【MPS consulting】"向いている仕事"の正体とは何か ─ 他人の期待と自分の心の声
起業家インタビュー(聞き手:新井一@起業18フォーラム)
はじめに:書くことの楽しさを、もっと多くの人へ
新井:本日は、「書く旅」代表の天木和(あまきなごむ)さんにお越しいただき、誠にありがとうございます。今回の対談では、「誰でも気軽に小説を書ける方法はある」というメインテーマについて、天木さんのご見解を深くお伺いできればと考えております。
「書く旅」代表 天木和(あまきなごむ)氏
天木さんは、2005年に堺自由都市文学賞堺市長特別賞を受賞され、長年にわたり小説執筆を続けられていらっしゃいます。また、「心を豊かにする文章表現アドバイザー」として、電子出版やストーリーライティングのセミナー講師、さらには出版プロデューサーとして20冊以上の実績をお持ちとのこと。その多岐にわたるご活動から、書くことへの深い洞察が期待されます。どうぞよろしくお願いいたします。
天木:新井さん、本日はお招きいただき、ありがとうございます。「書く旅」代表の天木和と申します。書くことの楽しさや、それが人生にもたらす豊かさについて、今日はお話しできることを楽しみにしております。
私自身、15年以上にわたり小説を書き続けてきましたが、かつては文学賞に応募しては落選を繰り返すばかりで、うまくいかない時期も経験しました。そうした経験を経て、「文章を書くことは自己肯定感を高め、人生を豊かにすることにもつながる」ということに気づき、「心を豊かにする文章表現アドバイザー」として活動を始めるに至りました。
「草生説」の誕生:あなたの日常が物語になる
「草生説」とは? そのユニークなネーミングの由来
新井:天木さんが提唱されている「草生説(くさしょうせつ)」という言葉は、非常にユニークで興味を引かれます。一般的に「草生」と聞くと、農業の「草生栽培」や、学術的な「説」を連想する方もいらっしゃるかもしれませんが、天木さんの「草生説」は、それらとは全く異なるものですよね? その由来について、詳しく教えていただけますでしょうか?
天木:はい、おっしゃる通りです。私の提唱する「草生説(くさしょうせつ)」は、インターネットスラングの「w」マークが草に似ていることから、「笑える=草生える」と表現するネットスラングに由来しています。つまり、「笑える話」を小説として書くことを指しているんです。そして、笑える話を書く作家を「草生やす作家」と名付けました。
さらに、「草が生える=芽が出る」というイメージも込められており、新しいことを始める、成長していくといったポジティブなニュアンスも持たせています。これは、笑い話が好きな人が集い、みんなで「草の生える=笑える」小説を書いて楽しみながら、発信していくコミュニティのコンセプトでもあります。
プロの作家を目指すというよりも、ヘタクソでも面白く、楽しめる小説を気軽に書くことを大切にしています。
体験を起点に物語を紡ぐ「草生説」の魅力と効果
新井:なるほど、非常に親しみやすく、かつ奥深いネーミングですね。「草生説」のスタンスとして、「自分の身に起きたことを書くこと」や「体験を起点に物語を展開すること」を挙げられています。なぜ、ご自身の体験を書くことが、小説という形に繋がり、読者にも価値を提供できるのでしょうか?
天木:それは、私自身の経験からも強く感じることなのですが、「文章を書くことは自己肯定感を高め、人生を豊かにすることにつながる」からです。小説というと、何か特別な才能が必要で、壮大な物語をゼロから生み出さなければならない、と構えてしまう方が多いですよね。
でも、「草生説」では、そういったハードルは一切ありません。ごくありふれた日常の出来事や、自分が体験した面白いエピソードを、ユニークな視点から描くことで、それが立派な物語になるんです。
「草生説」は、作家や文学賞を本気で目指している方には、もしかしたら向かないかもしれません。しかし、文章を書くのが好きな方、とにかく笑える話が好きな方、小説に興味はあるけれど書いたことがない方、あるいはかつて作家を目指して諦めてしまった方にこそ、ぜひ挑戦していただきたいと考えています。
自分の体験を文字にすることで、客観的に自分を見つめ直すことができたり、普段見過ごしていた日常の面白さに気づけたりします。そして、それを誰かに読んでもらい、「面白かった」「笑ったよ」という反応をもらうことで、大きな喜びと自己肯定感を得られるんです。毎日楽しく書き続けていくための秘訣も、コミュニティで共有しています。
生成AIが拓く、小説創作の新たな地平
AIは「表現のバリエーション」を無限に提供するツール
新井:ご自身の体験を書くことの価値、大変よく理解できました。そして、天木さんは、もう1つの重要な要素として「生成AIの活用」を挙げられています。芥川賞作家の方がAIを活用した小説を発表された事例などもあり、生成AIが小説創作に与える影響については、様々な議論がなされていますが、天木さんはどのようにお考えですか?
天木:生成AIが普及した現代において、創作のあり方は大きく変わりつつあると認識しています。以前は、誰かに何かメッセージを伝えたいと思った時、そのメッセージを表現するための具体的な言葉や文章を、細部に至るまで全て自分で生み出す必要がありました。
しかし、今やAIに伝えたいメッセージを入力すれば、それを表現するための多様なバリエーションをAIがいくらでも生成してくれる時代です。
この変化により、人間の創作における価値は、表現の細部を全て作り込むことではなく、「何を伝えたいのか」というメッセージを考案すること、そしてAIが生成した数多くの表現の中から、自分の意図に最も合うものを「選択し、確認し、修正して採用する」という役割に集中していくと考えています。
AIは、人間の創造性を奪うものではなく、むしろ人間の「意思決定」や「方向付け」の重要性を高め、創作の可能性を無限に広げてくれる強力なツールであると捉えています。
AI時代だからこそ際立つ「血の通った」文章の価値
新井:AIが表現のバリエーションを提供し、人間が選択・決定するという役割分担は、非常に興味深いですね。一方で、AIが書く文章と、人間が書く文章の間には、どのような違いがあるのでしょうか? AIの文章の精度が高まる中で、それでもなお人間が書く文章が持つ「価値」とは何だとお考えですか?
天木:確かに、ChatGPTのような生成AIは、文法的にも正しく、論理的で整然とした文章を瞬時に生成できるようになりました。しかし、それらの文章には、どこか物足りなさを感じることが少なくありません。まるで「優等生が書いたお行儀のいい文章」のようで、読者の心をつかむことができず、読み終えても何も心に残らない、ということがしばしば起こります。
ファンを増やし、読者の興味を惹きつけ、心をつかむ本を作るためには、生成AIの無味乾燥な文章だけでは不十分です。そこには、人間の「体験と想いを込めた『血の通った』文章」が必要なのです。
例えば、私の「書く旅」で執筆代行をご依頼いただく際にも、クライアントの方には、具体的な失敗談や日常のエピソードも含め、ありったけの情報を共有していただくようお願いしています。なぜこの本を書きたいのか、読者にどうなってほしいのか、といった熱い想いをライターに伝えていただくことで、ライターはクライアントの想いを受け取り、それを最高の形に仕上げる「職人」のような存在として機能します。
生成AIが普及した時代だからこそ、人間の生の想いと経験が持つ価値は、より一層際立っていると強く感じています。
AIを創作パートナーとして活用する具体例
新井:人間の「体験と想い」の重要性、深く納得いたしました。では、具体的に、小説創作においてAIはどのように「パートナー」として活用できるのでしょうか? その具体的な方法について教えていただけますか?
天木:はい、AIはあくまで人間の創作を支援するツールとして、様々な場面で活用できます。
- プロット作成の補助:物語のアイデアが浮かばなかったり、途中で行き詰まったりした際に、AIにキーワードや設定を入力することで、プロットのヒントや展開案を提案してもらえます。AIが生成したものをそのまま使うのではなく、ご自身のアイデアと組み合わせることで、よりオリジナリティの高い作品を生み出すことができます。
- キャラクター設定の深掘り:AIにキャラクターの基本的な性格や背景を入力すると、その人物の行動動機やエピソード、さらには成長の可能性まで提案してくれます。AIの提案を参考に、新たな視点やアイデアが生まれ、キャラクターの魅力を一層高めることが可能です。
- 文章表現の幅を広げる:特定のシーンや感情を表現したい時、AIにその状況を伝えると、多様な表現方法や語彙、文体を提示してくれます。これを参考にすることで、ご自身の文章表現の幅を広げ、新しい表現技法を学ぶきっかけにもなります。
- 校正・推敲の効率化:執筆後の誤字脱字のチェックや、より良い表現への改善において、AIは非常に効率的なサポートを提供します。人間では見落としがちな細かい部分も補完してくれるため、作品の完成度を高める手助けとなります。
このようにAIを創作の各段階で活用することで、技術的な障壁が劇的に低減され、素晴らしいアイデアや心に残る体験を持つ人々が、技術的な不安に囚われることなく「書く」という行為に容易に踏み出せるようになります。
書く旅が目指す未来:誰もが「草生やす作家」になれる社会
「草生説を書こう」コミュニティの展望
新井:AIを賢く活用することで、創作の可能性が大きく広がることがよく分かりました。天木さんは、この「誰でも気軽に小説を書ける」という理念を具体的に実現するために、「草生説を書こう」というコミュニティを主宰されていらっしゃいますね。このコミュニティでは、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?
天木:はい、「草生説を書こう」は、笑い話が好きな人が集い、みんなで「草の生える=笑える」小説を書いて楽しみ、それを発信していくことを目的としたメンバーシップコミュニティです。活動は基本的にオンラインサービスでのコミュニケーションと情報交換がメインですので、全国どこからでもご参加いただけます。
主な活動内容としては、「草生説」の執筆・投稿はもちろん、メンバーが書いた作品をまとめた共同出版も検討しています。また、草生説の書き方アドバイスや、執筆の裏話、制作秘話などを共有するオンライントークなども毎月1、2回実施しています。
このコミュニティのコンセプトは、「小説のスキルに関わらず、みんながハッピーに笑える『草生説』を書いて、人生を明るく楽しむこと」です。そのため、コミュニティ内では常にポジティブな雰囲気を保ち、お互いを尊重し、建設的なフィードバックを心がけることを大切にしています。
読者へのメッセージ:書くことの第一歩を踏み出すために
新井:天木さんの活動は、書くことの新たな可能性を広げ、多くの人々に創作の喜びをもたらすものだと感じました。最後に、これから小説を書いてみたいと思っている方や、書くことに興味があるけれど一歩が踏み出せないでいる方へ、メッセージをお願いいたします。
天木:書くことは、決して特別な才能を持つ人だけのものではありません。まずは、ご自身の身に起きたこと、日常の中で「クスッと笑えるな」「これは面白いな」と感じた出来事を、気軽に書き始めてみてください。それが「草生説」の第一歩になります。
文章を書くという行為は、自己肯定感を高め、人生をより豊かにする素晴らしい力を持っています。私自身、長年の執筆経験を通じて、そのことを実感してきました。書くことで、ご自身の内面と向き合い、新たな発見があるかもしれません。そして、それを誰かと共有することで、きっと新たなつながりや喜びが生まれるはずです。
「書く旅」や「草生説を書こう」コミュニティは、皆さんがその第一歩を踏み出し、安心して楽しく創作を続けられるための場所です。もし少しでもご興味をお持ちいただけましたら、オンラインでの無料相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。皆さんと一緒に、書くことの楽しさを分かち合えることを心から願っております。
結論
今回の天木さんとの対談を通じて、「誰でも気軽に小説を書ける方法」が、単なる技術論に留まらない、より深い意味を持つことが明らかになりました。
天木さんが提唱する「草生説」は、日常の体験を起点に「笑える」物語を紡ぐという、誰もが親しみやすい創作の形を提示しています。これは、書くことの目的を、外部からの評価ではなく、自己肯定感の向上や人生の豊かさといった内面的な充足へと転換させるものです。
さらに、生成AIの活用は、この「誰でも気軽に書ける」という理念を技術的に強力に後押しする可能性を秘めています。AIが技術的な障壁を低減する「創作パートナー」として機能し、これまで文章力に自信がなかった人々が創作へと踏み出す大きな扉を開きます。
一方で、AIが論理的で整然とした文章を生成できても、読者の心をつかむ「血の通った」文章には、人間の「体験と想い」が不可欠であるという指摘は、AI時代における人間の創造性の本質的な価値を再認識させるものです。
書くことは、特別な才能や訓練を必要とするものではなく、誰もが持つ「体験」と「想い」から始まる、身近で豊かな自己表現の手段である。このメッセージは、現代社会において、多くの人々に新たな自己発見と心の豊かさをもたらす可能性を秘めていると言えるでしょう。
天木和さんの「書く旅」はこちら





