持てません。なぜなら、時代の空気って数値化できないからです。
――確かに、そういう微細な変化を感じ取るのは人間ならではですね。
新井さん:電車の中の人々の表情、コンビニで手に取られる商品の変化、同僚との会話の内容...こういう微細な変化を敏感に感じ取れるのは、実際にその場にいる人間だけです。
私が起業支援をしていて感じるのは、成功する人ほど「あ、なんか最近みんなこれに困ってるよね」という気づきが早いんです。それも、統計データではなく、肌感覚で感じ取っているんです。
観察力を鍛える具体的な方法
――具体的に、どうすれば起業アイデアを見つける力が身につくのでしょうか?
新井さん:まず大切なのは「観察力」を鍛えることです。私がお勧めしている方法があります。
日常の「イライラ」をメモする
新井さん:通勤中、仕事中、プライベートで感じる小さなストレスを全部書き出してください。1週間続けると、パターンが見えてきます。これが起業アイデアの原石になるんです。
同僚の愚痴を真剣に聞く
新井さん:「うちの会社のこのシステム、使いにくいよね」「この作業、毎回面倒なんだよな」。こういう何気ない愚痴の中に、ビジネスチャンスが隠れています。
業界の「当たり前」を疑う
新井さん:「なんでこの業界では、こうやるのが普通なんだろう?」「顧客は本当にこれで満足してるのかな?」この疑問こそが、イノベーションの第一歩です。
――なるほど、日常の中にヒントがたくさんありそうですね。
「好き」という感情の重要性
――起業において、感情面も大切なのでしょうか?
新井さん:実は「好き」も重要な要素なんです。副業で、自分の得意なことをやってあげることをサービスにしている人がたくさんいますが、ここで大切なのは「好き」という感情です。
AIは論理的に最適解を出すのは得意ですが、「ワクワクする」「楽しい」という感情は理解できません。起業18フォーラムで成功している人たちの共通点は、みんな自分の事業を心から楽しんでいることです。
――楽しさが継続の原動力になるんですね。
新井さん:朝起きるのが楽しみで、お客さんのことを考えるとワクワクして、改善アイデアが次々湧いてくる...この「楽しさ」は絶対にAIには真似できません。そして、この楽しさがあるからこそ、困難な時期も乗り越えられるんです。
AIとの正しい付き合い方
――最後に、AIとはどう付き合っていけばよいでしょうか?
新井さん:誤解しないでほしいのですが、AIを全否定しているわけではありません。リサーチや情報整理、プレゼン資料作成など、AIが得意な分野では大いに活用すべきです。
でも、起業アイデアの「核」の部分は、絶対に人間が考えるべきです。あなたの経験、感情、直感、現場での気づき...これらは誰にも真似できない、あなただけの宝物です。その宝物を磨き上げることで、本当に価値のある事業が生まれるんです。
――今日から実践できることはありますか?
新井さん:今日から始めてください。スマホのメモアプリに「気づき」フォルダを作って、毎日小さな発見を記録していく。半年後、そこには誰も思いつかないような起業アイデアの種が、たくさん詰まっているはずです。
AIに頼らず、自分の感覚を信じて前に進みましょう!
――貴重なお話をありがとうございました。現場感覚の大切さがよく分かりました。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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