法人記念品の王道アイテムは?昭和の終わりに誕生していた賜物
この時代に求められるアナグロな優しさとぬくもり。不思議な人気の記念品「前編」
「本革製ペンケース」編
今、どうしてこれが人気なの?
PCを初めとするデジタルツールが当たり前の日常の中、今どうしてこれが人気なの?という法人記念品の人気アイテムがいくつかあります。アナログ感の強いアイテムの中で、今回は「本革製ペンケース」をピックアップし、その「どうして?」を考えてまいります。
ペンケースはファスナー付き横型の、シンプルで実にノーマルなカタチ。ペンが何本も入ります。今この時代に、日々のデスクワークでペンを何本も使うのでしょうか。
マウスパッドやスマホ置きとしての機能を持つウォッチトレーの需要は分かるのですが、ペンケースはどうしても必需品とは思えないアイテム。なのに今ここに来て、どうして今さらペンケースなのでしょうか。
この時代にペンが何本も必要?
ある日、記念品で本革製ペンケースをオーダーされた企業の担当者様に「ペンは何本くらいお入れになりますか?」とお尋ねしたことがあります。最低4~5本は入れるご予定とのお返事でした。
また、ある企業の女性管理職の方と打ち合わせの際、ペンケースにはお気に入りのブランドペン以外に、優しいピンクや黄色などマイルドな蛍光ペンを収納されていることがわかりました。
蛍光ペンといえば昔はビビットな色が主流。暗記をしなくてはならない教科書の文言にカラフルなラインを引いて、必死に勉強した記憶が蘇る方も多いのではないでしょうか。
なぜ、デジタル全盛の今、わざわざペンを複数持ち歩くのか?
この矛盾は、現代のビジネスパーソンが抱える知的な渇望を表しているようにも捉えられます。法人記念品でペンケースの需要が尽きないワケと直結する、非常に興味深いテーマです。
思考を整える思考の道具
デジタルデバイスに囲まれる中で、お気に入りの一本を取り出す瞬間。
ペンを取りだして書くということは、情報のノイズが遮断され情報ベースの世界観から自分の思考を中心とした「創造の世界」に移行します。
つまりペンケースは単なる収納具ではなく、雑多な日常から自分の思考をベースに「書く」というクリエイティブな行動に移行するための、スイッチを切り替える役割があるのです。
それは、氾濫する情報から離れ、自分の思考とだけ向き合う静かな空間を手にする意味を持つのかもしれません。ペンケースはそのための道具箱であり、カッコよく表すなら「自分の思考を整えるための小さな書斎」でしょうか。
自分軸の時間と可能性と選択
たとえ数分でも手帳に次週の予定を書き込む時間。たとえ一瞬でもアポイントの日時にチェックを入れる時間。それは間違いなく誰にも何にも邪魔されることのない自分軸の大切な瞬間です。そして、ペン類を複数持つことは、自分の思考の可能性を信じているという姿勢の表れともいえるのです。
マルチタスクを物理的に収納するデジタル画面は一つですが、ペンケースの中には役割の異なる思考の道具が複数そろっています。
例えば、事実を淡々と記すボールペン、アイデアを構造化するための5色ペン、気持ちを表現するための万年筆など。デジタルが統合ならペンケースは仕分けの道具箱。また、ペンを選ぶという行為そのものが、今から取り組む仕事の質や趣を脳に宣言するスイッチになっているといっても過言ではないでしょう。
濡れ落ちるアイディアを掬う
ペンやペンケースを携行するのは、いつ訪れるかわからない「直感」という名の客人をもてなす準備ができている証。
キーボードや画面に向かって作業をしている真っ最中に、素晴らしいアイディアが突如天から舞い降りてくるということは皆無に等しいですよね。
真っ白なノートを開いた時に、ふとインスピレーションが湧いたというお話を何度か聞いたことがあります。お風呂の中で突然ひらめいた、とか、美しい海を見たり山の空気を吸っている時に何気なく、、というのもデジタルツールには全く関わりがないという点で共通しています。
そう、最先端をいくビジネスパーソンなら承知のことでしょう。デジタルツールが論理的な整理には向いていても「着想」には不向きであること。毎日、四六時中パソコンとスマホに向かっていても、濡れ落ちるアイディアを掬うことはできないことを。
間(ま)の静寂とやさしさ
打ち合わせや商談においてデジタルデバイスを挟むと、どうしても視線が遮られ壁や距離感が生まれがちです。手帳やノート、ペンというアナログなアイテムには、たとえ一字一句漏らさないという機能性には欠けていても、相手の話を心で受け止めるという無言のメッセージが宿ります。イコール、それは相手に対する敬意にも繋がるでしょう。
そしてお気に入りのペンケースから丁寧に一本を取り出す所作は、その場の空気を整え、ペンを取り出す際の独特の間(ま)や、空気感の変化をもたらします。
わざわざペンケースから取り出すことをしなくても、手帳やノートにペンを差し込んでおけば、数秒ほど時間は短縮できます。しかし、その数秒が無駄に見えても、そこには無駄を超えた信頼のデザインが生まれるように思えます。
その一瞬の間(ま)の静寂とやさしさ。
この中にこそ、アナログな記念品が求められる真の理由が隠されているのかもしれません。
現代のビジネスパーソンが抱える知的な渇望が、そこに潜んでいるともいえるでしょう。


