会社員の起業成功の秘訣は「手放す力」| 起業18フォーラム代表・新井一氏に聞く、時間とビジネスを両立させる思考法
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「起業したい」と「起業する」の間にある深い溝
会社員のまま始める起業準備を支援する専門家 新井一氏
「いつかは起業したい」
「自分のビジネスを持ちたい」
そんな想いを抱く大人は数多くいますが、実際に行動に移し、継続できる人はごくわずか。起業セミナーに参加したり、ビジネス書を読んだりしても、結局は会社員のまま時間だけが過ぎていく……そんな現実に直面している人も多いのではないでしょうか。
今回は、1万件以上の起業相談を受け、多くの会社員の独立を支援してきた「起業18フォーラム」代表の新井一さんに、なぜ起業したいと言っている大人の殆んどが挫折してしまうのかについて、率直にお話を伺いました。
理想と現実のギャップに打ちのめされる人たち
新井さん、今日はよろしくお願いします。単刀直入にお聞きしますが、起業したいと言っている大人の9割が挫折してしまう、その最大の理由は何だと思われますか?
新井:よろしくお願いします。これは本当に切実な問題ですね。私は行政でも起業支援をしていますが、「起業したいんです!」と熱く語る方がたくさんいらっしゃる一方で、残念ながら多くの方が途中で諦めてしまいます。ですので、私が主催する起業18フォーラムでは、いかに継続して取り組んでもらえるかの環境づくりに力を入れています。
どういう理由で皆さん諦めていかれるのでしょうか?
新井:最大の理由は、現実を知らずに理想だけで突き進もうとすることだと思います。
具体的にはどういうことでしょうか?
新井:例えば、「好きなことで起業すればすぐに稼げる」とか「アイデアさえあれば成功できる」といった幻想を抱いている方が非常に多いですね。でも実際は、起業って地味で泥臭い作業の連続なんですよ。市場調査、競合分析、商品開発、集客、営業、経理……やることは山ほどあります。華やかなイメージとのギャップに、多くの人が心折れてしまうんです。
「完璧主義」という名の足かせ
他にも挫折の要因はありますか?
新井:ええ、もうひとつ大きな要因は完璧主義ですね。「完璧な事業計画を作ってから」「十分な資金を貯めてから」「すべての準備が整ってから」と言って、いつまでも行動に移さない人が本当に多いです。
確かに、準備は大切ですが……
新井:もちろん準備は必要です。でも、完璧を求めすぎると永遠にスタートできません。私がいつもお伝えしているのは、「20点でいいからまず始めよう」ということです。走りながら修正していけばいいんです。実際、成功している起業家の多くは、見切り発車で始めて、試行錯誤を重ねながら事業を軌道に乗せています。
周囲の「ドリームキラー」に負けてしまう
なるほど。他にも何か要因はありますか?
新井:これも深刻な問題なのですが、周囲のドリームキラーの存在ですね。家族や友人、同僚から「そんなの無理だよ」「失敗したらどうするの?」「会社員でいる方が安全だよ」と言われ続けると、だんだん自信を失ってしまうんです。
周囲の反対は確かに辛いですよね……
新井:特に日本は「出る杭は打たれる」文化が強いですからね。でも大切なのは、誰の人生を生きているのかということです。他人の価値観に振り回されて、自分の夢を諦めてしまうのは本当にもったいない。私たちのフォーラムでは、同じ志を持つ仲間との交流を大切にしています。お互いに励まし合える環境があると、ドリームキラーの言葉にも負けない強さが生まれるんです。
挫折から抜け出すための3つの突破法
1.「小さく始める」ことの威力
では、こうした挫折要因を乗り越えるにはどうすればいいのでしょうか?
新井:まず第一に、小さく始めることです。いきなり会社を辞めて大きな事業を立ち上げようとするから挫折するんです。朝晩30分、休日の2~3時間から始めればいい。例えば、まずは副業レベルで月5万円を稼ぐことを目標にする。それができたら10万円、20万円と段階的に拡大していく。このスモールステップが成功の秘訣です。
具体的にはどんなことから始めればいいでしょうか?
新井:まずは自分の経験を棚卸しすることから始めましょう。今まで当たり前にやってきたことが、実は他の人にとって価値のあるものかもしれません。例えば、営業経験があるなら営業代行サービス、人事経験があるなら採用コンサルティング、子育て経験があるなら育児相談……。特別なスキルなんて必要ありません。あなたの経験そのものが商品になるんです。
2.「仲間」という最強の武器
小さく始めることは分かりました。他にはどんなことが重要でしょうか?
新井:仲間の存在は本当に重要ですね。一人で起業準備をしていると、どうしても孤独感に襲われたり、不安になったりします。でも、同じ目標を持つ仲間がいれば、お互いに励まし合い、情報交換もできます。私たちのフォーラムでも、参加者同士が刺激し合って、みなさん想像以上の成果を上げています。
仲間はどうやって見つければいいでしょうか?
新井:起業セミナーや勉強会に参加することですね。最近はオンラインのコミュニティも充実しています。大切なのは、行動している人たちと付き合うということです。「いつかやりたい」と言っているだけの人ばかりといても、お互いの愚痴大会になってしまいますから(笑)。
3.「継続」するための仕組みづくり
最後に、継続するためのコツはありますか?
新井:これが一番重要かもしれませんが、習慣化することです。毎日少しずつでもいいから、起業に向けた行動を継続する。そのためには、無理のない範囲で「仕組み」を作ることが大切です。例えば、毎朝30分早く起きてブログを書く、通勤時間に業界情報をチェックする、週末の2時間はビジネスの勉強をする……。
なるほど、小さな習慣の積み重ねが大きな結果につながるということですね。
新井:その通りです。起業は一発逆転のギャンブルじゃありません。地道な努力の積み重ねです。でも、それができれば必ず道は開けます。私がサポートしてきた1000人以上の方々がそれを証明してくれています。
挫折は「成長のプロセス」と捉える
最後に、これから起業を目指す大人たちにメッセージをお願いします。
新井:挫折を恐れる必要はありません。むしろ、挫折は成長のプロセスだと捉えてください。大切なのは、諦めずに続けることです。私自身も何度も失敗を重ねながら今があります。40代、50代からの起業は決して遅くありません。これまでの経験という「武器」があるじゃないですか。それを活かして、ぜひ新しいチャレンジを始めてほしいと思います。
新井さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。一人でも多くの方が、自分らしい働き方を見つけられることを願っています。
編集後記
新井さんのお話を聞いて、起業で挫折する人の多くが「理想と現実のギャップ」「完璧主義」「周囲の反対」という3つの壁にぶつかっていることがよく分かりました。しかし、それらは決して乗り越えられない壁ではなく、適切なアプローチと仲間の支えがあれば必ず突破できるものです。
特に印象的だったのは、「20点でいいからまず始めよう」という言葉。完璧を求めて何も始められない人と、不完全でも行動を起こす人。その差が、挫折と成功を分ける大きな要因なのかもしれません。





