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Mybestpro Interview

誰かの記憶に残る邦画を世界につなぎ、豊かな映画文化を

国内外の制作現場に精通する映画プロデューサー

関友彦

関友彦 せきともひこ
関友彦 せきともひこ

#chapter1

企画制作から宣伝・配給までワンストップで行い、作り手の思いを届ける

 「誰もが観たい映画ではなく、誰かが観たい映画を作る」を理念に掲げて活動するのは、映画制作会社「コギトワークス」代表取締役の関友彦さん。プロデューサーとして、ビッグバジェット(大規模予算)からローバジェット(低予算)まで、国内外の映画づくりに約20年にわたり携わってきました。

 近年、新たに取り組んでいるのが、企画から制作、宣伝・配給までを自社で一貫して行うこと。通常、映画を「作る」と「届ける」は分業されており、作品のPRや劇場への売り込みは配給会社が請け負います。
 「映画は芸術であり商業でもあるので、配給会社の〝ヒットするか〟という視点はもちろん必要です。ただ、多大な費用をかけ万人受けを狙うエンタメ作品と、低予算でも〝誰か〟に観てほしいアート作品では観客層が違うように、作品ごとに適した〝届け方〟があると考えるようになりました」

 2020年から、同社で手掛けた作品は、国内のミニシアターと直接交渉。「シュシュシュの娘」(入江悠監督、2021年)では、全国43館で上映を果たしました。
 「配給会社を通さないことで、作り手の思いをそのまま劇場に届けられるだけでなく、配給手数料のコストが浮きます。欧米で認められている、興行収入を成功報酬としてスタッフやキャストに分配する仕組みを取り入れ、作り手に還元します。今後も年2~3本を制作し、配給先を海外のミニシアターにも広げる予定です」

 グローバル展開を視野に、企画制作や出資を他国と共同で行う共同製作映画にも意欲的。「日本の作品を世界で上映するチャンスを増やし、マーケットを拡大したい」と語ります。

#chapter2

企業の好意度を高める「ブランデッドムービー」を映画のクオリティーで

 関さんは、企業のブランディングを目的にした「ブランデッドムービー」の制作にも力を入れています。企業の理念や思いを「物語」にして届けることで、イメージアップや認知度拡大へとつなげます。

 「商品やサービスの魅力をアピールするCMとは異なり、企業が発信するメッセージに共感を生むには、観る人の感情に訴えることが重要です。印象的な映像を通して物語をつづる手法は、まさに映画づくりに通じるもの。ブランディングとの親和性は高いと感じます」

 大手企業を中心に実績をおさめ、外食大手のうどんチェーン・丸亀製麺のYouTubeドラマ「麺と千尋の並行世界」(2021年配信)もその一つです。主演に著名な俳優を起用し、同社の社員として奮闘する姿を追ったお仕事ドラマで、〝お客さまの笑顔のために新しい価値を探求し続ける〟という企業姿勢を描きました。再生回数300万回のヒットを生み、業界内外から反響が大きかったそう。
 「YouTube動画が得意な制作会社とも連携し、YouTubeならではのポップなシーンも盛り込みました。クライアントから『〝会社を誇らしく思った〟という声が社内で上がり、採用率も高まった』と言われ、他社の紹介にまで至りました」

 制作過程では、企業と直接対話し、求めるものを導き出す関さん。「現在、公開作業を進めているEコマース企業では、働く人の声をインタビュー映像としてまとめました。表現や演出の引き出しの多さには自信があります」と胸を張ります。

関友彦 せきともひこ

#chapter3

ロケ地選びや予算管理など制作現場で培われた経験が強み

 関さんが映画の道に進んだきっかけは、留学先のイギリスで、脚本家のいながききよたか氏と出会ったことでした。現地の映画学校に通っていた、いながき氏の自主映画を手伝ったことが原点だと言います。
 「映画は、一つの作品に多くの人が関わります。サスペンスからコメディー、恋愛まで、扱う題材も多種多様。クリエイティブで、個性の強い人たちが一つになって面白いものを創り出すにあたって、人をまとめることが得意な自分に向いていると考えました」

 帰国後、映画制作部でキャリアをスタート。シーンごとの背景をどれだけよい舞台に整えるかを追求し、ロケ地の選定や地域との調整などを担いました。現場経験を積み、3年という異例の速さで、予算やスタッフ管理などを行うラインプロデューサーに。
 「プロジェクトを統括する立場として、与えられた資源を作品に最大限に生かすことに奔走しました。各現場がこだわる部分を熟知していることは、プロデューサーとしての強みです」

 2008年に、いながき氏と共同で「コギトワークス」を設立。プロデューサーと脚本家がタッグを組むのは珍しいスタイルとか。
 「一緒にやろうと思ったのは、彼が紡ぐ物語が好きだから。企画と制作を同時進行できると、作品性を高めながら理想とする制作環境を整えられ、相乗効果が生まれます」と関さん。

 映画は、観た人の記憶だけでなく、「作品として100年後も残るもの」という責任感を胸に、映画界の豊かな未来のために力を尽くします。

(取材年月:2022年12月)

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専門家プロフィール

関友彦

国内外の制作現場に精通する映画プロデューサー

関友彦プロ

映画プロデューサー

株式会社コギトワークス

国内外、規模を問わず映画制作の豊富な経験をもとに、自社で企画制作から宣伝、ミニシアターへの配給まで一貫して行う作品づくりに力を入れています。企業のブランディングを支援するブランデッドムービーの制作も。

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