経済産業省によるDX推進指標とは?自己診断にも役立つ便利ツールとガイダンス
金融業界の「銀行」におけるDXをご存知ですか?銀行のDXは達成するまでのハードルが非常に高い分、実現したときの影響は社会全体まで広がります。いま抱えているさまざまな課題をクリアできるほか、日常生活の利便性が大きく高まるでしょう。
本投稿では、銀行にDXが必要な理由、銀行におけるDX推進事例を解説します。最後までご覧になることで、銀行におけるDXのイメージが明確になった上で、自社のDX推進に役立てることができるでしょう。
金融業界「銀行」のDXとは?
まずは金融業界「銀行」のDXを明確にさせましょう。そもそものDXは、デジタル技術を用いたサービスやビジネスモデルの変革を意味します。
このDXという大規模なプロジェクトを実現させるためには、システムや人材だけでなく、組織形態や文化そのものを変化させる必要があります。また、経営陣などのリーダーによるコミットメントのほかにも、社員1人ひとりの強い意思が求められます。
上記のことは銀行のDXにおいても同様であり、リーダーだけの力だけでは企業としてDXは実現しません。また、銀行のデジタル化やオンライン化を推進するためには、一般的なユーザーには目に見えないバックエンドの仕組みを更新する必要があります。
つまり、銀行のDXを実現させるには必要な最新テクノロジーを統合させ、他業界のDXと変わらず人材と組織の体制を整えた上で、社内全体で推進しなければなりません。そうすることで、いままでの銀行にはない顧客体験の提供を実現することが可能です。
なお、他業界のDXについては「商社業界におけるDXとは?DX導入事例やデジタル化に向けた動きを解説」や「病院や医療現場におけるDX推進事例を紹介!現状取り組むべき課題点とは?」をご参考ください。銀行との違いをより明確にイメージできるはずです。
銀行における「DX銘柄2021」
「DX銘柄2021」とは、経済産業省が2021年に東京証券取引所と共同で、「企業のDXを積極的に推進し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業」として紹介するものです。
「DX銘柄2021」は全部で28社が選定され、そのうち銀行業として「株式会社三井住友フィナンシャルグループ」が選ばれました。「株式会社三井住友フィナンシャルグループ」はグループ各社が多様なDX事業に取り組んでいることから、デジタル技術に結びつく膨大なデータを保有しています。
後ほど「DXの推進事例」として紹介しますが、「株式会社三井住友フィナンシャルグループ」は金融業界の変革に大きく貢献し、さらなる新規サービスの開発に取り組んでいます。
銀行にDXが必要な3つの理由
いまの銀行には、サービスやビジネスモデルを変革させるDXが必要だとされています。その理由としては以下の3つがあげられます。1つずつ詳しくみていきましょう。
顧客体験の変化が激しい
銀行は顧客体験の変化が激しいことが、さまざまなレポートで明らかになっています。DXを推進させて顧客体験の激しい変化に対応しなければ、顧客の期待に応えられず衰退せざるを得ません。
特に最近は主要の銀行を切り替える顧客が多く、顧客が求めるサービスを提供する必要に迫られています。いままでのように待ちのスタイルでは、すぐに顧客が離れていってしまうのです。結果として、利用者数の低下につながり、企業としての価値が損なわれてしまいます。
ポテンシャルが発揮できていない
今の銀行はテクノロジーの変化に追いついておらず、本来のポテンシャルが発揮できていません。他業界に比べてDX化が遅れていることもあり、銀行がこのさき生き残るにはDXを推進する必要があります。
大手銀行である「ゴールドマン・サックス」は、DXに対して前向きに取り組んでいます。デジタル人材の確保や社内体制の強化などに、莫大な投資を行っています。そうでもしなければ、現在の銀行はポテンシャルを発揮できず、他業界に遅れを取ってしまいかねません。
大型企業との競争が激化する
大型企業との競争が激化するのも、DXを推進すべき理由の1つです。GoogleやAppleなどの大型企業は、IT系やデバイス開発に力を入れていますが、それとは別に金融業界への参入を検討しています。
実際、2019年にはAppleが画期的なクレジットカード「Apple Card」の提供を開始し、Googleは銀行口座サービスの提供を計画しています。
世界的な大型企業が銀行などの金融業界に参入すれば、現在の銀行は立場を取って代わられる可能性があります。GoogleやAppleなどはDXやデータ分析の専門家を保有しており、さらには膨大な個人データを扱うことが可能です。
また、その利用方法さえ熟知しているため、それら大型企業が金融業界に本格的に参入すると、いまよりも利便性の高い新たなサービスを創造する可能性があるのです。
いまの時点ではメガバンクといわれる大手銀行・銀行グループが利用率の大多数を占めていますが、DX化に乗り遅れてしまうと立場が危うくなりかねません。
銀行が取り組むDXの推進事例2つ
ここまで、銀行にDXが必要な理由を解説しました。続いて、銀行が取り組むDXの推進事例を2つみていきましょう。銀行におけるDXのイメージがより具体的になるはずです。
三菱UFJ銀行のDX
日本の3大メガバンクとして有名な三菱UFJ銀行は、数々のDX戦略を模索しています。三菱UFJ銀行におけるDXは金融業界のトップを走り続けており、それを支えているのがMUFG一体のDX推進体制だとされます。
2018年7月、MUFGは事業本部におけるセグメンテーションの見直しを図り、銀行・信託銀行・証券がグループ一体運営を推進する体制を構築しました。さらに、2021年4月にはデジタル起点の企業変革を先導する「デジタルサービス事業本部」を設立し、業務やサービスのデジタル化を加速させます。
また、MUFG一体のDX推進は、近年のスマートフォン普及に伴い、デジタル完結で快適な体験を提供するため「次世代営業店」を展開していきます。
例えば、顧客ニーズや取引シーンに応じた店舗形態の多様化、迅速なサービスを希望する顧客に合わせてセルフ型端末を設置する「MUFG NEXT」、対面での相談を希望する顧客に合わせた「MUFG NEXT(コンサルティング・オフィス)」など、これまでにはない次世代の営業店の展開に取り組んでいます。
このような多様な取引チャネルの提供によって、顧客に最適なチャネルの選択が可能になり、同時にMUFGにとっても大幅な生産性の向上が実現できます。三菱UFJ銀行のDX推進はこれだけに留まらず、ほかにもさまざまなサービスを展開しています。
三井住友銀行のDX
三井住友銀行も3大メガバンクの1つであり、積極的に企業のDX推進に取り組んでいます。特に印象的なDXとしては、2019年10月に「口座開設アプリ」で新機能がリリースされ、eKYCによる口座開設が可能になったことです。
eKYCに用いて銀行口座を開設できるアプリとしては国内初であり、顧客と企業側の両方にメリットを生み出します。そもそもeKYCとは、「electronic Know Your Customer」の略称で、オンライン上での本人確認のことを意味します。
「口座開設アプリ」にeKYCが搭載されたことで口座開設が可能になったほか、「Polarify eKYC」を用いて本人確認をすれば、WEB上から口座番号の確認ができます。いままではキャッシュカードを郵送で受け取るまで新しい口座番号がわからなかったのですが、eKYCの搭載によって受け取り前のすぐに確認が可能になりました。
郵送による受け取りだと不在によるトラブルや、受け取りまで1〜2週間程度かかっていたため、一部の利便性に難がありました。しかし、「口座開設アプリ」に新機能が搭載されたことにより、三井住友銀行は金融機関としての利便性が大きく向上したのです。
銀行のDXが成功することによる社会全体の変化
銀行が取り組むDXの推進事例は理解できたでしょうか?最後に、銀行のDXが成功することによる社会全体の変化を解説します。
銀行のような大規模な金融業界は、民間企業でありながらも国や世間に対する影響は非常に大きいです。新型コロナウイルス感染症の影響によって、マイナンバーと銀行口座の紐付けや、給付金の受け取りシステムが話題になりました。
当然、サービスやビジネスモデルの変革を起こすDXについても、その影響は社会全体に変化をもたらすと考えられます。だからこそ、銀行などの金融業界はいち早くDX推進が求められます。
しかし、DX推進の規模が大きくなればなるほど、変革を達成することは容易ではなくなります。単純にDXを推進させるための資金を用意すれば良いという問題でもなく、DXを実行するためのデジタル人材や組織構築なども必要です。
また、企業のDXは全従業員がデジタルの価値を理解した上で、社内一丸となって積極的に取り組まなければ達成できません。
つまり、銀行のDX推進が成功することにより、社会全体の利便性が向上して生活がより良いものへと変化を遂げますが、その分達成するまでのハードルが高く難しいといえるでしょう。
だからこそ実現させるために必要なことは、1つの企業がDX化に取り組むのではなく、業界全体で進めていく必要があるのかもしれません。
まとめ
本投稿では、銀行にDXが必要な理由、銀行におけるDX推進事例を解説しました。
DXを推進させるという行為はただでさえ非常に大規模なプロジェクトですが、銀行などの金融業界は社会全体への変化が伴うため、さらに難易度は跳ね上がります。それでも銀行はDXを推進しなければ数々の課題をクリアすることができません。
これから企業のDXを推進する予定の方は、ぜひ本記事で紹介した銀行の推進事例を参考にし、企業のDX化を前向きに取り組んでみてください。
なお、金融業界のDXについて詳しく知りたい方は「金融業界におけるDXとは?デジタル化の妨げとなっている3つの課題を解説」をご確認ください。金融業界や銀行におけるDXの理解がさらに深まるはずです。